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第5章-第43話 こうこくだいりてん

お読み頂きましてありがとうございます。

「何か。総務省から言われましたか? お義父さんらしくないですね。」


 いつもならゴンCEOが呼び出されるところだが、向こうから役人がやってきて何かを話していったらしい。


「ああ。物凄く遠まわしな言い方じゃったが、ドッコデモが総務省に泣きついたらしい。このままでは潰れるとな。」


「あそこは内部留保が凄まじいから、この程度じゃ潰れませんよ。あと1ヶ月は放っておくつもりでしたが・・・。」


「それは拙い。ドッコデモが赤字決算なんかをやらかしたら日本経済の先行き不透明感が増して、平均株価が下がってしまう。それではZiphoneの資産価値に影響が出る。そうなればラインズ・テレコムの買収が難しくなってしまうぞ。」


「大丈夫ですよ。そこまで計算しての1ヶ月ですから、もちろん反動があるはずなのですが反動を入れなくてもギリギリ黒字のままでいけます。」


「そうなのか。じゃあ、わしが先走りしてしまったようじゃ。」


「えっ。なんとかすると答えてしまったんですか?」


「ああ。もちろん次世代機器の周波数はドッコデモより優先的に割り当ててくださるそうじゃ。」


「それなら、仕方が無いですね。ドッコデモにトップ会談を申し入れてください。」


 ここまでは筋書き通りだ。実は『チョン』の居場所など、空間魔法で既に突き止めているのだ。


 もちろん、窃盗犯はドッコデモの会長では無い。それどころか、ドッコデモの社員ですらないのだ。


     *


「条件は、博通堂切りです。あの記者会見、おかしいと思いませんでしたか?」


 ドッコデモだけでなく多くの大手企業が記者会見を開く場合、大手広告代理店に記者会見のリハーサルをするのが常道だ。


 それをやらずに自滅した企業は多い。異物混入の記者会見でハンバーガー業界の最大手から転落した企業などがいい例だ。特に外資系は日本の慣習なのに疎いため、反感を買いやすい記者会見をしてしまう傾向があるように思う。


「ああ。いつもよりも想定問答集が少ないように感じた。だから、記者たちの質問に上手く答えられなくて、火に油を注ぐ結果になってしまった。まさか、犯人は博通堂なのか?」


 やはり、記者会見のリハーサルをしたのは博通堂のようだ。記者会見専門の広告代理店もあるようだが、そこを起業した人間も博通堂の出身だったりする。


 広告代理店という会社は、なんでも屋なのだ。その中でも最大手の博通堂は出版業界やテレビ業界のノウハウに関してはのっぴきならないものを持っている。


 ただデジタルに関してはドッコデモ傘下、Ziphone傘下の広告代理店のほうがノウハウを持っており、博報堂も勉強しながらの参入であり案件を受注できても採算ギリギリラインだという。


 それでも広告代理店といえば、博通堂のイメージが強い。


「そうです。こちらで徹底的に調べた結果、あのCMに反感を持っているのは、貴方たちドッコデモと博通堂だけです。Ziphoneに反感を持つ人々でも結構好意的な視線で見られているみたいです。」


「うん。あれは上手いCMだ。まさか・・・。」


「どうしたんですか?」


「ああ、博通堂があのCMに似たCMの提案をしてきたことがあったんだ。もちろん断ったが、あれを受け入れて放送していたら・・・。」


「ええ。今以上にバッシングを受けていたでしょうね。」


「あいつら、初めからドッコデモに擦り付けるつもりだったのか。わかった。新規案件からはそれとなく排除していこう。それでよろしいかな。」


 元国有企業の親会社を持つ企業だから、しがらみが多すぎてスッパリ切れないのは分かっていたことだ。Ziphoneでも契約中の案件を切るようなことまではしないつもりだ。


「では、博通堂の会長宅へ同行していただけますか? もう話は通してあります。」


「そこまで掴んでいるのか。本当に君は得体が知れないな。・・・いや、悪い意味で言ったんじゃないんだ。是非とも仲良くしてもらいたい。」


「ええ。また何かをお願いするときがあるかと思いますが、その時はよろしくお願いします。」


「もちろんだとも、君が提唱しているという高卒コネ入社の件も子会社では導入させるつもりだ。」


 得体が知れないのはドッコデモの会長のほうだったようだ。あの提案の有用性を見抜き、それに賛同してくるとは侮れない。


 ドッコデモ側が返しきれない借りを作ったつもりだったが半減してしまった。確かに大手企業でも簡単に導入可能なのは製造業のブルーカラーが主だ。Ziphoneでもどこまで導入が可能かはまだ手探りな状況だ。


 直ぐに導入できても工業高校卒業した人材を保守管理の人材に充てるのが関の山なのだ。


 あの提案の有用性が見抜ける人間がトップにいるというだけでも、随分と違うだろう。


 正直言って、今の大卒はコストパフォーマンスが悪すぎる。塾だのなんだのと何千万円も子供に投資しても、それ以上の見返りが約束されていることは無い。


 極々一握りの人間だけが超一流企業と言われているところに就職できる。まるで宝くじに掛けるような倍率だ。だが今の時代、そういう企業も潰れない保証は全く無いのだ。


 それならば何千万円も投資するよりは残しておいて失業したときに、個別に助けたほうが物凄く効率がいい。誰が考えても社員も自由に使えるお金が増えて幸せになるし、その子供も幸せになるはずなのだ。

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