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第5章-第46話 おどしとる

お読み頂きましてありがとうございます。

「それって脅し・・・。」


 最前列に居た記者がポロっと漏らした口を慌てたように塞ぐ。


 今日は民主政治党からの出馬に先立って、ヴァーチャルリアリティ時空間のデモンストレーションを行い、このシステムを3年後を目途に法整備の出来た国から順次、導入していくことを発表したのだ。


 さらに日本では俺が国会議員として先頭に立ち、法整備を進めていくために立候補を決めたと説明した。


 裏返して言えば、俺を含む民主政治党で十分な議席数を獲得できなければ、法整備が遅れてヴァーチャルリアリティ時空間の導入が遅れるということであり、他の国々では導入され技術競争力が数倍になるにも関わらず、日本だけ取り残された状態になるのである。まさに国民を脅しているも同然である。


「今、皆さんが体験して頂いた通り、人間の1日の時間を大幅に増やすことができる画期的なシステムであり、研究開発といった頭を使って考えることを仕事とされている会社にとっては今後必要不可欠なシステムであると自負しております。」


 物理的な行動が必要な仕事には使用できないが、それでも今まで1時間掛かっていた会議が10分で終れば残り50分余分に普段の仕事が捗るわけである。


「もし民主政治党が野党に下ったらどうなるのですか?」


 手を上げた記者が当たり前のことを質問してくる。説明しないと解らないらしい。


「国民の皆さんがヴァーチャルリアリティ時空間システムを必要無いと判断したわけですから、このシステムは当グループおよび関連協力会社のみで使用することになり、日本国内での開発技術力格差が発生する可能性があります。」


 実は立候補を決める前、日本では他の選択肢は無くなったと思い、ヴァーチャルリアリティ時空間を使用できる関連協力会社の選定を進めていたのだ。


「えっ、他の会社は使わせて頂けないのですか?」


「そうなります。」


「どうしてですか?」


「問題となるのはヴァーチャルリアリティ時空間内の賃金です。この中で1時間働いても1時間分の賃金を払わない企業が必ず出てくるでしょう。それに過酷労働の可能性もあります。そのような企業を我が社だけで監視できません。どうしても限界がある。そのための法整備なのです。」


 実際にはヴァーチャルリアリティ時空間内では肉体的疲労度は低いのだが、現実世界の8時間労働制をそのまま持ち込み48時間連続労働させれば、どんな弊害が出るか解らないのだ。


 まだまだ人間の身体は未知の部分が多い。ノイローゼになる危険性を回避するには、数時間置きの休憩は必須だ。


「もし民主政治党が野党に下った後、政権を取った政党の内閣が法整備を行ったら、日本でもヴァーチャルリアリティ時空間を導入できるのではないですか?」


「理論上は、そうなりますが我が社は法整備に一切協力致しませんので、大幅に導入が遅れることになると思います。」


「どうしてですか?」


「初めアメリカ大統領の伝手を使い、鷹山首相に打診、了承を得て法整備を進めていく方針でした。しかし、鷹山首相を引き摺り降ろし邪魔をされた方々に何故、協力しなければならないのでしょう。」


「政府がどのような権力を使用しても協力しないということですか?」


「そうはならないでしょう。再びアメリカを怒らせる気ですか? 大統領は我が社の技術を日本に独占されるのを恐れているのです。」


「しかし、貴方を含む民主政治党が政権を取ったとしても、事が上手く進むとは限らないのではないですか?」


「そのための政策秘書たちです。さあ皆さん、記者の方々に顔を見せてあげてください。」


 舞台の袖からずらずらと人が入ってくると記者たちは見知った顔を見つけたのか目を見開いている。


 アメリカを怒らせて退職された事務次官たちだ。教育制度を元に戻すための案をヴァーチャルリアリティ時空間で練って貰っていたのだが、俺の政策秘書になって貰えないかと打診したところ、快く応じてくれたのだ。


 きっと俺を通じてアメリカとの関係改善に取り組みたいのだろう。


「これならば事務方も動く。はあ、参りました。それから新人の立候補予定者は随分女性が多いようですが、これは何か意図したものでしょうか?」


「今回、県会議員からの鞍替えを嫌がる方々が多いと聞きまして、我がグループ、関係関連会社から政治に興味を持つ人々に手を上げて頂きました。我が社は特に女性の比率が多いので立候補者は必然と女性比率が多くなりました。」


 民主政治党の大部分は負け戦と思われているようで、勝負が決して体制が変わった後に動こうとされているようである。そのため、あらゆる選挙区で欠員が出てしまったのだ。


 反鷹山派や大野木派が抜けた穴も俺がかき集めた。数合わせだが前回の立候補者数を上回っている。後は対立候補のスキャンダルを渚佑子がどれだけ暴き出せるかに掛かっている。


 また女性を多く登用したのは由吏姉さんの特異性が薄まると考えたからだ。俺との関係を疑われては何もならない。


 選挙資金は全て俺のポケットマネーから出ているが大したことはない。それよりもグループから優秀な人材を引き抜いてしまったのが地味に痛い。休職扱いの立候補が可能な国会議員だからできる荒業で前回と同数が当選したとして3分の1が戻ってくる予定である。


 それでも人材育成を進めないといけないらしい。まあ女性はコミュニケーション能力が高い分、育成にそう時間は掛からないのだが。

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