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第4章-第33話 しんじけーと

お読み頂きましてありがとうございます。

「渚佑子。彼を守れ!」


 その時だった突然周囲の照明がブラックアウトした。周囲に2人のボディーガードを控えさせて銃も所持させているようだが、彼らは只の人間だ。


「ですが・・・。」


 マイヤーから言われたことを気にしているのだ。渚佑子からの緊迫した気配がヒシヒシと伝わってくる。心配ないと思うんだがなあ。信用されて居ないのだろう。


「煩い命令だ。文句はあとで幾らでもきいてやるから早く。」


 本当に後で怖いが、この容姿の人間に目の前で死なれるのは2度と見たくない。たとえ偽物であってもだ。そう言う意味では彼からは逃げられないのかもしれない。


 渚佑子と彼らが物陰に隠れたところで、ご老人が1人と共に屈強な数人の男たちと共に現われた。


 指環の『鑑』によるとご老人は『公安調査庁の元事務次官』らしい。真実は別かもしれないが本人はそう思っているということだ。


 まあ自分で『フィクサー』などと思い込んでいる男よりはマトモな話が聞けそうだ。


 他の男たちも公安調査庁の職員らしい。ズバリ黒幕なのだろう。


「なんだ若造。脱獄してなかったのか。手間が省けて良いと思うておったのじゃが面倒なことになったわい。」


 看守が眠らされ、鍵が開けられたことを知っているらしい。俺の手の者がやったことを思っているのだろう。


 今、俺が脱獄するメリットは何も無いのだが・・・そんなことも解って無いらしい。俺のことを若造と見くびってくれるのはある意味、楽だ。


「なんだ。じいさんか。何事だ。俺は法律に触れることは何もしていないぞ。」


「ああ確かに・・・貴様を捕まえるのには苦労したわい。権力を味方につけ、法律スレスレで大儲けしやがって。だが官僚を敵に回したのは不味かったな。お前は、ここで死んで貰うことになる。」


 公安調査庁の職員が拳銃を取り出した。


「嘘だろ! 殺されるほどのことをした覚えは無い。そのドレもコレも人類の未来に貢献できることばかりだ。」


 とりあえず相手が俺のことをどれほど知っているか解らないので抽象的な言葉で反論を待ち受ける。


「人類の未来とは大きく出たな! ゲートとやらは凄いと思うがワシだったらもっと違うことに使っていただろう。」


 俺が海外で携わる殆どが国家機密扱いだがゲートだけが運営会社として名前が出ている。それしか情報は無いらしい。秘密警察として名前が挙がる公安調査庁だが日本の官僚組織では、この辺りが限界なのか。それとも縦割り組織の弊害で外国の情報が入ってこないのか。情けないことだ。


「だったら何だというんだ!」


 それでもわざわざ情報を渡してやることもあるまい。


「冥土の土産に聞かせてやろう。崇高な思想でワシが長年掛けて築き上げてきた理想を。貴様の安易な高卒採用なんぞで壊されて堪るものか!」


 高卒採用が原因らしいが誰かの邪魔をしているとは全く思わなかった。


「企業はコストダウンが、従業員は余計なお金が掛からなくてすむ。WIN-WINでしかないぞ。」


 もちろん採用年齢を下げることでコストダウンが図れることや将来の人手不足解消も重要だが、大学受験、入学、卒業に掛かるコストを親が負担しなくても良いことが何より従業員たちの幸せに繋がるからこそ推し進めてきたのだ。


 もしかすると大学に関係することなのだろうか、確かに学習塾や大学や大学院に勤める人々に取っては死活問題だ。だがここ数十年で大学入学はそれこそ安易に膨れ上がってきたのだ。


 それに少子化により、既に次々と大学は潰れていっているのだ。逆に将来の少子化解消により、踏み止まる大学も出てくるに違いない。彼らにとっても悪い面ばかりじゃないと思うのだが、目の前の黒幕に取っては俺を殺してでも止めたいのだろう。


「ふん満点を碌に取ったこともない若造なんぞに、大蔵官僚に成れなかったワシの気持ちが解るとは思えないが教えてやろう。全てはテストの点で将来が決まる未来を作り上げるためのものだったのだ。」


 大蔵官僚というと財務省の前身である大蔵省の官僚。テストは当然第1種国家公務員試験だ。つまり目の前の黒幕は第1種国家公務員試験を合格。それもトップ合格を果たしたのだろう。


 官僚になるための第1歩である第1種国家公務員試験の席次が1桁の人間は自由に官庁を選べるというのは都市伝説でしかない。もちろん席次が上の人物のほうが希望する官庁が優先的に取ってくれると思うが最終的には人物重視なのだ。


 きっと席次が1番ということで胸を張って大蔵省を希望したのだが、今と同様な態度を示せば取ってくれるはずが無い。この年齢になって、そんなことも解らないらしい。


 当然、俺が従業員を採用する点でも有り得ないことだ。関連会社では大卒採用も就職テストも実施しているが最終判断は人物重視だ。テストで満点を取ったからといって採用することなど、どの会社でもありえないことだ。


 それがこの黒幕が成し遂げようとしていた理想だとは笑うしかない。馬鹿馬鹿しい理想だ。


「バカバカしい! テストが満点の奴らなど、誰も欲しがらないぞ。」


「立場というものが解っておらぬようだの。まあいい。それでも東京大学を筆頭に超一流から三流大学まで大学受験というテストで点数順に希望する会社に就職できるようにするまでは並みならぬ苦労をしたぞ。高卒採用をやめさせるために『ゆとり教育』という名の下、働くのに必要な能力は大学に入らないと得られないようにしたのだ。」


 確かに大雑把に言えば超一流大学を卒業すれば希望の会社に就職できる。俺のグループの会社以外ならば。


「まさか・・・そんな。」


 一時期算数も碌にできない高卒が増えたのは確かだ。それもほんの一時でIT技術の発達により克服されてしまった。


 小学校に通うようになったアキエへの教育方法を知って愕然としたものだ。その殆どが暗記ばかりで十分な応用力を付けさせるところまで至っていない。ほんの一握りの学習塾だけが応用力を付けさせるのである。


 算数も暗記、国語に至っては漢字の読みさえも十分に教えられていない。その漢字を使って別の読みの応用問題が教えられていないのである。一部の読みさえ暗記してしまえば学校のテストは満点なのだ。


「ほう・・・心当たりがあるようじゃの。」


 今でこそ各高校独自で教えられているが企業で必要な提案文書を作成するパソコンのソフトウェアさえも、いつのまにか大学のゼミでしか使ったことが無いという大学生が多いのが現状だ。


「だから会社ではしっかりしたマニュアルを作りあげたが、まさか日本の教育制度を改悪したのか。いったいどうやって!」


「官僚組織というものは皆、脛にキズを持つものばかりなのだよ。ワシは公安調査庁に入り調べあげたんだ。今では国会議員に潰されてしまったが公務員宿舎などの施設。企業との癒着。もっとも酷かったのは文部省の裏口入学だったのだよ。」


「裏口・・・?」


「そうだ。文部省の奴らの子供たちは大学受験で点数嵩増しされて国立や超一流大学に進学しておった。」


「それを知って脅したのか?」


「いいや。官僚組織全体に使える裏口入学シンジケートを作り上げたのじゃよ。」


「まさか。今の官僚の子供は皆・・・?」


「ああ。もちろん本人たちに知られないようにこっそりと点数を嵩増しして入学させて、後で親に証拠を突きつけて便宜を図って貰った。まさか罪人を作り上げるために使うとは思って無かったがの。」


 勝手に官僚のトップの弱味を作り上げ、スキャンダルを恐れた官僚たちを操作して教育制度の改悪をしたのか。いや子供のテストの点数が嵩増しされていることが解っていても止めようとしなかった官僚たちも同罪だ。


 省庁再編で1人の大臣が担当する行政の範囲が広がり、政界の人間だけでは法律の素案も作れないのが現状だ。その殆どが行政を行う官僚が作っていると言っても過言じゃない。


 公務員が使いやすいように法律を作って貰うだけならば良いが官僚に都合の良い法律になっているのでは堪ったものじゃない。


「だが俺を殺したら全てが表沙汰になるぞ。」


「甘いの。政治家という生き物は自分の得にならないことでは動かないのだよ。今の首相なんぞ、その最たるもの。どうやって取り入ったのか知らんが、お主が死んだら知らぬ存ぜぬで終わりなんじゃよ。」


 世間では俺が鷹山首相に取り入り、先進国首脳会議で各国首脳を伝手を得たことになっているが事実は違う。俺の事業に全く貢献してこなかった日本が各種技術を優先的に使用できるようにするためにアメリカ大統領にお願いして鷹山首相に伝手を作って貰ったのだ。


 この場で俺が死ぬことは有り得ないが万が一死んだら、顔を潰されたアメリカは黙っていまい。アメリカCIAの手で全てを調べ上げるだろう。


 教育制度の改悪も酷いが、この情報収集能力の低さには呆れ果てるばかりだ。さつきが持つ調査機関よりも酷い。酷すぎる。これが日本政府のレベルなのか。


 下手に真実の俺の姿を何処かで聞いたとしても、彼らの情報収集能力では眉唾と思ってしまうに違いない。下手をすると秘密を秘密と思わずに何処かで喋ってしまうに違いない。これで国家機関なのか。これまで通り彼らには情報を出来るだけ渡さずにいかなくてはいけないらしい。

いやはや『事実は小説より奇なり』というのかな。

黒幕と教育制度の改悪という設定は初めから考えてあったのですが

本当に文部科学省で裏口入学があるなんて思っても見なかったです。

だからシンジケートまで話が拡大してしまった。

初めは公安調査庁の情報収集能力を使い官僚の弱味を握る設定だったのです。


尚、小学校の教育が暗記一辺倒になっているのは事実です。

うちの娘が算数の暗記カードを貰ってきたのには非常に驚き、考えさせられました。


道理で応用力の無い人間ばかりが育つわけだ。

今、うちの娘は習って無い漢字の読みに悪戦苦闘しています。親のほうが大変なんですけどね。


大学受験のための高校の科目も就業時に使うであろう科目は必須科目から外れ、大学を選択するために必要無いであろう科目ばかりを教える高校ばかりになってしまっています。


つまり行きたい大学の受験科目を調べて、その科目を教えてくれる高校に進学しないと、独学で勉強するしか無い制度になっています。酷いですね。

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