第3章-第25話 せいめいいんとえむぴー
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「スーパーヤオヘー管理部ですか?」
俺は日本に戻ると鈴江と渚佑子に対して告げる。
「そうだ。渚佑子にはその主任に任命する。一応、部長兼課長を幸子にやらせるが形だけの報告だけでかまわない。実質、部のトップとして腕を振るってもらいたい。」
「鈴江はスーパーヤオヘーのトップに据えるが実質、渚佑子の部下だ。お前も知っていると思うが彼女は『知識』のスキル持ちだ。そして本来は関係無いと言いたいが中卒だ。この中卒の彼女とその『知識』を利用しろ。」
「それはどういう意味ですか?」
鈴江には意味がわからないらしい。
「俺が調べたかぎりではスーパーヤオヘーの上層部は高学歴が多くその分プライドが高い人間が多い。本当なら俺が全てを排除してから、君たちに引き渡したかったんだがそんな暇は無い。だから、中卒の彼女を侮らせ、その『知識』で徹底的にプライドを叩き潰せ、それで更正するようなら必要な人材だ。」
「あなた・・・。」
「あなたと呼ぶな。社長と呼べ。ここではな。アキエの前では好きに呼んでかまわない。それが今俺にできる精一杯の譲歩だ。」
「あ、はい。すみません。社長って従業員に優しいと思っていたけどそこまで冷酷になれる人だったんですね。」
「それは鈴江に礼を言わなければならないな。俺に敵対するものに対しては徹底的に冷酷になれるようになったからな。」
「そんな・・・。」
「ああ、すまん違った。鈴江の周囲に居た男たちの間違いだ。鈴江、本当に大丈夫か? 俺の周囲に居れば、今のようにキズつける発言が思わず出てしまう。今ならまだ引き返せる。俺は離れたほうがいいと思うんだが・・・。」
頭が理解していても心が付いていかない。困ったものだ。
俺の心の安定のためにも離れてくれたほうがいいだけど、無理だろな。アキエとも約束してしまったし。
「私にとってはあなた・・・社長のほうが心配です。極力、視界に入らないようにしますので遠ざけないでください。」
まあしかたないか。
「まあいいんなら。いいんだ。今、高層マンションを建設中なんだが、その1・2階にスーパーヤオヘーが経営する『ハロウヅ』を入れてテコ入れを図る。それで黒字化できるようなら既存店の赤字を減らしていく方向で進めればいい。5年後、どうなっているかで判断するつもりだ。」
ダメなら。ヤオヘーの名前を完全に消滅させるしかない。『ハロウヅ』ブランドでやれる店舗だけを残して、全て売り払うことになるだろう。
「わかりました。」
「渚佑子にはスーパーヤオヘーの管理と共に、高層マンションの管理全般をお願いしたい。これまで培ってきた異世界の技術を全て投入しようと思っている。これがマンションの設計図だ。」
俺は高層マンション建設予定地に設計図を机に広げる。
「5角形なんですか? なんか、アメリカ国防省の建物みたいですね。」
「そうだ。この形が一番魔法陣を複数組み込みやすいみたいだ。明字家の敷地に行ったときのことを覚えているか?」
「ええ。あの一区画だけ異様にMPの増え方が早いのには驚かされました。通常、こちらの世界では1ヶ月掛かるMPの補充があの区画では20日で済むようです。それでも異世界の60倍遅いんですけどね。」
「そうだ。あの敷地には密かに晴明印が組み込まれているらしい。さらに調査を進めたところ、京都自体に晴明印が組み込まれ、さらに安倍晴明が居たと思われる晴明神社ではもっとMPの増え方が早いようだ。」
「凄いですね。」
「買収した土地は正方形だったんだが、道路で晴明印を再現してさらにこの5角形の建物内部に晴明印を組み込み、高層マンション自体も5角形にして各階に晴明印を組み込むつもりだ。モデルハウスに設置した魔法陣だけは渚佑子に維持してもらわなければならないが、高層マンションに組み込む魔法陣はこれで自動的に維持できるはずだ。」
「高層マンションの天辺に建てば、異世界並みに魔法が使えそうですね。」
「おいおい。誰に対して使うというんだ?」
「えっと、それは宇宙人とか?」
「ははは。それは驚くだろうな。そのときはよろしく頼むよ。」
ようやく高層マンションの全貌が見えてきました。




