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第2章-第13話 たしょうのぎせい

お読み頂きましてありがとうございます。

 Moty向けの振り付けを行っていたアメリカのダンススタジオからZiphone本社に『移動』魔法を使う。世田谷芸術劇場へは副社長専用車を使う。


 滅多に使わないが行ったことの無い場所へ行くときは重宝する。タクシーだと制約が多すぎる。臨時の『移動』魔法や『転移』魔法として使うのだ。今日も世田谷芸術劇場の近くの人目の無いところに止められていた。


「いつもすまない。」


「今日はここで何をやるんですか? お年寄りと親子連れしか通らないみたいなんですが。それからいつもよりも警察車両が多いように思います。」


 俺と荻尚子さんが後部座席に『移動』してくると運転手が報告してくれる。


「ダンスの発表会があるようなんだ。そうですよね先生。」


「近隣の特別養護老人ホームやデイサービスセンターなどには招待状を出しているわ。皆さん自分のお孫さんのような年齢の女の子が踊っている姿を見て目を細めてらっしゃるわ。発表会を無くすと、この方たちから楽しみを奪うのよね。」


 喋っているうちに世田谷芸術劇場に到着する。俺は例によって、比較的大きなサングラスを掛ける。今日は尚子先生に連れられてやってきたスカウトという立ち位置だ。


 劇場に入っていくと壇上で挨拶が始っていた。


「那須くんに挨拶してくるわね。一緒に来る? 過保護な親父さん。」


 一時期は落ち込んでいたが、尚子さんは笑ってみせる。若干引き攣っている。今日の発表会が何かがあると思っているのだろう。


「過保護な親父はここで、発表会をぶち壊してでも出演者を助けるために待機しているさ。そのつもりでいろ。」


 発表会なんぞ。はっきり言ってどうでもいい。良く出来たと言っても高々数千万円のビジネスモデルだ。しかもインストラクター、アシスタントという従業員をダンスを続けられるというニンジンをぶら下げ犠牲を強いるビジネスモデルだ。


「そうね。お願いするわ。」


 那須くんは舞台袖に居るらしく尚子さんは花道から昇ると舞台裏にあがっていった。


 俺はスカウト用に用意された席に座る。周囲には誰も居ない。今はまだ文化センターの生徒たちが出演している時間帯だからだろう。この後のアシスタントやインストラクターという面々が踊り始めれば多少は席が埋まるのかもしれない。


 しばらく見ていたがこれと言ってみるべきものもない。神経を研ぎ澄ませるだけで目を閉じることにした。


 もう1人スカウトがやって来たらしい。気配がどんどんと近付いてくると俺の隣の席に座った。


「やっぱりトムだ。わーいらっきぴぃ。」


 聞きなれた声と同時に身体に圧し掛かられて押さえつけられた。


「千吾。静かにしろ。お前、目立つんだから演技者が集中できないだろ。ほら手を握ってやるから。」


 舞台の上も周囲の客席も少しざわつく。薄目をあけずとも指環の『鑑』が相手を教えてくれる。


 こういった場合には何か代替条件を出さないとずっと抱きついたままなのは経験上わかっていることだ。まあ手を握るなんて子供っぽいことでも俺がしてあげると喜ぶんだから目くじらは立てないことにしている。


 30秒くらい抱きついて満足したのか隣に座った状態で手を握りこんでくる。


「俺は荻尚子を送ってきたんだが千吾はどうしたんだ?」


 千吾も荻尚子に直接振り付けを指導してもらっているが、俺と違って器用にこなすコイツはものの数回指導を受けただけでモノにしていく。


「・・・友人が荻由香里先生に師事しておりましてその関係で・・・。」


 めずらしく畏まった言い方をする。なるほど。


「女か?」


 この男がこんな言い方をするときは女性関係だけだ。学生時代は誤解していたが性的に俺を抱きたいと思っているわけでは無い。性的には至ってノーマルだ。アイドルになっても数は少ないが浮世を流している。


「良くわかるね。」


 こちらを見ず舞台に集中したまま話しかけてくる。たった今始ったジャズダンスの生徒たちの中に居るらしい。問題なのは相手が未成年ということだ。


「千吾のことだからな。長いのか?」


 握りこんでいた手が離れる。少し後ろ暗いらしい。俺は離れかけた手を握って引き戻してやる。


「あ・・あの、マネージャの娘さんなんだ。」


 これはかなり本気だな。コイツが本気で隠せば絶対にボロなど出さない。徹底した秘密主義で完璧主義者だからな。


「バレないように上手くやれよ。俺は千吾のことを信じているからな。」


 俺の掌の中のコイツの手の力が抜ける。良し。言って欲しい言葉が言えたようだ。


「トムはいつまでいるの?」


「終るまでだな。」


「なんれ?」


 やばい。なんか誤解している。


「この荻ダンススクールに厄介な問題が持ち上がっていてフォローが必要なんだ。このスクールが無くなったら千吾の・・・友人も困るだろ。」


 あまり生徒側のことまで気に回らなかったが何年も同しダンスの先生に師事している沢山の人々も居ることを忘れてはならない。殺人事件があったからと離れていく生徒も居るだろうがそれによって生徒の夢が潰れるようなことがあってはならないのだ。


「那須・・・。」


 千吾の目がパンフに吸い込まれている。


「お前も会いに行ったクチか?」


 コイツが那須くんへ影響を与えるとしたらどんな影響になるか見当がつかない。


「まだこれから・・・。」


「おいおい勘弁してくれ。まだ新人の野球選手なんだぞ。荻尚子といい。千代子といい。お前といい。全く。」


「トムが何を心配しているか解らないけど友達になるだけだよ。」


 コレだ。ダメだと言えなくなった。完全に思考を回り込まれている。時折、完璧主義の欠片を見せ付けられると俺は要らないんじゃないかと思うときがあるが、それではダメだ。ダメなんだ。適度にフォローしてやらないと。特に女性関係は危険だ。


「煮詰まる前に俺に言えよ。言えないことでも調査会社を使え。見えないことが見えてくることもある。千代子に伝えれば調べさせる。余計な詮索はしない。但し調べたことは相手に伝えるな。知った上で別のところからアプローチを掛ければいいんだ。わかったな。」


 舞台の上の生徒たちに目を向ける。


 おそらく相手は女子中学生か女子高生だ。


 まず上手くいくはずがない。相手には悪いが千吾の心の安定のために犠牲になってもらわなくてはならない。コイツのことだ状況さえ把握できれば最高の案で完璧にモノにするに違いない。


千吾と相手の女の子の恋愛は1遍の恋愛小説になる予定です。

トムのアドバイスが相手にとってどんな展開になるか。

まだ描いてないのでわかりませんが私の恋愛物ですのでハッピーエンドは確定済みです(笑)


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