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第1章-第6話 どくさいしゃ

お読み頂きましてありがとうございます。

「ええっ。地球連邦ですか?」


 『ゲート』設置の打診を行ったあと、1週間くらい経過したある日アメリカ大統領に呼び出された。


 そうは言っても、ここは高層マンションの低層階の分譲マンションの1室だ。


 この分譲マンションは欲しいという俺の友人たちに対して分けている分で、海外の友人たちには空間連結の扉で自宅と直接繋いである。管理人に連絡を入れれば簡単に行き来できる仕組みになっている。


 俺がその部屋にこの高層ビルの管理人である渚佑子を連れて訪れると同じく分譲マンションの持ち主であるケント王子が居た。正装しているということは英国王室王子としてここに居るということなのだろう。


「そうだ。本当に星間飛行技術を持つ異星人が攻めてきたとしても、地球全体を1つの国家とすればある程度敬意を払うはずだ。」


 大統領は自信を持ってそう言うが希望的観測という気がする。


「渚佑子。銀河連邦にそんな規定はあるか?」


 ここは『知識』スキルを持ち、銀河連邦の知識も引き出せる渚佑子が必須だな。良かった連れて来て。


「あります。統一政府を持つ星に対しては、事前に対話による交渉を行わなくてはいけないというものですが、実際には有名無実のようで植民地政策を実施するにあたり、交渉団を銀河連邦の本星に受け入れるという規定しか無いようです。」


「無いよりはマシという程度だな。その交渉団次第というところなのか?」


「いいえ。実際には交渉団を受け入れ交渉を始めると同時に占領作戦が開始されるようです。ですから交渉団と条件を決定したころには交渉団がその統一政府の交渉団という資格を失い、植民地国家を樹立する流れのようです。」


「つまり、優秀な交渉団と共に統一政府として一定期間防衛できる軍備が必要なのか。厳しいな。統一政府が無いとどうなるんだい?」


「戦線布告もなしに占領作戦に入るようです。悲惨な例ですとその星の国々同士で戦争を引き起こし、無政府状態下にしてから宇宙船を乗り付けて無血開国を迫ることもあったようです。」


 流石にそのケースには当たらないだろう。無政府状態にしようとするならば核兵器を使わずにいられない。そうなれば、植民地にするどころか誰も住めなくなってしまう。そんなことさせるものか。


「とにかく月にある宇宙船の回収が急務だ。その後、統一政府か・・・異星人の身体の組成はどうなっている?」


「それが・・・地球人と大差無いようです。彼らの実験データから繁殖も可能という結果が出ています。」


「・・・連れ去られた地球人が居るというわけか。なんてことだ。何・・・大統領・・・呆けた顔で。」


 隣で会話に参加せずにジッと俺の顔を大統領が見ていた。ケント王子が口を挟まないのはいつものことだが、僅かに顔色が悪いのは異星人の横暴を知ったからだろう。


「イヤ、エンジンが掛かって来たなあと思って。」


「仕方が無いだろう。俺にしか出来ない事柄があることは知っているよ。そう思うなら日米野球なんて些末事を入れんなよな。」


 呑気なことを言い出した大統領に噛みつく。


「だってズルいじゃないか。私だって君のスイッチピッチングや『消える魔球』を間近で見たい。」


「見ればいいじゃないか。今日だってお忍びで行ける個室を用意出来るぞ。」


「アメリカ本国のスタジアムで堂々と君を応援したいじゃないか。」


「おい。メジャーリーグ側を応援しろよ。」


 アメリカ大統領の建前であっても日本の俺を応援したらダメだろ。


「・・・・・・ああそうか。そうだった。」


 自分が大統領ということを忘れてたんかい。友人としての俺を優先してくれるのは嬉しいが自分の立場を忘れんなよ。


「もうわかったよ。それで・・・その話をしに来たんじゃ無いだろう。」


「とにかく統一政府は必要だ。地球連邦に賛同すれば、『ゲート』を各国に設置すると呼び掛ければ乗らざるを得ない。製品の輸出入でスピードと輸送費で圧倒的な差がでるからな。」


「国際連合じゃ無理なのか?」


「無理だな。合衆国と同じように各国を州レベルに落とし軍事力を集中しなくては異星人たちに太刀打ち出来ない。」


「それでも無理だと思います。水爆の直撃でも宇宙船にキズが付くかどうか。火力の強いマイヤーさんの爆裂魔法でも無理ですね。こちらもオリハルコンでコーティングしたミサイルでも作らないと穴さえ開きそうにありません。」


「やっぱり異世界技術と現代兵器の融合か。あまりやりたく無いんだがなあ。そんなものを作ってしまえば独裁者が地球を自由に出来てしまう。それは避けたかったんだがな。」


「独裁者いいじゃないですか。社長がやれば。」


 ボソッと渚佑子が発言する。トンデモ発言過ぎるのか・・・辺りが静まり返ってしまった。


「バカな「それイイじゃない!」」


 いきなりケント王子が口を挟む。


「ちょっと・・・。」


「それで行きましょう!」


 いきなり大統領まで賛同してくる。


「待って下さい!」


 何故、周囲の人間は当事者の俺を置いてけぼりにして、どんどん話を進めていくんだ。


「今すぐじゃない。君が生きている間に異星人が攻めてきたらという前提だ。もちろんその前に君の異世界の魔法使いと『勇者』たちで力を示して貰わなければいけないがな。」


「待て。冗談じゃないぞ! 俺だけじゃなく彼女たちまで巻き込む気か?」


 まだ力を持つ人間はまだいい。力を持たない従業員たちまで巻き込むのは避けたい。だが異星人が攻めてきたらそんなことも言っていられないのか。悩ましいな。


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