第6章-第52話 ちゃぶだいがえし
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「これはいったいどういうことだ。」
もう嫌になる。ヴァディス王がココまでバカだとはな。
「これだから、異世界人は甘いと言うのだよ。わしがそんな蛮族に本当に頭を下げるはずが無かろう。」
まあそうだろうな。まあ出来ないなら死んでもらうだけなんだ。エミリー王女のことが心に引っ掛かるし、『勇者』たちも納得しないかもしれない。『聖霊の滴』という証人さえいればなんとかなると思いたいが。
「どうするつもりだ。」
さあ先に手を出してこい。
「ゴブリンの女王を渡して貰おう。人質に『ファイアボム』」
まただ。『聖霊の滴』はキレやすいらしい。まあこれで『勇者』たちにいい訳も立つからOKなんだが。
「リュウキさん!」
それにしても俺の出番が無いな。今回はトコトン出番が無いらしい。
「この裏切りものめが! これまで散々立ててやった恩を忘れてわしに向って攻撃するとは何事ぞ!」
もう面倒だから皆殺しだな。普通の甲冑姿だから普通の弾丸で十分だ。機関銃には普通の弾丸のカートリッジを装着する。
「機関銃かよ。あいつ本当に日本人?」
ツッコミ役ご苦労さま。やっと出番だ。ゴミ掃除だなここまでくれば。向ってくるものは敵、逃走するものも敵。俺は『勇者』たちほど甘くはできていない。
あとは間違って渚佑子に当てないようにするだけの簡単なお仕事。
「そんなバカな。本当にお前たち人族なのか。何故、蛮族の味方をする。人の皮を被った化け物なのか。」
人の顔に泥を塗っておいてそれを言うか。相手の立場になって考えようよ。君なら絶対相手を許さないよね。
「オールド王子。禍根を残さないためにその手でヴァディス王を討て。」
最後はこの世界の人に責任を取って貰う。
「ふう。全くやっかいなことをしてくれる。先の戦争でもそうだったな最後まで頭を下げなかった。見上げたものだと思ったが今は違う。最低だよ。悪いことをしたら謝る。ガキでもできることだろ、王ができなくてどうする。」
「だが王が頭を下げるということはあってはならぬ。あってはならぬことなんだ。」
代々そう伝わってきたのだろう。全部『勇者』任せだもんな。仕方が無いか。
「私は・・・私だけは、そんな王にはならない。仕方が無いから、代わりにやってやるよ。」
オールド王子は剣を抜き放ち、ヴァディス王の心臓に向って一突きすると王の身体は崩れおちる。
まあこんなものか。
☆
「なあトム殿。王宮・後宮の開放から王都の残党狩りも私の仕事なんだよな。」
オールド王子を人族の代表とした休戦協定の調印がその場で行なわれた。条件は殆どそのままだ。めんどくさいからな。
「そうだ。ヴィオ国への併合に王都を直轄地にしたり、各領地の再配分や領主の任命とやることは沢山あるぞ。地方貴族の力を分散化させるための新たな貴族の任命が一番難しいところだな。」
旧然とした貴族と新興勢力とのバランスか。考えたくもないな。
「なあ・・「ダメだ。俺は4日で帰る。あと2日だ。まあ王宮・後宮の開放くらいは手伝ってやるよ。術式の回収もあるしな。」」
手伝えるのはそれだけだ。こっちもやることだけは山のように残っているのだ。これ以上手伝ってられるか。
「そうか、あと2日か。それまでに全ての術式の回収か。とても手伝って貰えう暇は無さそうだな。」
分かっているなら聞くなよな。君たちには時間だけはたっぷりあるんだから大丈夫だよ。
「まあ、そう悲観するな。今日の夜と明日の夜はヴィオ国の王宮に泊まっていくことになるはずだから、相談には乗ってやるよ。」
「あー、本当にオーディンの奴を取り返したくなってきた。奴のほうが事務処理や人の使いかたは上手いんだよな。」
あの男な。まあ居なくなる人間よりはそっちを優先すればそうなるか。だが取り返すには結構譲る必要があるんだがな。そこはオールド王子が考えることか。
「いいんじゃないでしょうか。」
あの男のことに関しては『聖霊の滴』に発言権が残されている形になっているが、国と国の交渉になるから譲るところは譲る必要がある。
「いいのか?」
「いいです。許可します。身分は女王の種馬のままであればいいですよ。私は居なくなる人間なんですから。」
「女王の種馬ね。決定だな。今度、交渉してみよう。」




