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第7章-第57話 ゆうしゃのあつかい

お読み頂きましてありがとうございます。

「さつきのことだから、Ziphoneフォルクスの資料を纏めてあるんだろ。」


「まだ。途中だったけどね。」


 珍しいな。大抵の資料なら1日で纏め上げてくるさつきが、中途半端に資料だけを揃えた状態で取り出してくる。それだけ心配を掛けたんだな。


「あまり無理するなよ。さつき。大事な身体なんだからな。ベッドに行くか?」


 俺がさつきの肩を抱いて部屋を出て行こうとするとそれまで黙っていた人間から声が掛かる。


「ちょっと待ってください。社長。ここには我々も居るんです。」


 そうだった。渚佑子とフラウさんも居たな。全く気が利かないんだから。空気を読もうよ。


 渚佑子も俺に指示されずとも次に何をしなければいけないかくらい考えて欲しいものだ。


「渚佑子は今回の異世界召喚について反省文3000字を書いて持ってくること。あとフラウさんを部屋に案内してくれ。」


 渚佑子は文章が苦手らしい。反省文なら1万字くらいは必要なんだが3000字を越えた辺りでピタっと文章を作成する速度が止まってしまうらしい。はじめから3000字を指定するとそれなりに纏めてくる。


 それでも苦行には変わりは無いらしく睨んできた。怖いって。


「フラウさんも当分、何もするな。日本の生活に慣れるのが仕事だ。あとで使いの者を寄越すから何でも相談しなさい。こちらの世界では決してキレないでくれ。人殺しはダメだ。庇えなくなる。」


 少し厳しく言い過ぎたのかフラウさんが何かを言いかけて止める。あまり良くない習慣だ。


「なんだ。言いたいことがあれば、はっきりとその場で言いたまえ。そうやって溜められるとこっちが不安になる。」


「私、そんなにキレやすくありません。」


 そうかなぁ。俺はデモンストレーション的にキレてみせることはあっても怒りに任せてキレることは無いな。最近は。


「なんだ。言えるじゃないか。言ったほうがすっきりするだろう。これからはすぐに言うように。とりあえず日常生活できるものを異世界から持ち込んでいるだろうが、殆ど使えないと思いたまえ。使いの者に外出着を持たせるから、一緒に外出して調達してくれ。お金は気にするな。後でしっかりと働いて返してもらうから。」


 渚佑子は反省文が頭にあると辛く当たりそうだし、ここはジェミーが適当かな。外国人から見た日本という価値観を共有できそうだ。


「わかりました。」


 渚佑子にマンションの一室の鍵を渡すと『転移』魔法で消えた。エレベーターを使えよ。渚佑子にも常識を学ばせる必要があるのか。いや、あいつの場合確信犯だからな、言っても右から左に抜けていく。


     ☆


 さつきを寝かしつけてから、少しだけその身体を抱き締めて休息を取る。


 妊婦に負担を掛けすぎだな。しばらくは日本に居るか。それでも大統領には連絡を取っておきたい。やっぱりブレインが必要だな。フラウさんが上手く育ってくれるといいんだが・・・。


 とりあえず幸子にフラウさんの件をメールをしておく。掻い摘んで指示の文章を書き加えたところでそれを削除する。こいうことをするから自ら動かない部下になってしまうんだよな。我慢我慢。


 ホットラインを使うほどの用件でも無い。それに直接アメリカ側に伝えてしまうとフラウさん側に立つ者が居なくなる。幸子がそこのところを汲んで上手く動いてくれるといいが。


 『麻生劉貴』『漫画家』でネット検索を試みると結構なヒットがあった。野球漫画を描いていたらしい、スポコンじゃなくて野球のシーンは出てこないラブコメととして有名らしい。


 まあ少なくとも俺よりは野球について知識があるだろう。年齢、スキルからしてキャッチャー向きかな。しばらくそっち方面で手伝ってもらおう。渚佑子に頼んで錬金術で神から貰った聖なる盾をキャッチャーミットに変換できないかな。相談してみよう。


 穂波くんとは違ってブレイン向きだから将来は漫画家と2足のわらじを履いてもらうつもりだが、当分は野球漫画家兼プロ野球選手という2足のわらじを履いてもらうか。ネームヴァリューはせいぜい利用させてもらう。まあ彼がこの世界の人間だったらという制限付きだが。


 穂波くんもプロ野球選手かな。聖剣をバットに変換してもらうのは野球規約上無理だから、こっちは『成長』スキルだけでやってもらうしかない。まさか本気で『勇者』を牛丼のバイトにするわけにもいかない。


 Ziphoneフォルクスの資料を捲っていく。経営状況は酷いものだ。万年BクラスだというのにAクラスのチームより年棒が高い選手が多い。この辺りを是正すべきだな。とりあえず麻生くんと穂波くんがいれば万年最下位はあるまい。


 たとえ良い選手が流出しても経営できないんじゃ仕方が無い。この『原清(はらきよし)』というチーム最多勝の投手はAクラスの5番手投手レベルの勝率なのにトップ選手並みの年棒になっている。ほかにも多くの選手の年棒が高すぎる。せめて去年のリーグ優勝チームレベルまで落としたい。


 後は球場か。これは足元を見られているな。Ziphoneグループが儲かっているから値上げしても大丈夫とか思われているんだな。これを理由に本拠地を移動する。プロ野球球団をサッカー人口の多い静岡県に置いておく意味は無い。


 千葉県か埼玉県辺りには持ってきたい。できれば高層マンション近くがいいが何か無いかな。この辺りはさつきが経営する調査会社にメールしておく。


 かと言ってまた条件の良い球場使用料を将来値上げされたんでは意味が無い。使えそうな物件を買い上げかな。


 近々にしなければいけないのは挨拶回りだな。それとプロテストと各種制度を守りつつ規制緩和、沢山やることがあるじゃないか。あと野球が詳しそうな人間とか居るるといいけど。

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