第3章-第31話 みんしゅしゅぎとてろ
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「KKKですか?」
今回のテロはホワイトハウスで首謀者が既に把握済みだった。そのあまりに古い組織名に驚いてしまった。KKKといえば、アメリカ南北戦争後に組織化された非合法組織として有名だ。
「民族主義と言ってもいいかもしれない。」
「アメリカの民族主義ですか。KKKということは白人至上主義ということですよね。でも、アメリカの富裕層も企業のトップも政界も殆ど白人ですよね。それなのにテロを起こすんですか?」
「ああ、グローバリズムによって、全てを白人社会で回すことができなくなった。企業のトップは白人でも労働者や消費者の多くが白人以外で白人至上主義とも言っていられない状況になってきたのだよ。」
それは日本の企業でも言えることだ。全て日本人で回していたら、会社の成長は簡単にストップしてしまう。
「アメリカ人は借金をして物を買う民族というのは知っているだろうか?」
これは結構、有名な話だ。逆に日本人はお金を貯めて物を買う民族だと言われている。
「そうですね。日本人とは逆ですよね。」
「アメリカの白人はその傾向が強いんだ。自分の収入にあわせて、上手くやりくりしてローンを払っていく。」
これも日本人には真似ができない。事実、日本人はお金を貯めるのは上手いがやりくりして増やしていくのが下手だ。身の丈に合わない大きな買い物をしてしまったり、年金なんかも運用に失敗ばかりして減らしていくばかりだ。
「だが、それもサブプライム住宅ローンによる破綻で多くの白人が路頭に迷ってしまったんだ。家を失い、職を失ってしまった。」
「でもそれは、白人以外のアメリカ人でも同じですよね?」
「ああ、だが今までの白人優遇政策のツケを払っているのだよ彼等は。」
「ツケですか?」
「白人は大学を出ていなくても、職にありつけた。だから、誰も高学歴を目指さなくなってしまった。気が付いてみると白人以外のほうが高学歴になっていたんだよ。」
「白人以外にも高学歴じゃない人間が居ますよね。」
「ああ、だが彼等は底辺からやり直せないんだよ。今まで掴んでいた幸せを取り戻すことしか頭になくなっているんだよ。アメリカの国益は白人たちのものだから、自分たちが恩恵を得るべきだ。ということらしい。」
「それでテロですか。安易ですね。」
安易だ。でも多くのテロリストが作り出された工程から考えてみると普通だとも言える。
「まあ、彼らの自己顕示欲の高さは凄くて掴み易いから、殆どの場合事前察知できていたんだ。今回もなんらかのリアクションが事前にあると思ったんだが、彼らもバカではないらしい。地下にもぐりだしたんだろうな。」
「やっかいですね。」
「そうだな。やっかいだ。もっとやっかいなのは、その人数の多さだ。アメリカの有権者の約半分はなんらかの白人至上主義的考えを持っているんだ。これが爆発したらどうなると思うかね。」
「政権交代ですか?」
「だから、今回の件も彼らがそれに気付かないように闇から闇へと葬るつもりだ。悪く思わないでくれ。」
そうだろうな。彼は白人男性だから、白人有権者の多くは考えてもいないだろうが、有色人種の大統領や女性大統領が生まれたりしたら、その反動は凄まじいに違いない。
これは実は日本でも言えることだったりする。今、日本では若い男性が職にあぶれている。それなのに老人の優遇政策は止まらない。ここで日本の首相が老人や女性に代わったりしたら・・・その反動は凄まじいに違いない。
非正規労働者や失業中の若い男性が結束して、特定の党を応援するようなことになったら、どうなるだろう。
まあ余程の集団でも無いかぎり、政権に就いた党が社会構造を壊したりしないだろうから、数年で終わってしまうだろうが、アメリカは大統領制を取る国だ。
たった一人の考え方が違う人間を大統領に据えるだけで社会構造が激変してしまうことも可能に違いない。
多数主義が民主主義の恐い点です。
弱者でもその数が多くなればなるほど、簡単に卓袱台返しができます。
今まで誰も気付いていなかったんですがね。その手段が用意されていることに(笑)
日本でそこまで弱者が増えないことを祈るしかないですね。




