第3章-第22話 みじかいしごと
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「俺の出番、これで終わりですか?」
今日はNASAの施設に来ている。ここで宇宙服に着替えてから、宇宙体験施設内でほんの30分ほど仕事をした。
同行してくれたアメリカ大統領と最後の詰めを行っているところだ。
「十分だろ。月面基地と核融合炉だぞ。」
俺が資金を出し、渚佑子が『知識』スキルから銀河連邦の基礎技術を提供しNASAが設計し六菱重工が製造した100メートル四方の建物と発電所をNASAが発注し六菱重工が製造した宇宙空間移動用の宇宙船でスペースコロニーから月面に移動したアメリカ軍兵士が映し出す映像の場所に『遠隔操作』魔法を使い設置しただけである。
月面基地はスペースコロニーから移動できるようにゲートが設置されている。月面基地から核融合炉の発電所までは安全を考えて宇宙服を着て月面探査車で移動するが核融合炉の稼動が始まればゲートを稼動させることになっている。
核融合炉は発電所内部で最大20まで設置できるようになっており、我が社の技術者が最初の核融合炉の検証が完了すれば『空間連結』魔法を使い、アメリカに設置された発電所を模した設備に繋がった送電線を使って格安な電力が供給が開始される運びになっている。
そうなれば俺がアメリカに設立した電力会社に莫大な収入が入ってくることになる。しかも月面基地の所有者も俺の会社になっており、当面NASAが使用料を払ってくれることになっている。
「良く予算が通りましたね。」
「通るだろ。宇宙船はスペースシャトル1台分も掛かって無いんだぞ。月面基地の維持費はNASA持ちだが建物はレンタルだ。あれだけの資材をスペースシャトルで持っていく輸送費を考えれば安いものだ。」
これで俺の宇宙開発はほぼ終わりだ。後は資金が潤沢になり次第、ヴァーチャルリアリティー時空間の応用のために銀河連邦の技術を使ったスーパーコンピューターの開発に着手するつもりである。
本当は宇宙船を売り込みたいところなのだが、イギリス・カナダ・オーストラリア連合が資金や場所を出し合い俺の会社が開発するスペースコロニーが終ってからなので早くても5年後になりそうである。
あとはアメリカ軍が月面基地を使って、銀河連邦の宇宙船を回収することになっている。アメリカ大統領はそれらの物的証拠と渚佑子の『知識』スキルによって銀河連邦の存在を明らかにして地球連邦の設立に漕ぎ付けたい考えだ。
「それよりも日米野球のほうが負担が大きいのですが、どうしても俺が出場しなくてはなりませんか?」
日本シリーズが終れば今シーズンは終了し一息つけるはずだったのだが、アメリカ大統領のゴリ押しで決まった日米野球が控えている。
宇宙開発に比べると俺の拘束時間が長すぎる。しかも日米野球親善のためのパーティーも組まれているのだ。それも多分にスペースコロニー開発に携わった会社の経営者を呼んであるので微妙に断りにくいのだ。
スペースコロニーは今、アメリカの企業との間で維持管理のための基礎技術開発に取り組んでいるところだ。
銀河連邦では宇宙船開発による外宇宙での惑星改造技術に秀でており、惑星上空の空間を利用しようという発想は無かったらしい。従って銀河連邦には無い技術なので、渚佑子の『知識』スキルも使えないのだ。
太陽系では火星が惑星改造に適しているらしいが、火星に行くための手段が開発されていないのではどうしようもない。
「もちろん。男はオンとオフを使い分けてこそ、いい仕事ができるものさ。」
アメリカ大統領が格好をつけて言っている。
「俺に取っては、どっちも仕事だ。」
何処が宇宙開発編やねんという展開からようやく本筋に戻ってきました。




