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第1章-第10話 さかいのさき

お読み頂きましてありがとうございます。

 本当は主賓の挨拶を俺の上司である賢次さんにして頂くつもりだったので代わりに乾杯の音頭を取ってもらった。お義父さんとどちらがするかで喧嘩になっていたようだが・・・。


「続きまして、余興のトップバッターとしまして、僭越ながら僕たち『佐藤ひかる』with Motyで皆様に歌のプレゼントを致します。」


 壇上の中央で司会役の中田が告げた。いよいよ始まりだ。公式には再結成は未発表なのでグループ名は『佐藤ひかる』with Motyとなっているが、公式発表されれば、彼女もMotyのメンバーだ。


「なるほど。だから、このメンバーにお嬢さんが含まれておったのじゃな。豪華な組み合わせじゃ。」


 お義父さんも『佐藤ひかる』さんとMotyの確執の噂は知っているだろうに一切顔に出ていない。


「それで何の曲を歌ってくれるの?」


「『境の渡った先』と言う曲です。この曲は解散後も半年以上ランキングに入り続けた思い出深い曲なんです。」


 きっとMotyの解散を惜しんでくれたファンだけでなく、キタ・シャニーズ事務所の他のグループやメンバーがドラマとかで共演した俳優や歌手たちが復活への願いを込めて呼びかけたことで多くに人々に支持された結果なのだろう。


「キタ・シャニーズ事務所に多くの楽曲を提供頂いていた『オーケー』という有名な作曲家さんが引退する直前に作ってくれた曲に、Motyのメンバーが合同で作詞したことになっているのですが、実は本当のリーダーに作詞をお願いした曲なんですよ。」


 あのときは本当に困った。鈴江と別れ、異世界に渡った後くらいに書いた歌詞で、未来に向かっていくというテーマが必要だったから、かなり無理に心を奮い立たせて書いたんだよな。


「本当のリーダーって。中田くんがMotyのリーダーじゃないの?」


 幸子は知っているはずだが、演技とは思えないほど驚いてみせる。やっぱり、MC向きだよなコイツはアメリカに行っても公式の場で大統領と対等にやりあっている未来が見えるようだ。


「違いますよ。お姉さまも知っている人物です。では、お呼びしましょう。せーの「「「「リーダー!」」」」」


 壇上の中央で、司会役の6人が左右に別れるとスポットライトが後方に走ってきて俺のところで止まる。


「うーん。わしの娘がMotyのリーダーだったとは。」


 始まったよ。お義父さんのボケが・・・。


「そんな訳ないでしょ。ということは、うちの社長がリーダーなの?」


 すかさず幸子のツッコミが入る。


「そうなんですよ。Motyを逆からならべると?」


「Y・T・O・M。山田トムの略なのね。単純ね。・・・何してるのよ。社長! ご指名よ!!」


 『えー』という悲鳴にも似た響きが会場から沸き起こった。何故か右側からも聞こえたので視線を移すと賢次さんが驚いた顔をしていた。


 ようやく幸子からお呼びが掛かった。前振りが長いんだよ。前振りが。


 俺はテーブルの上に手を突くと『フライ』を唱えて、前方一回転で彼らのところへ向かう。リハーサルは会場を借りれなかったので外でやったのだが、上手く円を描いて前方3メートルのところに着地できたのだが、本番はどうなるか?


 天井スレスレは危ないので6メートルほどの高さを目安に飛んだ。


 うっ。やばい。着地する前に彼らの横を素通りしてしまう。一瞬、壇上からはみ出したが『移動』で彼らの横に戻った。誰も気付かなかったよな。


「呼んだか? 幸子オジョウサマ。」


 幸子だけは気付いたみたいで顔が引き攣っていたので誤魔化すことにする。


「・・・・・・ナンデ、この場でオジョウサマなのよ。」


 ようやく復活した幸子が返してくれる。そうそう、お前が復活しなきゃ進行しないからね。


「いつもその呼び方がいい。って言ってなかったか?」


「ヨロシイ。そのまま、ずっとお願いね。」


 これだ。


「トムも歌うのよね。」


「ああ、『佐藤ひかる』with Motyと言っただろ中田が。それにここでは俺が主役だ。歌うに決まっているだろ。」


「では、お願い致しましょう。『佐藤ひかる』with Motyで『境の渡った先』です。」


 幸子とお義父さんが脇にある司会席に戻ると壇上の俺たちを除き、周囲が次第に暗くなっていき曲が始まった途端に壇上の真下で一斉にペンライトが点灯した。


 さつきが昨日の就業時間中に女子社員を集めてなにやら画策しているな。と思ったのはこれのことだったらしい。


 壇上の真下の中央ではウエディングドレス姿の彼女がペンライトを握りしめており、ドレスの裾を踏まないように集まった女子社員たちの姿も見えた。全く、こっちは緊張しているってのに気楽なことだ。


 まずはサビから始まる。歌うのは俺と中田だ。


『これから俺を 好きになってくれるの?』

『境の渡った先には 彼らがただ待っている』


 そして、俺のソロパート。


『娘の悲しみに気づき 俺は身を隠した』

『裏口の扉越しに 異界の口が開いた』


 さらに1フレーズごとに千吾、佐藤さん、板垣、中田の順で加わってくる。


『君が何を言っても 思い出すその姿は』

『俺の心の傷付いたところを 引っかき続ける』


 2回続くサビは皆で歌いあげる。


『これから俺を 好きになってくれるの?』

『そっとふれてみる 優しさのカオリがした』


 少し余裕が出てきた俺がさつきのほうを向くとペンライトを振っていた彼女が優しく笑いかけてくれた。


『憎しみっていつの日か 笑って言えるもの?』

『そのコトバは少しだけ 軽く感じさせてくれた』


 また、俺のソロパートだ。感情を込めつつも視線をさつきに合わせたまま歌いあげる。


『どんなところでも やさしく教えるくせに』

『こころない悪口など 聞かないと思っていた』


 また1フレーズごとに板垣、佐藤さん、千吾、中田の順で加わってくる。


『君が想うほど心は 遠のいていってしまうの』

『俺の心の見えないところで から振りしている』


 そしてサビはまた皆で歌いあげる。


『このときの異界に 俺は助かっているの?』

『全てが商売ほど すべらないみたいだ』


 ここで曲がスローテンポになる。さつきたちも一緒に歌ってくれているようで大合唱になっている。


『このままいつまでも 笑っているものなの』

『雲のない青空が 境の渡った先に見えている』


 ラストのサビは俺ひとりで歌い上げて終わりだ。


『これから俺を 好きになってくれるの?』

『境の渡った先には ただ彼らが待っている』

作詞部分は物凄く時間が掛かりました。


【サビ・Aパート・Bパート・サビ・サビ】

【Aパート・Bパート・サビ】

【サビ・サビ】 というよくあるパターンの曲にしてあります。

メロディは作らず、音の数を合わせて言葉を当てはめて曲にしているつもりです。

如何でしょうか?

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