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第4章-第34話 あってはならないこと

お読み頂きましてありがとうございます。


100万字を越えました。

これもひとえに皆様の応援のおかげと感謝しております。


書籍化の最中は辛かったですが週1回の連載を続けていきますので

末永くご愛読のほどよろしくお願い申し上げます。

 薄暗かった部屋が明るくなった。


「待て待て待て待て!」


 国会答弁で見たことがある顔の官僚たちが数人駆け込んできた。


 どういうことだ。その人たちが銃から俺を庇うように前に並んだのだ。


「貴様ら邪魔をする気か。そんなことをしていいと思っているのか!」


 弱味を握られ、どちらかと言えば俺と対立する立場の彼らが俺を庇う理由が解らない。さつきが首相に進言して動いて貰っているのだろうか。


 それは無いな。


 政治家が何かを言ってきても、自分たちに都合が悪いことは馬耳東風なのが官僚だ。逆に都合の良いことは指示されずとも勝手に動いて、問題になれば全て政治家の所為にして口を噤む。そんな生き物だった彼らが俺を庇うなんて天がひっくり返ってもありえないと思っていたのだ。


「山田氏にこれ以上危害を加えるならば攻撃するとアメリカが日本に宣戦布告してきたんだ!」


 さつきぃ・・・怒っていたのは知っていたが・・・怒天髪突き抜けていたんだ。いや・・・うっかり死んだ俺の所為か。


 やり過ぎだろ。どう収拾を・・・どう考えてもお鉢はこっちに回ってくるじゃないかっ。


「トム。こっちだ!」


石波(いしなみ)。お前まで出張ってきたのか。大変だなあ。」


 留置所の扉が開くと旧友が顔を覗かせた。外交官になった大学時代の友人だ。最後に会ったのは9.11事件に巻き込まれた友人の安否確認のため、一緒に現地に飛んで以来だから随分前だ。


「当事者が何をノンビリと。アメリカ大統領が宇宙軍創設の記者会見の席上でスペースコロニーの開発及び月基地の開発者として、お前の名前を出して、鷹山首相の目の前でぶっ放してくれたんだ。」


 そういえばワシントン時間の午後3時に記者会見を開くと言っていたな。スペースコロニーの開発者として同席して欲しいと言われたが辞退したんだった。


 対外的にスペースコロニーは蓉芙グループが設立した日米合同の事業体が主体となりアメリカNASAの協力を元に開発をしていることになっている。


 俺のグループ会社が表に出ているのは宇宙エレベーターだけだった。全ては俺の名前を出さないように歴史に名前を残さないように苦慮していたのというのに全て台無しだ。


 知らん・・・もう知らん。俺は被害者なんだ。対応のために走り回るなんてするもんか!


「ノンビリなんてしてないぞ。頭を抱えているところなんだ。」


「とにかく釈放手続きに入っている。この場は収めておくから帰ってくれないか。頼むよ。」


「ちょっと待て。釈放はしないでくれないか。とりあえず日本国内だけでも事態収拾のために手を打つよ。わざわざ駆けつけてきてくれたお前のために。」


「お前なあ。その天然誑しをこんな場所で使うんじゃない。な・・俺の顔・・・赤くなってないか。」


 海外から戻ってきたばかりなのか真っ黒に日焼けした石波の頬がわずかに赤みを増している。


「うん。少し赤くなってる。照れ屋なのが治ってないのか。そんなことで良く海外で舐められないな。」


「煩い。トム・・・何でそこで泣く。」


 涙が零れていることに石波に言われて初めて気付いた。


「ああ。どうしても、お前の顔を見ると9.11事件のときにアメリカの日本大使館で何泊もお前と同衾するハメになって、(結局何もできなくて心が)痛かったことを思い出すんだ。」


「如何わしいことを言うな!」


 さらに石波の顔が赤黒くなっていく。


「この方とベッドを共にされたんですか?」


 俺と石波の間に割り込むように渚佑子の姿があった


「渚佑子。彼らは逃げたのか。」


「ええ。とっくの昔に。それよりもこの女性と寝たのですか?」


 アメリカ大陸南部担当の外交官として活躍する彼女は真っ黒に日焼けしていて乱暴な言葉遣いだが立派な女性だ。9.11事件のときは偶然日本に帰ってきていて、無理矢理捕まえてセキュリティーが厳しくなっていた当時に外交特権を使って貰い、一緒にアメリカに飛んだのだった。


「ああ日本大使館のソファーで一緒に寝たよ。周囲には安否を心配する家族がザコ寝をする中、外交官で女性の彼女はソファーを割り当てられていたんだが、俺と一緒じゃなきゃ寝られないと言うんで狭いソファーで寄り添って寝たんだ。」


「トムは落ち込んでいた。それに俺が付け込んだんだ。」


 あのときに今の力を持っていたら、友人はおろか何人、何十人、何百人という人間を助けられただろう。それどころか2機目の突入も阻止できていた。そう思うと悔しくて悔しくて堪らなくなるのだ。


「悪い。からかうつもりは無かったんだ。」


 事件現場と日本大使館とは徒歩で2時間ほどのところにあったのだが碌に近付くことも出来なかったのだ。あのときの無力感たら無かった。


 テロなどあってはならない。戦争も同じだ。まして外宇宙から宇宙船が飛来して攻撃されるなんてことは絶対に阻止しなくてはならないのだ。


いまだに9.11事件の情報収集を行うと涙が零れて執筆が止まります。


テロとは何かと係わり合いのあるトムですが、この辺りの出来事が彼の原動力となっているようです。

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