第5章-第40話 きょういく
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「あら、マイヤー。どうしたの、その腕。」
今までは3歩後ろを付き従うように警護にあたってくれていたのだが、今は腕を組んで密着している。
「ようやく、モノにしたのね。おめでとう。良かったわね。初恋が実って。」
は、初恋なのか。
「エミーさん、例の件どうなりました?」
前回異世界に来たときにマイヤーを通じて、お願いしていたことがあったのだ。
「この5日間でお貸ししている場所の横に新しく店を2つ建てました。お約束どおり、うちの子供達を雇って頂けるならばタダでお貸しします。」
この教会では孤児院も経営しているが孤児院を卒業しても、なかなか就職先が見つからないそうである。そこで、マイヤーが空間魔法を教えた子供達が中心となり、メッツバーガー、ミスドーナッツ、そして、牛丼のスキスキを提供する。
さすがに、それぞれの制服に子供サイズは無いので、それに似せたデザインの服を教会の出入りの業者に注文するのも忘れない。メッツバーガーやミスドーナッツ、スキスキの制服を着た子供達が一生懸命に働いている姿は、物凄く可愛いだろうな。
元々、メッツバーガーだけでも、かなりの集客があったようだ。教会への来客も増え、その分寄付も増えているそうだ。さらに2店舗増えれば、相乗効果が上がるだろう。
ミスドーナツでは、各種ドーナツを1コ5G、アイスコーヒーとアイスティーを10G。
牛丼のスキスキでは、牛丼20G、冷茶を10Gで提供する。
早速、マイヤー、クララを中心に子供達に教える。作るという作業はドリンクばかりなので教えるのは簡単に済んだ。日給は60G、空間魔法を使える子は80Gだ。もちろん、一人前になって本人達が希望すれば、歩合制にするつもりだ。
帰りがけに空間魔法は使えないが算術が得意そうな子供達とクララを連れて100Gショップに寄る。よかった、閉店前に着けたようだ。
「え、この子達に働いて貰うのですか?」
「別に、特殊技能は必要ないだろ、100円ショップは。」
実際に30分も掛からず、レジの打ち方までマスターしてしまった。学習意欲がツトムとは違う。とてつもなく貪欲だ。これでツトムから各商品の詳しい使い方まで、教えてしまったら、もうツトムは必要ないかも・・・。ツトムは、いつか戦士として出て行くのだから。その時は、この子供達に任せるのも悪くはないな。
「じゃあ明後日から5日間は、この子達が日替わりで店番をしてくれるから、ツトムは合宿を頑張ってこい。それ以降はツトムがこの子達に各商品の使い方を教えていけ。わかったか?」
「はい。わかりました。あと、うちの母はどうしているか知りませんか?凄く心配になってきて・・・。」
「ん、わかった。調べておくよ。」
そういえば、忘れていたな。日本に帰ったら、電話してみよう。ツトムの状況をどう伝えるかは、悩むところだが・・・。
・・・・・・・
後宮に戻る前に、近衛師団のほうに顔を出してみる。団長のヤンが紹介してくれる。
「この人が前団長で教育係のジロエです。私の伯父に当たります。」
「明後日から合宿があるそうで、友人が参加したがっていたので、どういうことをするのかと思いまして・・。」
「基本的には基礎ですな。防具の付け方から武器の扱い方、手入れの仕方をみっちり教え込みます。そして、不必要なほど訓練を課して、精神面を養うと共に、武器を身体の一部として使えるように教え込みます。」
「そこまですると、逃げ出す人間も居るでしょう?」
「ええ、ですから一時的に隷属の首輪をハメさせて、逃げ出せないようにもしています。そして、これは上下関係を教え込むことにも役に立ちます。」
「ありがとうございました。」
「あんたの友達はなんて言う名前だ?」
「はい、ツトムといいます。」
「ああ、あのツトムか。ずいぶんと過保護だな。」
そういえば、近衛師団に出入りしているとか言っていたな。顔を覚えられているらしい。
「いえ、友人と言うか雇用主なんですよ。今回の代金を出していますので、半端なものなら止めさせようと思ってきましたが大丈夫そうで安心しました。」
「そうか。なら、特別に直々に俺が指導してやることにしよう。」
「それにしても、マイヤー俺に靡かないと思ったら、オジサマ好きだったとは・・・。」
俺の腕に縋りつくように抱きついているマイヤーにヤン団長が言う。
「失礼な。お前みたいなガキを相手にするわけないだろ。出直してきな。」
マイヤーは目を吊り上げながら言う。こ、怖いって。
「さあガキんチョは、ほっといて行きましょう。」
・・・・・・・
後宮に戻り別館に入ってみると、そこには・・・。
いい加減、ワンパターンですね(笑)