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第6章-第54話 なんのつもり

お読み頂きましてありがとうございます。

 どうして俺はこうも酔っ払った女性に絡まれることが多いのだろう。


 このレイティアという女性とは初対面のはずなんだが。


「ねえ~聞いている~の?」


 指環の『鑑』で見る限りかなりの酩酊状態でいつ頭の上からゲロが降ってきてもおかしくない状態だった。もちろん笑顔を作りながら、いつでも『移動』魔法で逃げられるように構えている。


「フラウを幸せにしないと許さないわよ。」


 妊婦のエミリー王女は酔っていないはずなのだが、こちらも絡んでくる。


「だから俺に言ってどうする。そういうことはアソウくんに言えよ。」


 アソウくんもホナミくんも居なくなっていた。そういう危機を察知する能力は凄いと思う。俺が巻き込まれやすいだけか。


「そうじゃないでしょ。フラウちゃんをこの世界から奪っていくのは貴方なんだから、ちゃんと幸せにすると約束してよ。私の大切な家族なんだからね。」


 うわっ。この女卑怯すぎる。眦に涙を溜めるなんて高等技術を使いやがった。


「そうよ。いつ別れるかもわからないフラウの男と約束してどうすんのよ。貴方、王様なんでしょ。フラウの王様なんでしょ。だったら、最後まで面倒をみるのが当然じゃない。」


 エミリー王女が俺の胸元を掴んで揺らしてくる。まあ確かにかなりキレやすい『聖霊の滴』だから、日本でも何かをしでかしそうで恐いものがある。最悪、チバラギに押し込んでおけばいいのかもしれない。


「わかった。わかったから離してくれないか。フラウさんはうちの大事な家族(じゅうぎょういん)だから、最後(ていねん)まで面倒をみるよ。約束するよ。だから離してくれないか。」


 まあそれでも俺が一度従業員にしたら、手放さないだろうことは今までの経験上分かっていることだ。あとの2人はともかくかなり有望な『勇者』だ。ブレインとして手元に置いておきたい。


「うっ。」


 この女とうとう吐きやがった。良かった俺を掴んでいたのがエミリー王女で。万が一、この女に抱き付かれでもしていたら『移動』魔法では逃げ切れないところだった。


 そういえば、幸子も良く酔っ払うんだよな。そして後処理を俺がするハメになる。彼女にはいろいろ気苦労をかけているから仕方が無いところもあるんだよな。


「失礼!」


 全て吐き終えたのを確認して右手を女の背中に持って行く、いつも使っている『水』魔法の一種で体内の血流の循環を早めて、早く酔いをさまさせることができる。


 いつもの調子でやってしまったが拙かったかな。彼女の豊かな胸が当っている。ワザとじゃないんだぁ。


「ごめんなさい。」


 こちらこそごめんなさい。セクハラするつもりなんて無かったんだ。


「1年は禁酒だ。物凄く血の巡りが悪くなっていたぞ。野菜中心の食事にするんだな。」


 もちろん、そんなことを顔には出さない。ついでにアドバイスを贈っておく。早死にするぞ。


     ☆


 部屋に戻ると結構酔っ払っていたことに気付いた。いつものことなんだが、他人の介抱を行なっていると自分に対して『水』魔法を使うタイミングが無くなって余分に酔ってしまうのだ。


 トントン。と扉を叩く音がする。


 扉の前には、あのレイティアという女が立っていた。


 まだ俺に何か言うことがあるのかな。


 それともセクハラされたと訴えるつもりなのか?


 俺もかなり酔っ払っているらしい。いつもと思考が違う。


 勝手に部屋に入ってくると扉を閉める。いったい何のつもりだ。


 そう思ったのも束の間、いきなり着ていた服を脱ぎ出した。


 これではいくら鈍感と言われている俺でもわかる。俺を押し倒すつもりのようだ。


「ちょっと待て。なんのつもりだ。」


「抱いてください。」


「ダメだ。」


 それだけはダメだ。この世界に俺の子種を残すことだけは絶対にしてはいけないことだ。万が一、俺の子供が魔法を使え、その子孫にそれが引き継がれていったとしたならば、再び戦いの歴史を繰り返すことになるだろう。


 考えすぎかもしれないが、ここまで可能性を排除してきたのに自分の欲望のために全て台無しにすることなんてできない。


「何故ですか。私が娼婦だからですか?」


 そういえば、この女娼婦だったな。その滲み出る色気に溺れそうになる。今まで経験したことがない渇きを覚える。


「違う。」


 俺はそういった差別をしない人間だ。いや差別したくない人間だ。


「この身体は好みじゃないですか?」


「いや、とても綺麗だよ。だから止めてくれないだろうか。」


 思わず弱音を吐いてしまった。酔っ払っている所為で理性が上手く利いてくれない。このままだと尻尾を巻いて、『移動』魔法で逃げ出さざるを得なくなってしまう。


「では何故?」


 彼女が俺に詰め寄ってくる。裸の身体を押し付けられて、理性が飛んでしまいそうだ。そして、彼女が唇を近づけてくる。


「ゲロ臭い女とキスをしたくないんだ。」


 思わず酷い言葉を投げつけてしまった。


 彼女は一瞬ショックを受けた顔をするが、シャワー室に飛び込む。洗い清めてくるつもりのようだ。その間に俺は自分に『水』魔法を使う。少しでも理性を取り戻して、これ以上酷い言葉を吐かない様にしなくては。


「この世界に俺の子種を残してはいけないんだ。万が一、この世界に魔法使い現れれば戦いの火種になりかねない。しかも、俺は召喚が使える魔法使いだ。この能力が子供に伝わると再び異世界召喚が可能となってしまうだろう。それでは元の木阿弥だ。」


 さらに上気した姿で現れた彼女を取り戻した理性を総動員して止めて説明する。


「何故。初めからそう言わないのよ。そんなことなら、無理に襲うつもりは無かったのに。どうしてくれるのよ。私の心はズタズタよ。」


「どうすればいいんだ。」


 そう言われてしまうとどうしようもない。酔っていたのはいいわけにならない。どんな代償を要求されるかわからないが何でも聞くほかなさそうだ。


「貴方を抱くわ。いいわよね。」


 一瞬、頭がパニックになる。この女何を言っているんだ。


「何を聞いていたんだ。」


「違うわよ。子供を作らずにエッチする方法なんていくらでもあると言っているの。私を誰だと思っているのよ。」


 娼婦だ。『聖霊の滴』の話では娼館街界隈でトップクラスの娼婦だと聞いた。彼女の話ではいまいち信用できないけど。ここまで言っているのだ信用するほかないようだ。

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