第5章-第38話 あやまち
お読み頂きましてありがとうございます。
「申し訳ありません、セイヤさん。」
俺はマイヤーを連れて異世界に召喚されたときに直ぐにセイヤにマイヤーに手を出したことを謝った。
「大丈夫だ。むしろ喜んでおる。実はマイヤーはエルフ国から当王室に縁を結ぶ為に遣わされた使者でもあるんだ。むしろ頑張って子を生してほしい。エルフは孕むと2年近く身篭ると云われておる。そうだったなマイヤー。」
「はい。その際には必ず里帰りをします。出産後、子供はエルフの里で20年以上の幼少期を過ごします。」
えっ、今妊娠させたら、俺が60歳過ぎでやっと小学生くらいなのか。子供の成人を見届けられないではないか。
「もし、ハーフエルフに王室を継がせることができれば、この国は安定する。是非、頑張って欲しい。王室は全面的にバックアップする。なんでも、言ってほしい。」
「では、ひとつお願いがあります。」
「ああ、言ってみろ!」
「アキエに踏み込まれない寝室を頂きたい。いまアキエを刺激したくはありませんので・・・。」
「それならば、別館を開けよう。コレ、別館を使えるように支度いたせ!」
へえ、別館があるんだ。
「マイヤーに申し添えておく。」
「はっ!」
「お主が妊娠したら、その身を守ることを第1に考えよ。それまでは、トム殿、アキエちゃんの警護だ。わかったな!」
「ありがとうございます。できるだけ早くご希望に添えるように頑張ります。」
なんか、頑張るとかいっているぞ。想像したいような、したくないような・・・。
・・・・・・・
「本当に良かったのですか?エトランジュ様とは・・・。」
セイヤと二人っきりになったときに聞いてみた。あまりにもデリケートな話題でマイヤーも知っているはずなのに、なんとなく後ろめたいのだ。
「ああ、アキエちゃんを養女にしたためか、王族の血筋に近い者たちが挙って来て居るのじゃ。うちの娘や息子のほうが王家の血が濃いといってな。後宮に側室を入れようとする者達が霞んでしもうたわ。」
「それでは・・・。」
「エトランジュは、マイヤーがエルフの里に帰ったときにでも、相手してくれれば良い。アレも承知しておる。」
「はい、ありがとうございます。」
「いや、こちらが礼を言いたい。アキエちゃんが来てくれて、アレの表情も随分明るくなった。それまでは、自分を随分と押し殺しておったし、自分が悪いのだと戒めておったからの。それに・・・。」
「はい?」
「いや、なんでもない。とにかく、一刻も早くマイヤーとの子供をな・・・。」
「はい。わかりました。」
「できれば、常に一緒にいれば良いと思うぞ。」
「は、はあ・・・。」
「なんだ、問題があるのか?向こうの世界でも役に立っただろう?」
「ええ、私の護衛としては満点をあげたいところなのですが・・・。」
「ん、暴走しおったか?マイヤーは昔から人の言うことを聞かぬからのう。暴走しだしたら、わしでも御せぬ。まだ、トム殿の言うことのほうが、聞くと思うぞ。なんせ、トム殿に惚れておるからな。」
「え、そこまでですか?」
「わかっておらなんだのか?」
「まあ、うすうすはそうかなと・・・。若くもないし、うぬぼれるほど、いい男でもないですし。いったい、どこが、よかったのか。」
「そういうな。お主にも良いところは、たくさんある。そんなふうに思われては好きだと言う人間に失礼だぞ!」
そういえば、初恋の人なんだよな。セイヤにとって。
「じゃあ、セイヤさんは俺のどんなところが好き?」
「・・・う・・、何を言っておる。好きな人間だったらという、話だ。」
「そうなんだ!セイヤさんは、俺のこと嫌いなんだ。」
「・・・な・・なにも、嫌いだなんて、言ってないだろう。」
もうちょっとつついてみたい気がしたが、この辺でやめておくか、藪ヘビが出てきても困るからな。
「小さいときのトム殿はな、そうれはもう・・・」
ちょっと、止めるのが遅かったようだ。それから延々と1時間ほど、いかに俺の幼い頃が可愛かったかを聞かされた。これは、なんだ?ショタ?いや違う?ホモ?違うな。きっと、過去の思い出が美化されているのだろう。
それをぶち壊されそうになったから・・・親兄弟を殺したのか?少し弱い気がするが、きっと複雑に絡み合ったなにかがあったのだろう。いや、セイヤって、以外と単純なところがあるから、それが理由なのかも・・・。
あまりにも延々と聞かされたせいで、話半分でつまらないことばかり、頭に思い描いていた。
「・・・・なんだ。わかったか?」
「はい、それはもう。セイヤの愛がどんなのかは、よく解かりました。でも、今の俺はどうなんです?」
「そ、それは・・・その・・・あの・・・な・・・わかるだろう、・・・な。・・・」
それなりらしい。もうちょっと虐めてみたい気がするが、もう終りにしたいので、そのまま放置して部屋を出て行くことにした。
・・・・・・・
別館と言っても棟続きでリビングから行き来できる。これならば召喚の間から、直接電源を引いてくれば快適に過ごせそうだった。
実は、もう少し電力が欲しかったので、社長室には50Aの電力を引き込み、数本の延長コードをワイヤーロープにより合わせて、異世界に引いてきたのだ。
さて、電力を引いてすることとは・・・。




