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第5章-第45話 やばい

お読み頂きましてありがとうございます。

「ちょっ・・・な・な・・・。」


 俺が鷹山首相に了解の返事をすると久継氏が抱きついてきたのだ。どうなっているんだ。これは。


「今まで大変失礼なことばかりして、申し訳無かった。これからは由吏のパートナーとしてでは無く友人として接しても構わないだろうか。」


 離してくれたと思ったら、両手を握られ、これほど無いというほど真剣な目つきで頭を下げられた。


「あ、ああ。」


 この世で一番友人にしたく無い相手だというのにパニックになった頭と異世界で由吏姉さんにキスをした罪悪感で、思わず頷いてしまった。


「本当に。ありがとう。ありがとう。」


「く、苦しい・・・。」


 今度は全力で抱きついてきた相手にやっとの思いで声を出すと慌てたように離れてくれた。


 これで生涯、由吏姉さんに手が出せなくなったというわけだ。


 イヤ違う。由吏姉さんが独身に戻るまでのお預けか。


 はあ、何でこんなことに。あの変わり身はなんなんだぁ。













「彼に一体、何があったんだ?」


 彼は早速、松阪で挨拶まわりがあるとかで肇氏と共に帰っていった。


 俺は、今後の対策を練るという理由で鷹山首相と由吏姉さんに残って貰った。


「いつものことでしょ。あの人もトムの『誑し』の犠牲者になっただけよ。」


 そんな生半可な嫌われ方じゃ無かったんだがな。


「いや、それは無いだろう。いつも害虫を見るような目つきで、更に見るのも嫌だとばかりに毛嫌いされていたんだぞ。」


 確かに俺は由吏姉さんに近寄る害虫だ。


 そう思って我慢していたのだ。


「いやよいやよ。も好きのうちね。そんなにも意識されていたのよ。学生時代も何度となく、憎まれ口を叩かれた男たちに告白されていたじゃない。」


「告白って・・・。男に告白されたことなんて・・・無いぞ。」


 2人きりになったとき、中田から冗談混じりに何度となく口説かれたことならあったが、それは数えないよな。


「何よ。その間、そんなオイシイ場面見逃しているの私。あれだけ四六時中一緒に居たのに。」


 確かにあの頃は由吏姉さんの金魚のフンだったものな。


「無い。由吏姉の勘違いだ。・・・嘘なのか? いい加減怒るぞ。」


「嘘じゃないわよ。ほら学園祭の最後に友人になって欲しいって・・・。」


「それは告白じゃないだろ。それも初めて会った相手だぞ。」


「本当に覚えて無いの。はあ、可哀想に。あれだけ一生懸命アピールしていたのに覚えて貰いとは。」


 親父が死んで、母が失踪した後は確かに意識的に遮断するのが得意になった。


 俺の世界には由吏姉さんと友人しか居ない、なんてこともできた。


 あのときは確か、断ったはずだ。


 あれ以上友人は欲しく無かったし、なんとなく相手の目つきが嫌だったのだ。


「いいね。私も学生時代にトムに出会いたかったよ。」


 マズい。忙しい首相の時間を拘束しておいて・・・何を話込んでいるんだ。


「申し訳ありません首相。」


「私も友人だろ。名前で呼んで欲しいな。」


「名前って・・・あれっ・・・・・・・・・・・・安田やすし・・・さん。」


 不味い覚えて無い。慌てて指輪を『鑑』にして声を絞り出したはずだったのだ。


 不味い不味い不味い。間違えた。


 鷹山正ただしだったはずだ。何故、今頃思い出すんだ。


 指輪の調子が悪いのか・・・・・・しかし、何処かで聞いた名前だ。


「どうして君は・・・私が捨させられた名前を。・・・そうか・・・魔法使いだったな。」


 首相が養子に入っているなんて聞いたこと無いぞ。口が滑ったとはいえマズいことになった。


「すみません。決して・暴くつもりは・・・もしかして・・・。」


 とにかく謝り倒すことにする。こんなことで信頼関係を崩してしまっては何もならない。


 だが何かが引っ掛かる。


「ああ父は、君のところに居るんだったな。これまで父を羨ましいなんて思ったことは無かったが、それを知ったときは悔しいとさえ思ったね。君とはもっと早く出会えていたなんて。」


 ウチの警備担当の安田さんの亡くなったという長男の名前がやすしだったのだ。


 道理で聞いたときに悲しい感情が伝わって来なかったはずだ。亡くなってから随分、経っているからてっきり、もう吹っ切れているもんだと思ったがまさかこんな形でその息子さんにお会いするとは。


「そうですね。安田さんには大変お世話になっています。あれっ、でも紹介しましたよね。2人とも人が悪いなあ。」


 高層マンションの低層階の一部を彼に譲ったときに警備担当として紹介したはずだ。もろ3人で会っているのだ。


「いや、あの。赤ん坊の頃、引き離されてから父とは会って無いんだ。こっちが知っているなんて思っても居ないんじゃないか。」


「やすし。堂々と会いにいけばいい。あのマンションのセキュリティーは俺が保証する。すぐ下の階層の賃貸部分に住んでいる。なんなら警備担当として呼びつけてもいいぞ。」


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