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第2章-第21話 めにはめを

お読み頂きましてありがとうございます。

「それはできねえ相談だ。」


「なんだ。義理と人情か?」


「まあ直接は関係無いし、組織を離れた人間なんだがな。実は例の隕石で親組織が潰れたときに草津の纏め役もあの場所に居たんだ。その時に渡りをつけたのがうちの親分だったんだ。だから、敵対するのは勘弁してくれ。」


 考えないようにしていたんだが、あの場所にそんな人間も居たんだな。じゃあ叩き潰すというわけにはいかないか。


「そうか、わかった。じゃあ、落としどころを見つけるために協力してくれないか。まず、その番頭だった男がこちらの男性に詐欺を働いたらしいんだが、置屋組合は関与しているのか?」


「俺が言えた義理じゃないが、それは拙いな。おう、草津の。そこのところどうなんだ?」


 男衆の中から1人の男性が前に出てくる。


「知らん。この男には芸者見習いの娘を斡旋してもらったり、温泉饅頭の仕入先を紹介してもらったが、犯罪に関わるようなことは知らないんだ。本当なのか?」


 ああなるほど、そういうことか。


「本当だとも、まさかこの男性が嘘を吐くような人間に見えるか?」


「幾ら俺らと仲が悪いからと言って旅館組合の組合長が嘘を吐くとは思えないな。」


 彼らは長年の付き合いで組合長がどんな人間かは分かっているらしい。


「唄丸さん・・・。」


 組合長は意外だったのか彼の顔を見つめている。


「なあ。若頭、この草津の男衆と△△組との因縁を聞かせてくれないか?」


「なんでそのことを・・・。」


 やはり、何かあるらしい。


「ああ、この番頭のことを調べていたら、△△組と繋がっていることが分かったんだ。」


「なんだと! お前。△△組のもんだったのか!!」


 唄丸さんが番頭だった男の胸倉を掴み挙げている。


「△△組は昔何度か草津を縄張りにしようと殴り込みを掛けたことがあるんだが、悉く男衆たちの手で叩き出しているんだよ。それに今△△組は朝鮮マフィアと協力関係にあるんだ。俺たちを襲ったのも同じだ。」


 △△組が朝鮮マフィアと繋がっているというのは良くテレビニュースでも言われている。暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律、いわゆる暴対法を逃れるために少しでも犯罪に関わりそうなところは朝鮮マフィアにやらせて、勢力を伸ばしていると言われているのだ。


 俺が事前調査をした際に1軒の不審な温泉饅頭屋があった。従業員に外国人を雇い、客に強引に試食させ無理矢理、店舗に連れて行き温泉饅頭を買わせているらしい。


「し、しらない。俺は暴力団員じゃない。」


「副原登美雄。昭和44年3月12日生まれ。前科3犯、いずれも売春防止法違反。△△組準構成員。」


 そこの淡々と現われたのは、うちの奥さんだ。


「さつき。調べられたのか。良くやった。」


「すみません遅くなりました。どうもこの男、最近準構成員に昇格したようで古い情報には載ってなかったのです。これが警察に照会した結果です。」


 近くのコンビニでFAXを受信したのだろう。やや不鮮明だが、なんとか顔が分かる状態だ。犯歴も詳細に渡って記載されている。


「タイミングはピッタリだ。」


 俺は唄丸さんに手渡す。


「なんてことだ。俺たちはもう少しで△△組の傘下に入るところだったのか。」


     *


 その場に唄丸さんだけを残し後の男衆たちが副原を連れて出て行く。


「というわけです組合長。どうします。このままじゃあ、数年もすれば置屋組合が消滅しますよね。すると△△組から草津を守れなくなってしまいますよ。」


「どうすればいいんだ。」


 組合長は頭を抱え込んだ。どうすればいいか分からないらしい。


 こういうときには目には目を。ヤクザにはヤクザに詳しい人間を。で行くしかない。


「若頭のところのメンバーで草津の纏め役をやれるような人間はいないか?」


「置屋組合にヤクザを入れるつもりか?」


 組合長は信じられないという顔を俺に向ける。まあそうだろうな。だが警察を介入させて綺麗にしてしまうと朝鮮マフィアやチャイニーズマフィア、それに地元のチンピラと、多種多様な人間を相手に戦わなくてはならなくなってしまう。それは避けたい。


「違う違う。便宜上、若頭と呼んでいるが、堅気に戻っていることは確かめてある。それに刺青も無くなっただろう。誰が見てもヤクザに見えないですよね。」


 ここに居るメンバーはインテリヤクザなのだろう。よっぽど、男衆のほうがヤクザっぽい。


「それなら・・・なんとか。」


「そうだな。・・・隆。お前、ここ草津の人間だったよな。地元を守るためにひと働きしてみないか。」


「はい。まさか本当に△△組の奴らがここを狙ってくるなんて思わなかったっす。俺ができることがあればなんなりと申しつけください。」


「まずは、防犯カメラを設置しましょう。隆さんなら堅気じゃない人間は大体分かりますよね。普通に温泉に入りたいヤクザなら、置屋組合に挨拶にくるでしょう。それ以外の人間を照会を掛けるんです。△△組に繋がるような人間が出入りしているようなら、何か企んでいる可能性が高い。そのときに警戒水準を上げればいいんです。」


「そんな照会システムがあるのか?」


 警察庁では既に導入済みのシステムらしいのだが、自治体が防犯カメラの映像の提供を嫌がり実用化はされていないらしい。だがそのノウハウは民間セキュリティ会社のシステムで活かされているのだ。


 年間の照会回数で料金が変わってくるので、隆さんの鼻の効き次第では大した費用負担にはならないに違いない。


「ええ。彼女が経営するセキュリティ会社のデータベースにやや古い情報ですが載っています。防犯カメラの映像から検索することもできますし、緊急で必要なら別料金ですが、今回のように直接警察に照会することもできます。詳しい話は彼女から聞いて頂けますか?」


 そう言って、さつきを紹介した。思わぬところに商談が転がっていたものだ。

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