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第2章-第17話 おとこし

お読み頂きましてありがとうございます。

「さて、話を聞かせて頂けますかな。」


 俺たち以外誰もいなくなった宴会場で女将さんに話を伺う。


 その話によると随分昔から草津温泉では、温泉芸者を束ねる置屋組合と外部から派遣されてくるコンパニオンにより客の取り合いをしていたそうだ。


 しかし、新たな芸者の成り手も無く、余所から流れてくる芸者も少なくなり、今では還暦を過ぎた芸者と僅かに残った現役の芸者が数名居るばかりで、10軒以上あった置屋も今では2軒を残すばかりになったそうだ。


 起死回生策として置屋組合では芸者見習い兼ピンクコンパニオンを育て上げようということになったらしい。だが、今の旅館組合に参加する経営者は草津温泉のイメージダウンになるピンクコンパニオンを受け入れてくれ無かったそうだ。


 そこでこの休業した旅館に目をつけたらしい。新しい経営者に取り入り、ピンクコンパニオンを扱わせることで草津温泉にピンクコンパニオンが居るという既成事実を作り、規模拡大を狙っていこうということだった。


「何故、女将さんまでそんな格好を?」


「なんとか銀行の協力を取り付けまして、母から相続した資産を売却して大部分の借金は無くなったものの1千万円ほど借金が残りました。置屋組合さんから今回の件で協力してくれたら、その借金を引き受けようということだったんです。」


「ここの置屋組合は何処かの暴力団組織に属しているんですか?」


 きっと、あの番頭のように△△組に繋がっているのだろう。やっかいだな。


「いえ違うんです。お二方とも代々受け継いでこられただけなんです。ですが、もうお年寄りで実権を男衆さんたちが握っているんです。」


「その男衆たちが暴力団と繋がっているんですか?」


「確かに厳つい方ばかりなんですが、外の暴力団とは繋がってないと聞いてます。母から聞いた話ではどちらかというと男衆さんたちが外の暴力団が温泉街に入り込むのを阻止していたと聞いていたんですが、みかじめ料代わりに各旅館に置屋組合が経営する温泉饅頭屋の販売ノルマが課せられるようになってしまって。」


「それで旅館組合と仲が悪くなったんですね。」


「そうなんです。男衆の纏め役が居たころは、そんなことは無かったんですが・・・。」


 外部の暴力団と繋がっていないのは朗報だ。有名な温泉街に入り込むのだ多少の馴れ合いは仕方がないと思っていたのだ。


「ねえ。女将さんにいつまであんな格好をさせておく気?」


 余程、気になったのだろう幸子が指摘してくる。女将さんだけは話を伺うためにその場で待って貰ったのだ。もちろん、透けた布に下着姿という格好のままだ。


 俺はもちろん理性を総動員して彼女の顔ばかりを見つめていたのだが、俺がスケベ心でそんな姿のまま話をさせていたと思われたのだったら堪らない。


 渚佑子は既に軽蔑した視線を送ってきている。手遅れらしい。


「ああすまない。元の姿に戻ってくれるか。」


「は、はい。失礼します。」


 女将さんは恥ずかしそうに立ち上がり宴会場を出て行く。間近でみると後ろ姿も凄いな。垂れた幸子のお尻とは大違いだ。


     *


 ケント王子と賢治さんは剛胆にもあの騒ぎの間も食事を進めていたらしく部屋に戻っていった。まあ、あの程度の格好ならイギリスのアパートで行われているであろうパーティーで見慣れているのだろう。


 食事をしていると女将さんが戻ってくる。着物姿は完璧だったが急いで着替えたらしく上気した顔が艶めかしい。先程の姿よりもよっぽど色っぽいと思うんだがなぁ。


「お酌は結構です。」


 俺は、お酌をしようとする女将さんに断りを入れる。置屋組合があれで引くとは思えない。もうひと悶着ありそうだったからだ。


 それにあの番頭の男も気になる。あの男が居る限り、この旅館にするかどうかに関わらず草津温泉で旅館を営む気になれないのだ。


 女将さんがしょんぼりと下を向いてしまう。ここもイマイチわからない。彼女の旅館の所有権は銀行に移っており、私が買っても買わなくても変わらないはずだ。


 それに銀行を経由しての依頼だったが、今日の営業も彼女の取り分は既に前金で払ってある。後の従業員たちには日給として1万円ずつ手渡す予定だった。


 置屋組合の企みが失敗した今、彼女と俺に利害は発生しないはずなんだが、まだ何か隠していることがあるのだろうか。


 そのときだった。玄関先で誰かが怒鳴っているような声が聞こえる。


「あの声は・・・。すみません。失礼します。」


 女将さんが宴会場を出て行く。置屋組合の男衆が怒鳴り込んできたのだろうか。それにしては、人数が少ない。


「渚佑子。ついてきてくれ。アヤはここで妊婦たちを守っていてくれないか。」


 殴り込みだったとしても俺ひとりで解決できそうだが、背後に渚佑子が居るのと居ないのでは大きく違う。妊婦を連れていきたくないというのもあるがそれよりもマイヤーの暴走が怖いのだ。


 俺の意図を汲み取ってくれたのだろうアヤは頷いてくれる。


「私も行くわ。」


 俺の意図を汲み取れない幸子がついてくるという。まあ幸子くらいならば何とかなるか。


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