第5章-第47話 きょぎきさい
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「何故ですか!」
ヴァーチャルリアリティ時空間と衆議院選挙出馬の記者会見が終わった。実はヴァーチャルリアリティ時空間の公表は2年後を予定していたのだが時期が早まった。事業計画の練り直しが必要になりそうだ。
しばらく経った頃、女子社員が大挙してやってきたのだ。
応援してくれるのかなと期待して入れてみれば、皆怒っていたのだ。訳がわからない。
「何を怒ってるんだ?」
四方八方から降り注ぐ怒りの視線に萎縮してしまう。奥さんでもない『勇者』でもない只の女性社員だというのに何でこんなに怖いんだ。
「解らないんですか。何故、他人に憎まれるようなことばかり。」
記者会見で脅すようなことを言ったのが気に入らないらしい。千代子さんも記者会見が終わってからSNSの反応ばかり気にして、逐一教えてくれていた。
「ああそんなことか。」
「そんなことじゃないですよ。」
さらにテンションが上がってくる。ややヒステリック気味に言われると怖いなんてもんじゃない。少々冷や水を掛けるとしよう。
「別にいいじゃないか。他人にどう思われようと。俺には俺のことを解ってくれる君たちが居る。それだけで十分なんだ。」
俺がそう言うと皆、真っ赤になった。しゃがみ込んでいる女性もいる。とりあえず興奮は収まったようだ。
「皆、何処に行ってもウチの社長の素晴らしいところを宣伝してるんです。全部台無しじゃないですか。」
一息つけると思ったら、千代子さんが身を乗り出してくる。彼女の興奮度は多少の冷や水では納まらないらしい。
しかし、そんなことをしてるのか。逆に男性の反感を買ってるんじゃないかな。いや、おそらくそうだ。
表面上はニコニコ聞いてくれるだろうが、内心は嫉妬の渦だぞ。
「大丈夫さ。君の言うことは全て信じてくれるさ。」
相手が男性なら、そう言うはずだ。内心、どう思っていても。
最近、取引先に行くと四方八方から嫉妬とも羨望ともつかない視線が降ってくると思ったら、そんなことになっていたんだ。
「なにっ。ゲイン会長が逮捕されただと?」
ヤオヘーの会長でハロウズのCOOを務めるゲイン・エドワードはアルドバラン公爵家の執事で俺の方針に沿った。いやそれ以上の働きでヤオヘーを目標よりも2年早く黒字転換させていた。
ちなみにハロウズのCEOは指環でウィルソンの姿に化けた俺だ。
「はい。有価証券報告書に虚偽記載を行った容疑で逮捕されたようです。」
千代子さんがインターネットサイトから情報を拾い伝えてくれる。
「ありえない! ヤオヘーの有価証券報告書は我が社の法務部と外部監査法人の2重チェックを行っていたはずだぞ。渚佑子も確認しているよな。」
お飾りの社長である鈴江の承認を得るには、渚佑子の承認が必要であり、こういった書類に関しては山田ホールディングスの法務部と外部だがZiphoneグループ昵懇の監査法人でチェックすることになっているのだ。
「はい。監査法人の内部報告書や法務部の会議資料にもこれといって問題の箇所はありませんでした。」
「肝心の有価証券報告書を見ていないのか?」
「えっと・・・。申し訳ありません。」
確かに内部資料で指摘されていた箇所が報告書段階で削除され、問題点が見過ごされることが良くある。渚佑子のスキルを有効活用できるチェック方法を教えたのも俺だから大きなことは言えないが肝心の報告書に目を通していないとは思わなかった。
「発表後の報告書に目を通した覚えがあるが、特に問題箇所は無かったと思う・・・。」
親会社として子会社の報告書には目を通している。特に有価証券報告書は重大だ。下手を上場廃止もありえるのでヴァーチャルリアリティー時空間でじっくりと確認したはずだったのだが。
またしても時事ネタです。
これが投稿されることには終っていると・・・いいな。




