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第6章-第51話 どいつのしろ

お読み頂きましてありがとうございます。


「ハワードどういうつもりだ。」


 早速、翌日の午後9時からドイツの首相が時間を空けてくれるというので、どぶ板活動終了後ベルビュー宮殿に向うとハワードが待ち構えていたのだ。


 約束通り、ドイツ連邦大統領との30分間の対談の後、シュワルツベルク城にヘリで向うことになった。


「申し訳ありません。あれから、何度も正式にアポイントメントを取らせて頂いたのですがナシノツブテでした。」


 また情報が入ってきていない。これでは裸の王様だ。さつきか。千代子か。1度、ビシっと言って聞かさなければいけないようだ。いや、さつきに心労を掛けるわけにはいかない。ホットラインを築くべきだな。


「そうか。それは謝る。謝るが、俺はこういうやり方は嫌いだ。覚えておいてくれ。」


「はい畏まりました。」


 元妻そっくりの顔で恭しく頭を下げる。まったくやりにくいな。記憶が無い元妻と元妻そっくりの別人。元妻にはついついキツイ口調になってしまう分、こちらには優しい言葉を掛けてやりたいと思うが難しい。


「それでティーパーティーに招待する時刻でもないだろう。俺に何をさせようというつもりなんだ?」


 大学時代に招待しそこねた続きということでもあるまい。


 肉体関係を結ぶのであれば、大統領府近くのホテルで十分だ。


「思い出されたのですね。母に会って頂きます。」


 ハワードが生まれる前の出来事も調べてあるらしい。当時、俺より年上だったハワードの金髪碧眼の母親も50歳前後のはずだ。


「お母様。天使様ですよ。」


 天蓋のベッドに横たわった初老の女性の前まで連れて来られて言われたセリフに思わず吹き出しそうになった。


「なんだよ。天使様って。」


「トム。ちょっと待って・・・ああぁダメだ。」


 俺が抗議しようとすると母親の目を覗き込んでいたハワードに止められる。


 うなだれる彼を問い詰めたところ、母親は彼が生まれたときから、生きている屍状態だったという。


 唯一反応を示したのが、テレビに映った俺だったという。Ziphoneの副社長としてEUの携帯電話会社を買収したときだろう。


「あれから20年以上経っているんだ。顔も変わって・・・そうだ。ハワード、お前ヴァーチャルリアリティ装置を買ったよな。」


「ああ・・・あれですか。」


 彼の顔が曇る。理由は解っている。ヴァーチャルリアリティ空間では性別を装うことが出来ないのが原因だ。身体の造形は変えられるので、出来ない話では無いのだが男女間で違うところはそのままだ。


 メイクくらいは出来たほうが良いかもしれない。トモヒロくんに相談してみようかな。


「元々、重度の身体障害者でも健常者と同様に使えるようになっている。お前の母親に取り付ければ、話すくらいは容易いと思うぞ。」


 そのうち、医学誌に発表されセンセーショナルを起こすはずだが脳死状態と判定された寝たきりの人間でも何割かはヴァーチャルリアリティ装置を使えることが解ってきている。


 電子機器の待機モードのように最低限の機能と記憶だけは生きているらしい。臨床時に本人と話してみるとその大半が死を選ぶがヴァーチャルリアリティ空間で余生を楽しみたいという人も居るのだ。


「そうなんですか! やったー!」


 思いがけず、年相応の顔を見せてくれる。こういう付き合いも良いかもしれない。


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