第3章-第23話 旅立ち
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日本三名泉のうち有馬温泉・下呂温泉はなかなか好感触な物件で前の従業員も大部分が戻ってきてくれることになった。
草津温泉だけは後日再度、元従業員を集めて説明会を行なうことになった。
どうも置屋組合と旅館組合から元従業員に対しての圧力があったらしい。旅館組合の組合長と女将さんが再度、元従業員の家を回ってくれることになっている。
あの日、集まったピンクコンパニオンも大部分が温泉芸者を目指すことになった。俺が買った旅館が営業開始するころには、基金から出たお金で芸者見習いとして活躍しているはずだ。
*
途中、松阪に立ち寄り、皆でチバラギ国に入る。
「アキエ。ただいま。」
後宮に立ち寄り、アキエを抱き締める。
「おかえり。パパ。」
「どうするか。決めたか? アキエ。」
鈴江にアキエを会わせてから、もうすぐ1ヶ月だ。
アキエは鈴江についていきたいと言うに違いない。
これ以上、引き離してはおけないだろう。
セイヤもエトランジュ様もアキエの意思を尊重してくれると言ってくれている。
「うんとね。うーんと、わたし。ここに居てもいい? できればパパもママも会いに来てきてくれると嬉しいな。」
アキエは意外な回答を導き出した。
いや、意外でも無いのかもしれない。それはつまり、頻繁に鈴江を連れてきて欲しいということと同義なのだろう。
俺がこの世から、アキエの傍から逃げ出そうとしたツケが回ってきたということだ。
「鈴江はそれでいいのか?」
「もちろんよ。記憶が無くても自分の子供には代わりはないもの。もちろん、連れて来てくれるでしょう?」
どうやっても鈴江とは縁が切れないらしい。
「分かった。但し、条件がある。お前がヤオヘーの代表取締役社長に就任すること。そして、親会社の社員である渚佑子に指揮命令権が与えられることを承諾すること。俺の指示は全て、渚佑子を通じて行なう。」
渚佑子の部下にしたい人間は鈴江のことだった。ビシバシと鍛えてくれるそうだ。
橋家の協力を取り付け、ヤオヘーは正式に山田ホールディングスの傘下に入ることが内定している。もちろん、『ハロウズ』の名前を借りることになっている。
落ちぶれたとはいえ、流通業界のトップ企業だったところだ。この先、難しい問題が山積していることだろうが、その大半が鈴江をトップにつけることで解消できるはずである。企業人として使わない手は無い。
「わかったわ。改めてよろしくね。渚佑子さん。」
「渚佑子もお守りを押し付けることになって、すまないがよろしく頼むぞ。」
「はい。わかりました。」
*
エトランジュ様のお腹も随分目立つようになってきた。
「そうか。そうなったか。」
アキエが残ることになったことをセイヤとエトランジュ様に伝えると嬉しそうだった。
「アキエちゃん。本当にいいの?」
「もちろんです。私はずっとエトランジュ様の子供です。それにこれから産まれる妹や弟たちを置いて帰れません。もうじき、お姉ちゃんになるんですから。」
投稿ペースが少し落ちて申し訳ありません。
連載は続けていきますのでよろしくお願いします。