第9章-第82話 ついほう
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「ハラッキヨ。なんていうことをしでかしてくれたんだね。」
翌週の写真週刊誌に原清が未成年の女性と裸で抱き合っている写真が掲載された。
「それを言うなら、ナスも同罪だろ。何で俺にばかり言うんだよ。」
あっさりと肯定してやがる。バカだ。バカだと思っていたがここまでとは思わなかった。
「お前。記事を読んでいないのか。」
原清の前に広げて写真週刊誌を置いてやる。那須新太郎宛のお詫び記事と原清の裸のページが見開きで大きく載せられていた。もちろんお詫び記事は先週の記事が間違いだったことを伝えるもので、ホテル側からの抗議文と共にコートをクロークに預けた時間が18分間であり、事実と反する記事を載せてしまったと掲載されていた。
「これが何だよ。ホテルで密会したことには変わりはねえ。別んところでエッチしてるに決まってんじゃねえかよ。」
俺もそう思ったんだけど、そうでは無いらしい。中々賢明な行動だ。ここまで自分の行動を反省できるヤツはそういないに違いない。
「そんなことは聞いてない。俺がこの記事の抗議に行ったら教えてくれたぞ。その写真を持ち込んだのはお前だそうだな。俺は恥かしかったぞ。お前の記事に対する抗議も出来ずしまいだ。」
本当にあのときは顔から火が出るかと思った。
「あの野郎。そんなことをバラすのは仁義違反だろう。」
「そんなことは無いんじゃないか。向こうにとってはデマ記事を押し付けられたわけだから。」
「社長はどっちの味方なんだよ。」
ほぼ100%コイツの敵だな。球団にドロなんか塗りやがって。
まだ雑誌に対談記事は掲載されていないが、大御所は俺の連続奪三振記録というのを高く評価してくれていた。とにかく自分が感動するようなシーンを生み出した選手はそれだけでいいらしい。
対談後には大御所を通じて水面下で原&八木沢のセットで読々シャイニーズと高額の金銭トレードも成立させているから、どんな理由で謹慎させてもお咎めなしにして貰っている。
既に外国人ピッチャーを確保に動いて貰っているが数週間だけ空白期間があるのが問題だ。しかも、那須くんの1軍登録はどんな理由であっても登録抹消から10日以内に戻せない規約があるため、この数日だけは酷い人材不足となってしまうのだ。
「俺は真面目に野球をやっている選手の味方だよ。編集長も笑っていたよ。編集部でマークしていた人物が突然現れるから、どこからか記事が漏れたと思ったのが同僚のリークだったなんて。まあ本当でも嘘でも、お前の記事の前説としては丁度いいから掲載したと那須くんの記事のことを謝っておられたよ。」
「なんだよ。皆して俺のことをバカにしやがって。」
「バカにしているのはお前だろう。ここに掲載されている『未成年は騙されやすい』という記事は本物じゃないか。肉声テープまであって、今頃週刊誌のネット版で掲載されているだろうな。あまりにもバカバカしくて抗議も出来なかったぞ。」
今後はコイツの情報を調査会社を通じて調べ上げて井筒さんを通じて逆リークするつもりだ。
読々シャイニーズや大御所には悪いが一時でも球団の看板を背負わせられただけでも良かったと思ってもらおう。
「しかも、この写真の報酬まで貰ったそうだな。領収証まで残っていたよ。呆れて物も言えないというのは、このことだな。とにかくこのことはコミッショナーにそのまま報告しておく。那須くんの調査は中止されるだろうな。お前の調査はどこまで進んでいるんだろうな。」
「庇ってくれないつもりなのか?」
呆れかえる。まだ庇ってもらえると思っていたらしい。甘えるのもいい加減にしろよな。
「庇う必要がどこにある。貴様は球団の名誉を傷付けた犯人であり被害者じゃ無いんだからな。この写真だけなら庇いようもあっただろうが、リークまでしでかしてくれたのでは球団としても厳しい処分を取らざるを得ない。無期限の出場停止処分とする。もちろん、那須くんの処分は取り消しだ。規約の関係上、あと数日出場登録は出来ないがそこは待っていて欲しい。」
告訴されないだけでもありがたいと思えよな。
「なんでだよ。ナスもやったことには変わりはねえだろ。なんでコイツの言うことは信じるんだよ。贔屓だろ。」
「『苦情は受け付けない』と言いたいところだが、ここ数日他の写真週刊誌も張り付いているし、それ以前も那須くんと雪絵さんは2人っきりで会えるタイミングが無かった。必ず雪絵さんのお嬢さんが同席していたんだ。そこまで調べての処分取り消しだ。文句は言わせんぞ。」
ここ数日、彼の動向は把握していたのだが素直に球団の寮で謹慎していたようなのだ。
ここでやっと原清が出て行ってくれた。ここから出て行った瞬間から調査員が貼りつくようにしてある。いったいどんなボロを出してくれるんだか。
「しかし、君の理性はワイヤーロープ並みだな。あの色っぽい雪絵さんの誘惑をはねのけるなんて。落ち込んでおられたぞ。自分には魅力が無いんだと言っていた。」
あの女にも驚かされた。俺が荻ダンススクールのスポンサーだと知ると擦り寄ってきやがったのだ。鈴江もそうだがあの嗅覚というか妄執には参る。那須くんが影響されないといいんだが。
「そんなことは無いです。もう切れる寸前でした。」
「那須くん。正直なのは君の美徳だが球団にはライバルも多いんだから、下手なことを言ってはダメだ。ハラッキヨみたいなのは特殊だがな。あれで成績も悪ければ即刻切りたいところなんだがなあ。」
「そこで社長のお耳に入れたいことがあります。」
那須くんが報告してくれた。原清に覚せい剤を使用している疑いがあるらしい。彼の『超感覚』スキルによるとほぼ間違い無いようだ。
プロ野球の新人選手には開幕前にプロ野球選手会主催の新人研修が行われるのだが、実は俺は招待を受けていないプロ野球選手会には全てのプロ野球選手に所属する権利があるはずなのだがシーズンが始まる前に規約を変更したらしい。
そのプロ野球選手会が主催する新人研修の中でプロ野球の歴史やアンチドーピングなどの授業と共に麻薬などの誘惑に負けないために麻薬患者の更生施設で、いかに更生するのが難しいことであるかを体験したらしい。
その中で麻薬・覚せい剤・マリファナなどの使用者の体臭にそれぞれ共通点があるのを発見していたらしく、そのうち覚せい剤使用者の体臭の共通点が原清の体臭にあったというのだ。
よしトレードが完了したらその線で調査を続行しよう。そして何が何でも球界から追放してやる。
「地味ゲーマーに時の権力者の(美少女な)娘が(何故か身体を使って)地球連邦軍へ入隊を迫ってきます」が完結しました。
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