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第2章-第22話 ききん

お読み頂きましてありがとうございます。

「それでですね。置屋組合を存続するために旅館組合にも協力して頂いてですね。」


「ピンクコンパニオンはダメだぞ。」


 ダメ出しをするように組合長が口を出してくる。


「分かっています。私もここで旅館を経営していくならば、草津温泉のイメージダウンは避けたい。ですから、温泉芸者を育てましょう。」


「今どき芸者かね。」


「そうです。日本の文化として温泉芸者を売り込むのです。」


「芸者を育てあげるには多大なお金が掛かるぞ。」


「基金を作りましょう。そうですね、まず初めの10年を目処に1億円提供しましょう。上手くいくようならもう少し出資しても構いません。できれば旅館組合全体で同額くらいの提供をお願いしたいところです。」


「そんなに上手くいくかね。」


「ええ上手くいかせます。我が社ではバーチャルリアリティー装置を販売しているのですが、これのソフトに芸者遊びを提供しようと思っています。まあ1億円を提供する見返りと思ってもらえば構いません。」


「ほうそれで?」


「現在、バーチャルリアリティー装置が日本国内で10万個、富裕層を中心に月産1万個のペースで増えており、海外ではまだ3万個程度ですがこちらも月産2万個のペースで増えています。おそらく、芸者遊びというものに興味を持つ人間は多いと思いますのである程度のヒットは見込めます。その中の1%でも草津温泉に来てもらえれば成功です。」


 特に海外の富裕層は興味を持つはずだ。そして、本物の芸者に会いたいと思うはずである。彼らにとって日本に来る旅費などたかがしれている。


「だが、そんなに簡単に芸者は育てられないぞ。」


 そこで水を差す人間が現われた唄丸さんである。今まで散々苦労して育てようと頑張ってきて簡単に育たないことは身に染みているのだろうことは想像できる。


「やり方を変えるのです。おそらく初めの数ヶ月で一人前に育てようとしているのでしょう?」


 聞いた話では、お仕込みさんと呼ばれる女性が月に何十万円も掛けて詰め込み式で三味線、踊り、唄、行儀作法といった勉強をしなくてはいけないらしい。そして座敷に上がったらこれらのお金を返していかなくてはいけないのだ。だから借金の額の大きさに初めの1ヶ月で逃げ出す女性が多いそうだ。


「まあ、そうだな。」


「そうでは無くて、基金でお金を出す初めの1ヶ月で見極めるのです。この女性は何が得意かを。」


「どういうことだ?」


「京都の芸妓さんに聞いたことがあるのですが、ひと通り習い事はするものの結局は得意不得意があって、三味線が得意の女性、唄が得意な女性、踊りが得意な女性、お喋りが得意な女性、酒を飲まされても平気な女性と分かれるそうです。」


「そうだな。」


「初めから得意分野だけの習い事をさせれば費用も少なくて済むし、早くお座敷に出せます。特に芸者さんになりたいと思う女性は初めから得意なものがあったりしますので、芸者見習いとしてお座敷に出すこともできるでしょう。」


 そうすればお金が必要な女性にとって魅力的な選択肢のひとつとなりえるはずだ。ある程度は置屋や旅館から基金に補填していってもらわなくてはいけないかもしれないが、軌道に乗れば芸者たちから会費を徴収して独自に基金を存続していくことも可能だ。


「質を落せというのか?」


「ここに来る芸者を呼びたいという大半の人間は、芸者遊びがしたいと思ってくるのです。1人で三味線を弾けて唄もできて踊りもできる女性を求めていませんし、実際にそこまでできる人間は京都中さがしても1人か2人が現状なんです。どうしても三味線の演奏で踊りを見たければ2人呼ぶ必要がありますし、唄も必要なら3人呼ぶ必要があるんです。」


 彼女たちも収入があれば、もっとイロイロできるようになりたいという女性も出てくるだろうし、自分の得意とする芸を磨きたいという女性もでてくるに違いない。その辺りは自費で出せばいいだけの話だ。


「確かに。」


「ですから、初めからお客さんに聞けばいいじゃないですか? 踊りが見たければ踊りが得意な女性。三味線が聞きたければ三味線が得意な女性。唄が聞きたければ唄が得意な女性を派遣すればいいんです。」


「なるほど、お喋りがしたければお喋りが得意な女性。お酒が飲みたければお酒が得意な女性ですな。それなら芸者見習いでもできそうだ。」


「もちろん、お座敷遊びは教え込む必要がありますが、あらかじめルールを表記した紙を配ってしまってもいいと思います。芸者遊びをした記念になりますしね。」


「それはいい案だ。」


「男衆さんにもお唄の名取とか踊りの師匠とかいらっしゃるのではないしょうか?」


「ああ、素人に一通り教えれる程度ならできないことは無いな。費用を低く抑えようと頑張ったからな。温泉街の唄・踊り・三味線の習いどころには嫌がられたが・・・。」


「まあ、見極める期間だけでもプロに任せたほうがいいと思いますが、得意分野以外の習い事は男衆さんたちが教えても構わないと思います。客のほうも無理言っているのは分かっているわけですから多少下手でも我慢してもらえると思います。」

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