第7章-第58話 はーふたいむ
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「なあ中田。お前、Ziphoneフォルクスのユニフォームを着れるか?」
新生Moty全員で今後の活動方法を考えているところだ。各個人の仕事が忙しいこともあり、長期間の活動はできないのでコンサートはツアーじゃなく単発になるだろうとか結構条件が厳しい。
「先輩いきなり何を言い出すんですか。幾ら何でもこの歳でプロ野球選手はできませんよ。」
年齢以前の問題だろう。アイドルクループだったからか趣味になりそうなものは料理から各種スポーツなど何でもこなすがプロ級なのは漫才のツッコミ役以外見た事がない。ああこれは趣味じゃないか。
「お前、本当にボケ役は下手だな。何処にツッコミを入れていいか判らんかったぞ。」
普段ボケ役をしていない所為かボケ役は圧倒的に下手すぎる。
「すみませんね。」
「まあいい。中田はプロ野球は読々シャイニーズのファンだったよな。Ziphoneフォルクスのユニフォームは着れないよな。」
コイツの場合、差別用語を使いたくなるほどの熱狂的ファンだから、他の球団のユニフォームなんて絶対に着れまい。
「千吾。千吾なら着れるよ。先輩に絡む仕事があるんだよね。」
千吾もファンと公言している球団があったはずだが大丈夫なのだろうか。
「ああ、球団社長に任命されて立て直しを迫られている。そこで5回のハーフタイム時に全員は無理でも1人か2人くらいMotyとして歌ってもらおうかと思っているんだ。」
ほとんど、その時間帯に空いていたらという程度で事前にわからないゲリラ的に行なうのが望ましい。今日は野球のほかに芸能人が見れてラッキーだったくらいでいいのだ。
「なるほど野球ファン以外の客を呼び込むんですね。」
流石は中田、話が早い。
「ここに居る皆はそれぞれファンだと公言しているプロ野球球団があるよな。Ziphoneフォルクスのユニフォームを着て歌うのは難かしそうだな。」
「千吾は大丈夫。Ziphoneフォルクスのファンという特定のキャラ設定で行くから。」
そういえばコイツはキャラ作りが得意なんだよな。どんな恥ずかしいキャラクタでもこなす凄いヤツだ。俺には真似できない。
「うんうん。期待しているよ。じゃあ、それぞれが好きな球団のユニフォームを着て歌おうか。相手チームだったら、それはそれで盛り上がるだろう。」
「私はパシフィックリーグにファンと公言しているチームはありませんから大丈夫です。交流戦の時は京阪トラトラズのユニフォームを着ますけどね。」
京阪トラトラズには熱狂的ファンが多いが板垣は冷静沈着タイプだからそんなふうに興奮した姿をファンに見せられないのだろう。
「板垣はそれでいいとして、中田は読々シャイニーズでひかるさんは東京ドラドラズの熱狂的ファンとして有名だからそれぞれのユニフォームを着るということでいいんじゃないかな。」
「あら違うわよ。私はZiphoneフォルクスなの。旦那に宗旨替えをさせられたから。あの人ってね。それまで全くプロ野球に興味が無かったくせに突然Ziphoneフォルクスの熱狂的ファンになったのよ。何故だか解る?」
その場に居た全員が頷く。またか。また俺の真似なのか北村。全然興味が無かったのも俺の真似なら。俺がZiphoneに関わるようになったから、Ziphoneフォルクスの熱狂的ファンになったというのか。
「なんか。すみません。」
前にもこうやって謝った覚えがある。あれはMotyへの参加を呼びかけたときだったな。
「謝らなくてもいいわよ。娘もファンなの連れて来てもいいわよね。この企画をあの人に聞かせてあげたら、どんな顔をするかしら。今から楽しみだわ。」
女性は怖いな。特に子供を持つ母親は強い。下手なことをしたらどんな報復が待ち受けているか解ったもんじゃない。北村のヤツ、一生このネタで虐められるんだろうな。庇ってやれないから冥福を祈っておこう。