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第2章-第17話 てまえがって

お読み頂きましてありがとうございます。

「由香里さん。何故そこまで頑なに拒否されるのか解らないんだが。」


 那須くんの手により、表向きの真相が暴かれ決着がついたことで職にあぶれた人間が出て来たのだ。


 尚子さんが未成年の雪緒くんと性的関係を持ったという疑惑が持ち上がり、反旗を翻したメンバーだ。


 結果的に尚子さんが荻ダンススクールの解散を宣言してしまったのだが尚子さんを心から尊敬していた大半のインストラクターは後継者に指名された那須くんに従い、俺の会社のパート社員となり副業としてインストラクターを続けられる運びとなった。


 何度となく説得したが彼女たち反旗を翻したメンバーは頑なに那須くんに従おうとしないのだ。


 彼女たちを師として運営されていた教室自体は代講のインストラクターが講師として続けているが生徒側が半々に分かれてしまっている。


 しかも拙いことに千吾のマネージャの娘さんは目の前に居る女性側に付いてきてしまっているのだ。


「裏切り者ですから今更戻れません。業界からも足を洗うつもりでおります。」


 この辺りは那須くんも仕方が無いと思っているようだが、それは間違っている。この件で職にあぶれる者が居てはいけないのだ。


「困るな。君たちはそれでもいいかもしれないが、付き従ってきている生徒たちのことはどうするつもりだ。せめて彼女たちが卒業するまでは待って貰いないだろうか。」


「そ、それは・・・。」


 顔が曇る。付いてきている生徒たちが居ることは解っているのだろう。


「まずは君たち独自でダンススクールを立ち上げてくれ。資金は出す。当分は各地のコミュニティーセンターや公民館での活動になるだろうが、将来的にはスポーツクラブ化するつもりだから、そのつもりで勉強していてくれ。」


 ダンス講師はダンスと振り付けができればいいと思っているらしく保健体育分野の勉強をしていない。教室で生徒が倒れた場合、文化センター任せになっており、救命救急の処置もできない人間が多すぎるのだ。


「何故、そこまで!」


「それはこちらの都合だ。想像するのは勝手だが詮索は困る。失敗しても何も言わない。荻尚子は確かに無責任だったが糾弾した君たちは違うのだろう。最後まで生徒たちの面倒をみてやれ。それは義務だ。拒否は許さない。」


 紋切り口調で話を終らせると騒然となった会議室を出て行く。


 まあこれだけ言っても拒否するインストラクターはもうどうしようもない。この辺りが俺の限界だ。


     ☆


「お待たせいたしました。美名子さん。」


 喧々囂々と意見が交わされるのを聞きながら隣の会議室に入っていく。この女性は騒動を引き起こした男の愛人だったという意味で責任を取り、荻ダンススクールを辞めている。これは止められない。


「その都合とやらとお聞きしても・・・。」


 隣の話を聞いていたらしい。まあ間には取り外し可能な薄い壁があるだけだから、静かにしているだけで聞こえるかもしれない。


「貴女には那須くんをこんなことに巻き込んだ責任をとって貰おうと思う。そこでだ。ヤオヘーの名古屋金山店でスーパーの店員なんか、如何だろうか。当分彼の前に顔を出さないで欲しいのだ。」


 この女性は言わば被害者だが、今は那須くんの近くに居てほしく無い人物の1人だ。傍に居れば自然と那須くんに頼ってしまうに違いない。


 自分でも甘いと思うが、記憶を風化させてしまうには当事者の顔を見ないのが一番だ。


 もう1人の当事者である雪絵さんの娘さんには弁護士を通して伝えてある。


 荻尚子さんも引き離したいところだが、母親似の彼女を引き離せば良くない結果を生むかもしれないので出来ることはここまでだろう。もうすでに彼の成績に現れているので遅すぎたかもしれない。


「ありがとうございます。私のことも含めてここまでしてくださるのは那須くんの為なのですね。」


「そうだな。それもある。」


 本当は千吾のマネージャの娘さんのことも那須くんのこともついでなのだ。


 実は渚佑子を含む俺たちの力を過信していたのだ。介入したからにはどんなことがあっても止められると思い込んでいた。


 渚佑子が居れば刺し殺されたとしても蘇生できる。その許可も与えていたのだが、実際にはその場に居合わすこともできず、毒殺という結果に終わってしまった。


 猛毒であっても解毒蘇生可能だが事件として警察で取り扱われてしまってはお手上げなのだ。どうやら踏み込むべきではないところまで踏み込んでしまったのだろう。


 これは自分勝手な贖罪であって誰にも聞かれたくも無いし話すこともできないことなのだ。



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