第5章-第42話 どぼく
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「お教えすることは出来ると思いますが、多分日本では使えないと思います。実はあの魔法、MPが満タンで溢れた余剰MPを使って維持しているのですが、日本ではMPの回復が異常に遅くて、余剰どころでは無いと思うのです。実は私も日本では、あの魔法を解除して袋で代用していました。」
そうか、いい案だと思ったのだけど無理か。
「一応、教えてくれる?」
「はい、先ほどの亜空間を自分のお腹に目一杯作るイメージで、10回連続で行うと通常の袋と同様に生き物以外の物を入れられます。20回連続で行うと、亜空間が時間軸を外れて腐敗しなくなります。」
「へえ、じゃ30回連続で行うとどうなるんだ?」
「さあ、やってみたことはないですが・・・。ある国の魔術師ギルドでは1000回連続で行ったという伝説が残っています。ほんの短時間しか維持できなかったそうですけど、生き物を入れることができたそうです。」
人間を入れたら、立派な兵器?
「わかった。10回連続だな。」
亜空間の作り方は、100回も作ったから造形を変えることは容易かった。
「あとは、お腹に手を当てて、種類数を思い浮かべてください。」
言われた通りにお腹に手を当てて、種類数と念じるが何も浮かんでこない。
「なにも、わかりません。」
俺は素直にそのまま答える。
「おかしいな。下に落ちている石を右手に持って、『入れ』と唱えてから、もう一度、お腹に手を当てて、種類数を思い浮かべてください。」
「1と思い浮かびました。」
「では、数量を思い浮かべてください。」
「1と思い浮かびました。」
「・・・・確信はないのですが、空間魔法の相性の良さから考えると、種類も数量も制限は無いかもしれません。これは、凄い。陛下に報告しても、構わないですか?」
「なぜ確認を?いつも報告しているのだろう。」
「おそらく重量の制限も無いと思いますので、土木関係向きなんですよ、その能力。私も1回試してみたことがありますが、あっという間に種類数の制限に引っ掛かってしまいました。私たちにできるのは、袋に詰められた土を運搬することだけです。」
「うん、まあ隠しておくことも、無いんじゃないかな。」
「大丈夫ですか?扱き使われる可能性もありますよ。」
「えっ、でも、一遍に入れる方法は無いんじゃ・・・。」
「いいえ、亜空間を通して、入れる方法があります。移動の際にやったように、亜空間を3M正方体に作成後、その空間を触りながら、『入れ』と唱えます。」
「もしかして地面に対して行えば、穴も掘れる?」
「ええ、ですから土木関係向きなんですよ。3000年前にこの国に降り立った王族の始祖である異世界人は、この能力を持っていたと言われておりますし、王族の方々にも時折使える人物が現れたようです。貴方のお父様も種類の制限はあったものの、できたようです。もっとも、皇太子をそのような用事で使うなんてことは、ありえませんが・・・。」
・・・・・・・
後宮に戻り、マイヤーがそのことをセイヤに報告した。
「うわっ、そこまでか。まあ、貴方のほうが直系なんだから、わからんでもないがのう。その能力があれば今進めている利水工事は、凄い勢いで進むぞ。しかしまだ、貴方の存在は隠しておきたいしのう。」
なにやらセイヤが興奮しているようだ。
「では、フードでも被ってやりましょうか?それとも、遠い縁戚に能力が現れたことにでもする?」
「それでいいか?わかった。その線で話を進めておく。報酬だが予算が決ってるでのう。1日10万G、いや20万Gくらいだぞ。」
「わかりました。召喚当日の13時から17時と翌日の13時から17時を目安にしておきます。報酬は、本当に予算内で構わないですから。」
「すまん。どうしても、早急に進めたい工事なんだのう。次回召喚時から作業に当たれるようにしておくぞ。」
ノートPCで溜め池の施行方法などを検索して提案してみたが、防水シートどころか防水セメントさえも予算が出ないという。昔ながらの粘土を使った方法で行うことになった。
防水シートと防水セメントを使った小型の溜め池を作る了承はもらったので渇水時の結果いかんによっては、予算に組み入れて貰えるという言葉を信じて、先行投資してみるつもりだ。
結局、今回もマイヤーを連れて行くことにした。本人が付いて来たがったこともあるが、俺が1人寝に戻ることを苦痛に思ったからだ。隣に俺を思ってくれる人がいるというだけで、あんなに心安らげるとは・・・。まあ、その分昼間、心安らがなくなるのだろうけど・・・。
・・・・・・・
翌朝に自社ビルに出社してみると、フィールド製薬の社長から早速連絡が入っていた。今日の午後に、こちらに来るらしい。
「いったい、要求はなんだ?」
「まずは、経営陣の退陣と創業家の方々の内、医療関係以外の方々の解雇をお願いしたい。その後、新経営陣で今回の事件に加担していたものが居ないことの調査と同じように横領していないことの調査をお願いしたい。」
ごく常識的な線を提示してみた。
「ふざけるな!何の権利があって・・・そんなことは、できない。いや、させないぞ。」
「あなたが退陣するチャンスは2度ありました。始めは洋治さんが逮捕された時です。そして、暴力団との関係が明るみに出た時です。そこで退陣していれば、ここまで株価が下がらなかったでしょう。」
「貴様たちは二言目には株価・株価と、なぜ洋治の尻拭いばかり・・・。」
「では、このまま買い進めさせて頂きますね。過半数を取得したあと、改めて株主総会の開催を要求しますのでよろしくお願いします。まあ、今の内に横領の穴でも埋めて置いてください。埋めてあるものにまで手出しするつもりはありませんから。」
「むう、他にも横領があるというのかね。どこに、そんな証拠があるというのだ。」
「ですから何度も言いますが、そこは新経営陣で調査します。まあ、首を洗って待っていてください洋一社長。おそらく、数日中には決着が付くと思いますから。」
「わかった。なにがなんでも、阻止してやる。」
その後、田畑会長からのメールによると、社長は第3者割り当て増資の話にうまく乗ったらしい。俺、創業家、ゴン氏がそれぞれ30%近くになるように増資するつもりらしい。増資が実施される前にフィールド製薬に対して、株式総会の開催を要求しておくのも忘れない。向こうはこちらの勇み足と思い、すぐさま開催するだろうがそれが狙いである。
・・・・・・・
ここ数日で、結婚報告や妊娠報告が立て続いている。相馬夫妻の件で、結婚や妊娠で優遇される制度が広まったせいだと思われる。
さて、いったいどんな制度なのか?