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第9章-第81話 めんどくさいやから

お読み頂きましてありがとうございます。

 那須くんにスキャンダルが持ち上がってしまった。人妻が泊まるホテルの一室に入るところを写真週刊誌にすっぱ抜かれてしまったのだ。


 今の世の中はおかしい。誰も彼もが聖職者扱いだ。しかも確固たる証拠も無しに疑惑だけで人間を貶める。


 ラブホテルから出て来たところを写真に撮られたとかなら分かるのだが普通のホテルの一室に泊まっていたのが人妻であり、その部屋に配偶者じゃない人間が入っただけで疑惑となるならば、料亭で密会を続ける男性政治家同士はホモ疑惑になるはずだ。


 一般人は知らないかもしれないが料亭の部屋の隣室にはお布団も敷かれていて寝られるようになっているのだ。


「困ったことになったね。」


 主力選手となっている那須くんを謹慎させたくない。だが既に前例があり、その前例に沿って謹慎を与えるほかに無いのだ。コミッショナーからの横槍は絶対に避けたい。


「ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。私の不徳の致すところです。どのような処分でも文句は言えません。」


 那須くんはさっぱりした顔だ。覚悟している男の顔だ。


「そうか。わかってくれるか。ならば規定通り出場選手登録抹消1ヶ月だな。ところでその彼女とは本当に肉体関係があったのかね。」


 理不尽にも程がある。肉体関係があろうと無かろうとプロ野球選手の資質には関係無いことだ。視聴者はテレビ画面に出ている人間全てを聖職者だと思っているのではなかろうか。


「いいえ。ありません。不用意にホテルの部屋を訪ねたのは事実ですから、疑われても仕方がないことをいたしました。申し訳ありませんでした。」


 那須くんは頭を下げる。本当はそんなことをさせたくないのに。


「それを証明できるかね。」


「そうですね。証明になるかどうかわからないですがホテルに行ったときは大雨でしてレインコートをホテルに預け帰る際に受け取りました。それでおよその滞在時間が割り出せると思います。」


 なるほど、それならば調査可能だ。その調査結果を元に抗議に行ってくるかな。


「わかった。調べてみるよ。まあ気を落とさず、長い野球人生の出来事の一つだと思ってゆっくりと休みなさい。俺も那須くんがイロイロやってくれるもんだから、甘えすぎていた。反省しているよ。しばらくはその彼女とは2人で会わないこと、誰かを入れて3人なら構わない。誰も居ないのなら俺を呼んでくれればいいから。わかったか?」


「はい。わかりました。」


     ☆


 滞在時間は僅かに20分程だった。エレベーターの上り下りを除けば10分にも満たないに違いない。ばかばかしい限りだ。


 手段は幾つかある。純粋に抗議に行く。その写真週刊誌に広告を載せている蓉芙財閥の会社から圧力を掛ける。この調査結果を元に謹慎を解いて写真週刊誌は無視する。


 だがそのどれも使わなかった。写真週刊誌側から呼び出されたのである。


「那須新太郎殿のことはお詫び申し上げます。」


 その編集部は三星新聞本社ビル内にあり、受付を訪ねるとスターグループのオーナーの井筒和重さんと編集長が待っていた。オーナーの婚約者は俺の会社の元従業員でそこから圧力が掛かったようだ。


 滞在時間が短かったことは編集部も調査済みのようで次号に謝罪文が掲載されるということだった。


「ええ、謝罪は受け取りました。そうであるならばこちらも異論はございません。あの写真は誰が撮ったものなんですか?」


「そちらの原清投手が持ち込まれたものなんです。ここに領収書もございます。」


 開いた口が塞がらなかった。原清め。なんてことをしてくれるんだ。


「実はですね。これが次号掲載分なんですが編集部では今彼を追っておりまして、このような記事を掲載したいと思いまして。」


 そこにはベッドの上で未成年の女性と裸で抱き合う写真があった。


 わざわざ掲載前に見せてくれるということは強く言えば止めてくれるんだろうな。


「和重さん。俺、球界って厄介すぎて良く分からないんですよね。」


「掲載は止めましょうか。」


 球団社長としては止めてくれと言いたいのだが個人的感情は違う。もうはっきり言って放出したい。


「ごめんなさい。まずは少し話を聞いていただけますか。この選手は球界の大御所と言われている人物に可愛がられているようで、ことあるごとにその人物が褒め称えるせいで天狗になってしまっているんですよね。」


 なんでも偶然、ハラッキヨが夏の甲子園で優勝したときの試合に感動したそうで、そのイメージのままにハラッキヨがどんな行動をしても肯定してしまうのだ。


 その人物は自分が過去に在籍していた読々シャイニーズに彼を入れたかったようなのだがドラフトにより、他の球団に行ってしまったことが悔しかったようである。


「そうですね彼の言葉は球界を代表しているような雰囲気がありますからね。」


「はっきり言って掲載を止めると後でバレた場合のダメージがお互いに大きすぎますので抗議もしません。今回のことでは彼に対して球団の名誉を毀損したとして訴えようとも考えているのですが、どうやって球団が悪者にされてしまいそうで困っているんですよね。和重さん。何かいい案は無いですかね。」


 はっきり言ってお門違いなことを聞いているのは解っている。でも我慢ならないのである。その大御所を抜きにすれば客観的にみて悪いのはハラッキヨで処分を受けるのは当然なのだ。


 球界は全く経財界や一般消費者とは掛け離れ過ぎてて、どう対処していいのか分からないのである。


「そうだ。山田さんとその大御所の対談記事を三星新聞で組みましょう。そうすれば貴方の味方になってくれるかもしれませんよ。告訴はその後でいいじゃないですか。とりあえずは処分だけにしておけばいい。」


「そんなに上手くいきますかね。」


「上手くいかなければ、そんな輩と付き合わなければいいのです。いつもの貴方のやり方ですよね。」


 そう言われればそうだ。俺と会った人間は好きになってくれるか。毛嫌いされるかどちらかなのである。無論、そんな輩と付き合ってもなんら利益にならないので遠ざけることになってしまっている。


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