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第6章-第55話 しのしょうにん

お読み頂きましてありがとうございます。

「どうされます。抗議しますか?」


 あいかわらず千代子さんは俺の悪評に敏感だ。秘書としての仕事の所為だろうが世界中の新聞を監視しているみたいだ。


 フランス大統領との会談後開かれた記者会見に来た新聞社のトップ記事に『死の商人』と書かれたのだ。


 トップセールスしている防弾スーツを各国のテロ対策部隊に売っていることを当てこすっているのだろう。その所為で本当の『死の商人』を通じてテロ組織に売られていたフランス製兵器を製造している会社が赤字に陥っているらしいことが関係しているのかもしれない。


「フランスの新聞社だろ。良くあることさ。放っておけばいいよ。ネット民に対するダークなイメージは逆にありがたいくらいだ。」


 俺に冷酷なイメージが付けば、法律面の整備が進まなければヴァーチャルリアリティ時空間に関連する技術を日本全国にに提供できないといった発言も真実味が出るに違いない。


 直接、選挙活動で接触している人々に対しては顔を売り、誠実なイメージも必要だが、顔の見えない選挙民に対しては恐怖感を与えたほうが効果的だ。


「良くあることなんですか?」


 過去、スターグループを除く日本のマスコミには散々叩かれたが、外国のメディアは比較的好意的な記事が多かったのだ。その分、フランスの新聞社の記事は目立ったのだろう。


「ああ。ノーベル賞で有名なアルフレッド・ノーベルが死んだときに『死の商人』と記事にしているぞ。」


 本当はアルフレッド・ノーベルの兄弟が死んだときに本人が死んだと勘違いして記事にしたらしい。本人はその記事に衝撃を受けて、遺言でノーベル賞の創設を望んだというから、何が幸いするか解らないものだ。


「えっ。ダイナマイトで大富豪になったノーベルですよね。『死の商人』と言われても仕方が無いじゃないですか。」


 これだ。


 未だに勘違いしている人々が多すぎる。確かにダイナマイトで巨万の富を築いたが、それは平和利用なのだ。


「違う。アルフレッド・ノーベルは『死の商人』なんかじゃない。彼が発明したダイナマイトの軍事面での特許は他人に譲り渡している。それまでの危険なニトログリセリンの爆破技術で多くの人々が死んでいる。それを安全なダイナマイトを開発して人類に貢献した偉大な人物なんだ。」


 軍事で使われたダイナマイトも確かに彼の発明品には違いないが、その責任を全て彼に擦り付けるのは間違っている。偉大な発明品を人殺しの道具として使用した国家が負うべき責任だ。しかもその特許料を私した人物が別に居るのである。


「えっ・・・でも・・・・。」


「彼が抗議したかどうか解らないが、当時すでにそのような認識だったんだろうな。彼はダイナマイトを開発したことを後悔していたのかもしれない。だからノーベル賞を創設したんじゃないかな。」


「社長も防弾スーツを開発して後悔しているんですか?」


「後悔はしていない。後悔はしていないが、防弾スーツを購入できない弱小国同士で頻繁に争いが起きるようになっていることをみるにつけ、なんとかしたいと思っているんだが・・・これが難しんだ。」


 大規模なテロ組織が購入する金目当てだった武器商人が、方針を変更して安く製造できる武器を弱小国に売りつけている。それで多くの人々が犠牲になっているらしい。


 日本では私兵を持つこともできないので、俺個人の部隊を創設して派遣するわけにもいかないのだ。信頼できる傭兵組織もあれば、防弾スーツを提供し、関係各国に派遣して抑止力となって貰うこともできるのだが・・・。










 この記事が影響したのかもしれないが、日本の新聞社が行った世論調査で今回の衆議院選挙に感心を持つと答えた人々が全ての世帯で多いという結果になっている。


 まあ民主政治党を離党し、新々党を立ち上げた前国会議員が次々とスキャンダルに見舞われている所為かもしれないが・・・。


 渚佑子が『知識』スキルで見つけ、さつきの調査会社を通じて確保した犠牲者が告発している内容が次々と議員の地元で新聞や週刊誌の記事になっている。


 始めは地元で議員に近い人々が火消しに奔走しているようだったが、追随したスターグループのマスコミがさらに詳しい記事にすると全国紙がドンドンと追随し、逆に地元で火消しが行われた形跡さえも記事にされていた。


「ちょっとやり過ぎだったかな。」


 あまりにも酷いスキャンダルを記事にされてしまった前国会議員の幾人かが立候補を取り止めてしまったのだ。ほとぼりが冷め、風向きが変わった頃に出直そうと考えているらしい。


 しかも新々党を立ち上げたばかりで代わりの公認候補を追認できないらしい。


「拙いんですか?」


「ああ。日本人はバランスに優れているというか、どんな悪人に対しても同情してしまうところがあるからな。」


 余りに圧倒的な結果を望まない傾向がある。今後の日本の行方よりも同情が勝ってしまうのだ。結局は誰も日本の未来のことを真剣に考えていないのかもしれない。


 そして未来の日本が自ら望んだ結果にならなかったときに、選挙に行って投票した人も選挙に行かず投票しなかった人も『政治家が悪い』と言い出すのである。だから日本の政治家はやりたくないのである。



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