第12章-第167話 だんす
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それでも、皆楽しそうに呼んでもらったタクシーに乗る。
俺の『移動』魔法や渚佑子の『転移』魔法で移動してもよかったのだが、周囲の風景や高層ビルにおっかなびっくりのクリスとアポロディーナだったので日本の生活に慣れてもらおうとタクシーに来てもらった。
というのは、建前で。いきなり、アポロディーナを連れて奥さんたちの前に顔を出しにくかったというのが本音だ。
俺は前の席に乗り、後ろの窓側にアポロディーナとクリス、真ん中が渚佑子だ。決して渚佑子が小さいから真ん中にしたのでは無い。周囲の風景にいちいち質問する相手が必要だったからなのだが、渚佑子は不満げだった。
ただ向こうの世界の言葉なのでタクシーの運転手はちんぷんかんぷんの様子で、俺にイスラム系の国の方ですかと質問してきて笑ってしまった。そんなふうに聞こえるらしい。
とにかく、1度セイヤに『召喚』して貰って言葉の壁を越える必要があるだろう。結婚式には来るはずだから、頼んでみよう。彼の『召喚』魔法には母国語を話す場合に限り理解できる魔法が重ね掛けしてあり便利なのだ。
本当は俺が覚えるべきなのだが、なぜか、教えられない!の1点張りだ。
実はアポロディーナたちが使った『召喚』魔法には含まれていない。あくまで日本の神がチートスキルを与えるのが前提となっている。酷い話だ。
さらにアメリカ大統領か、イギリスの首相にお願いして国籍を取得してもらう必要があるだろう。
*
自宅マンションのエレベーターに乗り最上階に上がる。これを使ったのは何年ぶりだろう。
そして、恐る恐る自宅の部屋に入る。
「あっ。トム・・・北村という男性と中田という男性から電話があってね。」
俺が玄関口に入るなり、幸子が話し掛けてくる。その奥にはさつきも静香も興奮した様子だ。いったい何を興奮しているんだ。もう嫁を連れてきたのがバレている?
「ただいま。」
「だから、これって解散したMotyのメンバーだよね。」
「た・だ・い・ま!! これが息子のクリスで新しい奥さんのアポロディーナだ。」
流石にこの対応は無いだろうと思ったが早口で捲くし立てる。
「おかえりなさい。息子さんとお嬢さん?」
何を聞いていたんだ?
俺が今紹介したよな。
「新しい嫁だ。」
「えっ・・・ええええ。お嫁さんって・・・幾つよこの子。向こうの世界で30年近く経っていたんじゃなかったの?」
「まああれだ。マイヤーみたいに長寿な種族なんだ。これでも50歳を越えているんだよ。」
「ということは、こっちの坊やは26歳?」
「そうだ。それで、北村と中田がどうしたって?」
北村と中田は結婚式の招待客だ。俺の高校時代の後輩なのだ。
「半年くらい前に解散したアイドルグループMotyのメンバーだよね。なんで、トムに電話が掛かってくるの? Ziphoneがらみじゃないでしょ。さつきさんも知らないって言うし・・・。」
「う・・・ん・・・。何を言っているんだ幸子。前回の結婚式にも参列してくれただろうが、4人揃って・・・今回も来てくれるということだと思うぞ。」
「えっ・・・だって、Motyのメンバーだよ。そんな有名人が前回の結婚式に来ていたの?」
「あのな・・・前回さ。舞台の上でバク転をして備品を壊したからって、その後正座させた4人組が居ただろ。あの後、あのオバサン恐いとか言っていたぞ。奴ら。」
あの当時はまだ売れていなかったからな。それに舞台化粧をしていないから、分からなかったのかな。
「だれがオバサンよ。えっ・・だって・・・えええええっ。あの4人組がそうなの? サインを貰おうと思っていたのに・・・。」
やっと、思い出したらしい。
「そうだ。お前が命令すれば、サインくらいしてくれると思うぞ。恐がられているからな。」
「命令する・・・・。」
幸子はボソっと呟いてニタニタ笑っている。恐ええ、恐ええよ。こいつ。
「そうだ・・・って、お前、何をさせようと考えているんだ。恐いヤツだな。」
「何をって抱・・きしめてもらおうかなって。てへ。」
今、『抱いてもらおう』と言い掛けなかったか?
しかも『てへ』だと・・・。俺は二重の意味で睨みつけてやった。もう別れたほうがいいかな。
「ダメよ。捨てないで、お願い。」
俺の気分を察したらしい。
「サインを貰うまではってか?」
「そう・・そんな訳ないじゃない・・・は・は・は・はー。」
「からかうのはその辺でヤメテおいてやろう。北村たちは何を言ってきたんだ?」
「うん。それぞれが舞台で一緒に歌いたいって。」
「また備品を壊されるから、ヤメテくれってか? 別にいいじゃないか。」
「そんなことを言ってないわよ。勝手に作らないで。トムって彼らの曲歌えるの? それに彼らのダンスも激しいよね。」
「失礼だな、お前。彼らの曲なら、全部歌えるし全部踊れるぞ。偶に練習に付き合っていたからな。」
「トムって何者?」
「お前。今更何を・・・。まあいいか。奴らのデビューの切っ掛けは知ってるか?」
「ええと。キタ・シャニーズスカウトキャラバンだっけ?」
「よく知ってるな。それに俺を含めて5人で出場したんだ。」
「え・・・ええええ。な・・なんで・・・。」
「俺がデビューしてないかって?」
「そうそう。」
「あのときな。彼女が居たんだ。でもデビューの条件で別れなくてはならなくてな。あのキタ・シャニーズ芸能事務所って、異性問題には厳しくてな。彼らの解散の原因にもなっているんだ。」
「由吏さんだよね。そうか・・・でも勿体無い!」
と、いうわけで。次章は芸能界に進出する予定です。
だからってわけでもないのですが、蜘條ユリイ名義の恋愛物も芸能界がらみが多くなる予定です。
どしょっぱながドロドロイヤーンな・・・スカっと爽やか『ざまぁ』小説になってしまいましたが(笑)
それから、「私の彼氏は超肉食系」へのご支援ありがとうございます。とっても嬉しいです。




