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第6章-第47話 ていげん

お読み頂きましてありがとうございます。

 ここには2つの人族の国があり、戦争をしていてついこの間まで休戦状態だった。だがそこに第3の勢力であるゴブリンたちがやってきて、ヴァディス王国を占領してしまったということらしい。


 かろうじてヴァディス王国の王宮だけが抵抗していたが、大多数の国民を隣国のヴィオ国に逃がして、最後の抵抗という名前の名誉の戦死を選ぼうということだった。


 全く何が名誉の戦死だ。死んでしまえば終わりだというのに。


 どんな不名誉な状況でも、生きてさえいれば取り返せるということが分かっていないらしい。


 社会、文化を形成しているといっても、やはりゴブリンなどの外敵が居る異世界なのだ。自然と王制が出来上がっていくらしい。まあ民主主義国家のほうが不自然なのだがな。


 そのヴィオ国の王太子とヴァディス王国の王女がその場に居た。


「君たちは、この状況を引っくり返せると言うのか?」


 俺がヴァディス王国の王宮に向おうと言うとヴィオ国の王子が質問してくる。休戦状態にあったとはいえ、隣国の名誉は自国の名誉と同様に大事なことなのだろう。


「さあ。少なくとも渚佑子は、そこに居る『聖霊の滴』と呼ばれている女性よりはその実力がある。」


 今回の『召喚』の扉に関しては俺の『境渡り』魔法と同様に現代世界の神による干渉を受けなかったので、渚佑子のスキルはアップしなかったがそれでも3度の『召喚』により、他の『勇者』とは較べ物にならない高度なスキルを持っている。


「ではそれを証明してもらおう。できないとは言わせない。」


 証明ね・・・。


「うーん。渚佑子。殿下の足を治して差し上げろ。」


 『聖霊の滴』と呼ばれる女性は聖魔法の使い手のようだったが手足の欠損を治すところまではできないらしい。魔法使いのレベルによるものなのか、この世界にそんな魔法が無いのかは分からないが、それが証拠に目の前の王子は義足のようなものを付けているようだった。


 これを治せば、一番わかり易く強い説得力を持つだろう。


「治せるのか?」


「ええ、殿下。ここに座って頂いてもよろしいでしょうか?」


 俺はその場に自空間からイスを出して勧めた。


 渚佑子は幾つかの世界の魔法が使える。もちろんその中に欠損を治す魔法も含まれている。


     *


「渚佑子。聞いていただろう? 敵は数千、居ても2万足らずのゴブリン。君ならどうする?」


 王宮で謁見の準備が整うまで待たされることになった。ヴィオ国の王子のお墨付きを貰った形だ。


 他の世界の王に会うということでチバラギ国の正装に着替えた。


「魔法が使えるとはいえ、まだ簡単な魔法しか使えていないようですし、私ひとりでも全滅させられます。さっさと終わらせて帰りましょう。」


 流石は冷酷無慈悲の渚佑子様だ。


 思わずため息が出てしまう。


「なんでしょう。間違ってました?」


 ため息で返した俺に不満なのだろう。即座に聞き返してくる。


「これだけの現代世界の『勇者』が揃いも揃って同じ答えなんだな。まあいい。この世界の人が受け入れられないかも知れないからな。まずは謁見して聞いてみよう。」


 俺の言葉が謎だったのだろう。渚佑子は頭を捻っていたし、他の『勇者』たちも仲間と相談していたが俺の答えと合致するようなものは出てきていないようだった。


 そうこうしているうちに謁見の準備が済んで、呼ばれたので兵士たちに同行する。


「王の御前である。そのほう無礼だぞ。」


 俺たちが入場するとすでに王様がイスに座っており、横に后らしき人物や宰相と思われる人物が一段高い位置に居た。


 しかも、俺と渚佑子が立ったままだったのが気に入らなかったのか。司会役となっている人の口から叱責が飛んできた。


 はあ。本当に帰りたくなってきた。ダメだこりゃ。プライドの塊だな。


「ポセイドロ国の元国王トム・ヤーマダ・チバラギだ。」


 王位には王位だな。使えるものは何でも使っておくに越したことはない。


 わざわざプライドの高い王に向って、『お前の臣下じゃない』とか言っても仕方が無いからな。


 そして軋轢を作ってさらに帰るのが遅くなるのは無意味の極致であるが、俺がここで腰を折るわけにもいかない。


 辺り一帯が静まり返った。


「そろそろ、話を進めさせて貰っても構わないだろうか。俺は、『境渡り』魔法が使える。従っていつでも渚佑子つまり君たちのいう『大賢者』様を元の世界に連れて帰れる。その上で聞いてほしい。」


 さらに沈黙が続く。そのプライドが無意味であることが分かるように切り札を見せておく。


「俺はゴブリンに対して、『話し合い』による解決を提言する。」

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【新作】「ガチャを途中で放棄したら異世界転生できませんでした」
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