第5章-第39話 えあこん
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今度、窓用エアコンでも取り付けてみようかと思う。マイヤーが日本でエアコンを気に入ってしまい、おねだりされたからだ。それも手を出した翌朝におねだりされたもんだから、頷くしかなかった。
マイヤーに以前お世話になった大工に連絡してもらう。訳を聞かれたのでエアコン取り付けのためだと伝えると喜び勇んで飛んでいった。文字通り『フライ』で。しかも行ったと思ったら、すぐ大工を連れて帰ってきた。
大工はきっと、付いてきてというマイヤーに簡単に頷いたのだろう。まさか、空を飛んで連れて来られるとは思わなかったのだろう。後宮に着いた途端しゃがみ込んでいる。
おいおい、後宮の警備責任者であるマイヤーが規則破りをしてもいいのかねぇ。そう、マイヤーに言ってみると、しょぼんとしてしまった。そんなにエアコンがうれしかったのかね。
とりあえず、召喚の間に大工をそのまま入れるわけにはいかないので、セイヤに了承を取りに行く。
「まあいい。10分の1を3ヶ月減棒、規則は規則だがトム殿の要望だから負けといてやろう。」
「ええっ、そんなぁ。それでは、生活できません。」
「そうだな。合計10分の7だからな。でも、これからは別館で過ごすのだろう。ここに引っ越してくれば、生活には困らないだろう?」
いったい、今までどれだけ違反しているんだか・・・。
「それも、そうですね。」
とりあえず召喚の間から電源を引き、窓にエアコンを設置する。資材は、後宮の物置にあった分でなんとかなったようだ。さっそく、電源を入れてみる。さすがに窓用エアコンは、音が大きい。なんだ、なんだと皆が集まってくる。
「パパ、エアコンだ。アキエちゃんこの部屋で寝たい。」
し、しまった。アキエが入ってこれない寝室を貰ったはずなのに、真っ先にアキエにバレてしまった。ど、どうしよう。
「アキエちゃん、パパを困らせては、ダメですよ。」
「は~い、エトランジュママ。」
「アキエ、パパが居ない日なら、使ってもいいぞ。」
「パパもアキエといっしょに寝たいときは、我慢してアキエの部屋で寝るからな。」
「ウン。」
「いい子だ」
そう言いながら、アキエの頭を撫でてやる。こういう時こそスキンシップは大事だ。それにしてもエトランジュ様、しっかり躾けているな。もしかすると、俺が叱るよりも効果があるかも・・・。
とりあえず窓用エアコンだけでは心もとないけど、部屋を閉め切っておくことにしてリビングに戻って来た。
・・・・・・、あれ、セイヤが居ない。もう、公務に行ったのかな。・・・まさか・・・あ・・・居た。窓用エアコンの前で陣取っている。
「陛下。公務のお時間じゃないのですか?」
いっしょについてきたエトランジュ様がそう言うとセイヤは、ビクッとして振り向く。
「ハイハイ、いってきまーすぅ。」
セイヤもしっかり、躾けられているらしい・・・。
セイヤが出てった後、念のため言っておく。
「誰もこの部屋に入らないでくださいね。人が出入りすると温度が上がってしまいますから・・・。」
エトランジュ様は目を逸らした。どうやら、俺が外に出たあとで入るつもりだったようだ。
・・・・・・・
まずは、100Gショップに行く。
「あの、俺も歩合制にしてもらっても、いいでしょうか?」
「ああ、いいぞ。但し、売り上げの1%な。」
「えっ、5%じゃないのですか?」
「お前も発注をしていたから知っていると思うが、商品の2割~5割が原価だ。それに引き換えメッツバーガーは、タダ同然の廃棄前の商品だ。どっちが儲かると思う?」
まあ、原価は日本の100円を元にしてだが・・・。
「メッツバーガーですね。」
「ああ、だから、メッツバーガーでは、5%の歩合なのだ。わかるか?」
「はい、わかりました。それなら、今のままの固定給でお願いします。」
あっさり、翻しやがった。今の売り上げは日に9000G程だ、歩合制でも、頑張って売り上げが上がれば今より上がるだろうに覇気の無いやつだ。
「そんなに、お金が必要なのか?俺に認めさせれば、出してやってもいいぞ。何に使うんだ?」
「あの、近衛師団主催の夏季集中講座があるようなので、参加してみようかなと。」
「ほう、期間と値段は?」
「明後日から5日間1000G、みっちり合宿形式でやるようです。」
「ということは、店は休みだな。それはまあいい。クララに教えて少しの時間だけでも営業させれば大丈夫だろう。金は出してやるが条件がある。それは、途中で帰ってこないことだ。もし途中で帰れば、金は借金として返してもらうぞ。いいな。」
「はい!わかりました。」
これで、少しは精神的に鍛えられるといいんだが。あとで、近衛師団に行って聞いてくるか。
・・・・・・・
次は、教会だ。教会の暗部を聞いたあとだから、行きにくいが商売は商売と割り切る。
「トム殿、ご依頼の件なのですが・・・。」
さて、いったいなにを依頼したのか・・・。