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第4章-第32話 くろまくじゃない

お読み頂きましてありがとうございます。

 お迎えは試合の真っ最中に来た。7回1-1の緊迫した展開の途中で降板だ。


 流石に今度は気を使ったのか覆面パトカーが球場傍の道路に横付けされているらしい。


 俺の降板がアナウンスされると1塁側も3塁側も関係無く球場全体からブーイングが飛ぶ。理由は皆知っているのだ。


 場合に寄っては選手としても球団社長としても戻ってこれない。コミッショナーは静観の構えを見せているが球界に迷惑を掛けるつもりは無いのでスッパリキッパリ縁を切れたらいいと思っている。どうなることやら。


 指環を『惑』にする。


 これは周囲からの視線を惑わす効果がある。きっとどこからか日々テレビが撮影しているだろうが何も映っていないに違いない。


 夕刻だったからか警察署に着くや否や留置所に入れられてしまった。これだからお役所仕事は嫌なんだ。こっちは相手の出方待ちだというのに逮捕されても情報を貰えないらしい。


「渚佑子。何処まで付いてくる気なんだ。いくらマイヤーに離れるなと言われたからって、留置場まで付いてこなくてもいいのに。」


 彼女の姿は『眩惑』魔法により認識されていないらしい。


 看守役の人が怪訝そうな顔だ。きっと頭がおかしくなったとでも思われているのかもしれない。着いて早々夕食が出た。結構ボリューミーな内容だ。












 カツ。カツ。カツ。


 夜中の1時くらいに廊下に足音が響く。看守は2時間置きに見回りにきていたが既に30分前に見ている。ようやく黒幕のお出ましか?


「ハワード・シュワルツベルク・・・。幾らなんでも。」


「社長。どちらさまでしょうか?」


 渚佑子は人影に視線を合わせて顔を歪める。


「渚佑子は会ったことは無かったな。俺の出資者の1人だ。いわゆる世間で言う詐欺師山田トムの被害者のひとりだ。被害者の中ではお義父さんに次いで有名だな。」


「あの初見で10億円の現金を即日用意したという?」


「この容姿とあいまって、当時結婚詐欺師扱いをされたな。」


「似ている・・・似過ぎじゃないですか。鈴江さん・・・元奥様に・・・。」


 シルエットも姿も・・・心配そうな顔も・・・何もかもチバラギに居る元妻にソックリだ。


「ああドイツの社交場で初めて会ったときは驚いた。髪の毛は日本人の曾祖母から受け継いだらしい。」


 違うところと言えば、身長と目の色くらいだったのだ。


「こんなところ。早く出ましょう!」


 目も前のシルエットの人物から心配そうな女声が聞こえる。かなり流暢な日本語だ。


「今度は声帯までイジったのか?」


「ええ。貴方のために身も心も変えましたわ。」


「DNAだけは男のままというわけか。」


「お望みならDNAも変えてみますわよ。」


 この人物ならできそうな気がする。確かクローン技術で有名なアメリカの会社にも出資していたはずだ。


「オトコ・・・?」


「渚佑子さえ容姿に騙されたか。そう男だ。こんななりだがシュワルツベルク城で有名なシュワルツベルク家の実質的なトップだな。」


 ドイツではハイデルベルク城に次いで有名な城だが、観光地化しているハイデルベルク城に比べると内部は謎に包まれている。いやシュワルツベルク家が謎に包まれた家系なのだ。


 一説にはこの地に国を築いた王の持ち物というが、ナチスドイツ時代に築いた巨万の富には常に黒い噂が纏わりついている。強制収容所の人間を働かせたというものだ。


 さつきが調べたところ、1年前の容姿も元妻と似ているところは黒髪だけだったという。


 つまり元妻に似せて整形した上で俺に近付いてきたのだ。


「それで・・・何の用だ? 出資金に対する配当は滞ってないはずだ。」


「あんなモノ、貴方にあげたお金です。アレしか繋がりが無いからそのままにしてあるだけなのに。ドイツに来てください。ドイツならばどんな権力からも守ってみせますわ。」


 そう言って目の前の女性が手をさし伸ばすと、留置場の鍵がカチリと解錠された。


「俺に脱獄しろと? 看守はどうした・・・まさか?」


「貴方が嫌がるから薬を盛っただけです。明日の昼まで寝ていることになります。」


 つまり人殺しを俺が嫌がらなければ、サクッと人間を殺して排除できる人物なのだ。


「すまんが・・・目の前から消えてくれないか。」


「えっ・・・。」


 悲鳴に近い声が上がり、顔色が曇る。


 この容姿はニセ者だと解っていても、古傷が疼くのだ。できればそんな顔をさせたくない。


「いや。黒幕を排除したら、ドイツでも何処でも行ってやるから。この件から手を引いてくれないか。」


「申し訳ありません。何処にも貴方との接点を持てなかったもので・・・こんな非情な手段を取らせてもらいました。本当に申し訳ありません。」


 最敬礼で俺に頭を下げる。涙も溢れているようで、廊下には水溜りが出来ている。本物かどうかわからないが・・・。


 つまり今回の事件に黒幕が居ることも全てを知った上でこの場にやってきたということだ。知っていたが彼の持つ調査機関は社会の暗部に強く。さつきの持つものよりも上らしい。


「さつき・・・か。」


 気味が悪いので報告はしてあったがその後、何処の社交場でも顔を合わせなかったのには、さつきの神経の行き届いた配慮があったらしい。


 ドイツに伺うと約束してしまった。


 彼の目的は簡単だ。俺と愛し合うことなのだ。貞操が危ないのかもしれないが・・・いまさらだ。この身は既に穢れてしまっている。


 元妻と別れて以来、事業を上手く運ぶためには肉体関係や縁戚関係を厭わず、行動してきたのだ。


 身も心も女性になった彼と愛し合うことなど訳も無いだろう。例え彼が18歳だとしても・・・。


悪い友人が登場しました。

主人公本人は決して自分をキレイだとは思っていないことを自戒自覚しています。

トムは生涯に渡っていったい何人の人と交わっているのでしょうかね。

まあ性的にはストレートなので彼側からBLには絶対に発展しない縛りはありますが(笑)


なんか結構重要な話になってしまった。


もちろん、次話には黒幕が登場します。基本コメディなのでドタバタですが(笑)

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