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第2章-第12話 みとどけるぎむがある

お読み頂きましてありがとうございます。

「とにかく君が今一番近くに居る。良い影響も悪い影響も与え易い位置にいるんだ。その辺りを心得て行動しろ。」


 那須くんは非常に影響されやすい人間だ。ハッキリ言って俺は悪影響を与えている。傍に居るべき人間じゃないのだ。


 特に俺の敵に対して情け容赦無いところなど、そのまま吸収してしまうだろう。


「随分買っていると思ってたんだけど違うのね。彼を大切に思っている。まるで肉親のよう。」


 その通りなのだろう。彼にずっと好かれていたい父親のような存在になりたいのかもしれない。


「多分な。君がどう思って彼を利用しようとしているのかはわからないが、始めてしまったものは止めようが無いだろう。後のフォローはしっかりとやれよ。」


 多分相談されるだろう。どういったことでも相談に乗るつもりだ。だが俺では精神的支えにはなれてもフォローができない。


「それは解っているわ。貴方のように肉親のようなフォローじゃなく。女としてフォローするつもりよ。」


 母親的フォローを望んでいたのだが違う意味で捉えられてしまったようだ。だがそれでも構わない。エッチが精神的フォローの特効薬になる場合もあるからだ。


「・・・ああ、相手は未成年なんだからバレないようにお願いするよ。」


 以前調査した際にこの女は過去に少年アイドルやダンサーと強引に肉体関係を持ったことが解っている。今までバレなかったから良かったものの下手をすれば芸能界から締め出されかねない。


 男性が未成年の女性に手を出せば今の社会厳しい結末が待っているが女性が未成年の男性に手を出しても何か言われるのは教師くらいだ。まあ関係を持った少年が口を裂けても普通言わないだろうがな。


「バレたら責任持って結婚するわよ。球界は年上女房が多いから普通なんじゃない。」


 年上過ぎだろうとは言わない。奥さんを貰うことで安定する選手も多い。子供が産まれるとなおさらだ。


「そしてせっせと野球選手として一流になれるように手助けする世話女房になるなら歓迎するよ。」


 この女とて忙しい業界の人間だ。専業主婦として那須くんを世話している姿は想像できない。彼女の年齢から言って子供を作るのは限界ギリギリだ。


「嫌な人ね。スギヤマ監督の仕事も貴方の仕事も全て放り出してもフォローさせていただきます。」


「まあ自分で蒔いた種なんだから当然だな。これから行くんだろ。送っていくよ。」


 この女は仕事にかこつけて自分の発表会をサボろうとしているのだ。本来なら機上の人になっていなければいけない時刻である。


「だって次誰が死ぬか解らない。目の前で直ぐ傍で自分の知り合いが死んでしまうなんてゾッとするわ。でも、そうよね。仕掛けを施したんですもの、どんな結末になって最後まで見届けなくてはいけないのね。」


「どんな結果が待っていようとも荻ダンススクールは予定通り(・・・・)山田ホールディングス傘下に組み込んでやるから、中身をどうするか考えることに専念するんだな。まあ那須くんも居るから大丈夫だ。」


 荻ダンススクールは社員わずか4人と従業員扱いはされているが実質個人営業主のインストラクター、そのインストラクターに師事しアルバイトさせてもらっているアシスタントという荻尚子を頂点とするピラミッドが構成されており、2年に1度行われる発表会では生徒を含めた出演ダンサーが2000人を越え、その出演料名目で数千万円単位の金が動くのである。


 元々このスクールは荻尚子がダンス技術の研鑽と蓄積を求めて始めたもので演出家として有名になったことで東京中の文化センターのチア・ジャズ・ヒップホップといった枠を所有しインストラクターを斡旋する会社だったのだ。


 しかし、インストラクターが育ち、四天王と呼ばれる社員たちが何人もの生徒をダンサーとして芸能界に送り込めるほど大きくなった。


 ここまで大きくなったのは文化センター単位とは別に数年毎に行われる有名ホールを借り切った大規模な発表会だ。芸能人がミュージカルに出演するような劇場を抑え、発表会を行うのである。


 プロ志望じゃなくともダンス好きの人々にとって夢の舞台に立てるということはどれだけのお金を払ってもしてみたいことのひとつだったようだ。


 しかも毎回、荻尚子主宰の招待で各種芸能プロダクションのスカウトが目を皿のようにして見にきて幾人かのダンサーがスカウトされるらしい。


 従業員の生活面からは随分厳しいが、なかなか上手く出来上がったビジネスモデルだ。しかし、この発表会に集まるお金の所為で、荻尚子主宰の目的が阻害されてしまうという悪循環に陥っているらしい。


 そこで運営面を俺の会社に任せて従業員たちの生活面の向上やダンス技術の研鑽と蓄積という目的を達成したいということだった。


 このダンススクールの生徒にはZiphoneフォルクスのチアガールたちが含まれており、引退後の彼女たちの活躍の場を考えていた俺にとっても渡りに船というところだったのだが、荻尚子がダンススクール解体に使った手段が殺人者を生み出してしまったのだ。

拙作「帰還勇者のための第二の人生の過ごし方」は推理物です。

宜しければ合わせてご覧ください。

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