第4章-第37話 どうぐにされていたのか
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「枢機卿は何か食べられますか?」
「いらん! そんな貧相なもの食えるか! これだからチバラギは田舎者だというのだ。食文化というものが無いのかここには!」
チバラギというよりは現代世界をバカにされたような気がするけど。
「しかし、そちらの国で育った『勇者』の2人は涙を流して喜んでいるようですが。」
先ほどまでスマートフォンで無料にゲームをダウンロードして遊んでいたが、それぞれの食べ物を口にした途端、涙を流して食べている。
異世界転生した『勇者』には効くなあファーストフード。
「貴様たちには、散々贅を尽くしたアルメリア料理を用意してやっただろうが! こんなもの! こんなもの! こんなもの!」
枢機卿が彼らの食事を床にぶちまけ、机に置いてあったスマートフォンを床に投げ落として、足で踏みつけている。あーあ宗教家のクセに食べ物を粗末にしないという教育も受けてないのかね。
「ああっ! なんてことをしやがる。このクソジジイ。アルメリアの政治家との食事なんてしても、美味しいわけないだろ。やっぱり、好きなものを好きなだけ食べるのが一番美味しいんだよ。」
アルメリア教団では彼らを政治の道具としても酷使していたようだ。
「なんてことをするのよ。夢にまで見たスマートフォンだってのに、ガラスが割れたじゃないの。もう怒ったわよ。私はチバラギ側につく。もうこれ以上、アルメリアの道具にされたくないわ。」
流石に現代っ子、スマートフォンを壊されたら即キレるよなあ。
「僕は・・・ハリスに聞いてみないと。」
「そうだったわね。この子、生意気にも彼女持ちでそれもハーフエルフなんですよ。」
こっちの男の子が以前パリスが言っていた『勇者』だったんだ。良かった殺さなくて。
「そんなことできるものか。少なくとも冒険者ギルドの借金は帳消しにはならないぞ。」
「いいわよ別に、山田さんに直接雇ってもらうから。それに携帯電話会社を変えたら、他社の違約金は全額払ってくれるものよ。そうよね。」
俺が携帯電話会社の副社長と言ったせいか。そこに引っ掛けたジョークらしい。
冒険者ギルドの借金額を聞いてみるとオリハルコンのインゴット1個分にも満たない金額だった。日本の原価で3000円で身柄を引き取れるなら安いものだ。
「そうだな。あのファーストフードの店長待遇でどうだろう。マニュアルもあるし君たちなら簡単だろ。但し2年縛りを付けさせてもらうぞ。隷属の首輪を外すのは2年後ということだ。」
「あは。良かった冒険者なんてこりごりだったのよ。2年後に信用を勝ち取れたら、向こうの世界にも連れて行ってくれる?」
「そうだな。それまでに渚佑子と仲良くなっておくんだな。向こうの世界で案内役をさせるからな。」
万が一、向こうの世界で暴れられたら厄介だ。俺には無理だが彼女なら躊躇わず処分してくれるに違いない。
「トム! 緊急事態です。国境にアルメリア軍と思しき兵が現れたそうです。その数、およそ1万。どういたしますか?」
道理で枢機卿に余裕があると思ったら、別働隊が潜んでいたようだ。
「アヤと辺境軍は国境付近の兵と合流したあと例の場所で待機していろ。執務室でリモートコントロールでトラップの操作を行なうのでカメラの用意も忘れずにな。」
「わかりました。では、行ってまいります。」
「愛しているよアヤ。くれぐれも命を粗末にするなよ。危ないと思えば引き返してこい。」
俺がそう言って送り出す。
「はっはっは。驚いたかね。早く降参したほうがいいぞ。」
「枢機卿はこう言っているが君たちはどう思うかね。」
「バカじゃないの。たかだか1万の歩兵でしょ。機関銃の餌食になっておわりよ。」
「僕は山田さんが言ったトラップを見てみたいな。進軍を開始して何ヶ月も経っているんだ。相当準備されているよ。」
「じゃあ、期待にお応えしてトラップの数々をお見せしよう。渚佑子、皆様を執務室にお連れしてくれ、ああ時間はまだあるから、ファーストフードで食事をしてからでいい。」
*
執務室にある60インチの液晶テレビにはアルメリア軍の状況が刻一刻と映っている。
「どうなっているんだ。なんでアルメリア軍がこんな小さな箱の中に入ってしまったんだ。」
枢機卿が液晶テレビに近寄ろうとするのを渚佑子が鎖を引っ張り止める。いくらなんでも液晶テレビまで壊されたくはない。
「素直に座ってみてなさいよ。アルメリア軍の最後を。」
「悪役令嬢がガンガン迫ってきます」は完結しました。
7万字ほどですので読み易いかと思います。
また新作「死霊王の伴侶」の連載を開始しております。
こちらは少しシリアス成分多めです。
http://ncode.syosetu.com/n7453dw/
よろしくお願いします。




