第12章-第165話 からだ
お読み頂きましてありがとうございます。
各国首脳が協議した結果、一族の一員でもあり、アルテミス国前宰相の孫娘でもあり、攻略部隊の中心人物でもあったアポロディーナが魔獣の暴走に関わっていることを暴いてしまうと余りにも影響が大きすぎることから、この件は俺に一任されることになった。
各国首脳の心配はアポロが復活し、アポロディーナに取り憑き今回のような魔獣の暴走が繰り返されることである。俺を含めクリスティー、渚佑子が完全に消滅したと証言しても、表面上は信じてくれているようだったが、その心配そうな様子で気持ちが分かる。
そこで俺は、アポロディーナを日本に帰るときに連れて行き監視下に置くことで、その心配を無くすこととした。
クリスティーは、苦い顔をしたがそのことを受け入れる。最愛の人間と生涯、会えなくなってしまうのだ割り切れないのだろうが、一族のトップとして了承するしかないのだろう。
反対したのは、真実を知らない人間たちだった。
「ずるい。私も連れていってくださいよ。」
今度はこちらが苦い顔をする番だった。攻略部隊の女性たちが口々に言ってくる。特にティナとミネルヴァの攻勢はすざまじかった。
「あと1人や2人なら大丈夫だ。1年ほど待ってもらえるなら、さらに数人も可能だろう。但し、向こうの奥さんたちを説得するには、子供と一緒に日本に来てもらう必要がある。」
アポロディーナを連れて帰った場合でも説得に苦労することは目に見えているというのに90人以上いる攻略部隊の女性たちを連れて帰った場合、今後どんな要求をされるか・・・想像したくもない。
少なくともここに来た名目である子供を連れて帰ることは絶対条件だ。
「奥さんたち・・・そんなに沢山いらっしゃるのですね。いや人数はいいです。若い方々ばかりなのでしょうね・・・。」
「そうだな。俺よりも若いな。」
実年齢は年寄りが数人混じっているがおそらく見た目のことを聞きたいのだろう。
「子供を盾にできるとはいえ、その中で戦っていかなくてはならないなんて・・・。」
どんどんとトーンダウンしていくティナ。同じようなため息がそこかしこから聞こえる。
「綺麗な方々ばかりなんでしょうね。」
「そうだな。俺には勿体無いくらいだな。」
1人だけ化粧で衰えを誤魔化している人間がいるが、それは言わないほうがいいだろう。
「私なんてこんな身体だし、これからどれだけ磨いても・・・勝てない・・・。」
ミネルヴァが自分の身体を見下ろし、ため息をつく。同じように自分の身体を見下ろしている女性たちが数人。
慰めてあげたいが、流石に許容範囲を超える。俺には潰されて喜ぶ趣味は無い。
「ディーナを連れていくなんて許さない!」
ここにいきり立っている男がひとり・・・クリスだ。
「許さないのなら、どうするんだ?」
「俺も付いていく!」
「お前がか? クリスティーは来ないんだぞ。大丈夫なのか?」
クリスティーは一族の長を放棄できず、例の迷宮のダンジョンマスターであるため、誰かにダンジョンマスターを交代しないかぎり離れられないため、付いてこないそうだ。
ローズ婆さんなら、迷宮の秘密をバラせば嬉々として交代してくれそうだが、今は言うタイミングじゃない。
「大丈夫に決まっているだろ! もう子供じゃないんだから!!」
「クリスティーはいいのか? クリスを連れて帰っても・・・。」
「そうですね。この子が居たほうが伯爵の奥様たちのアポロディーナに対する印象が良さそうですよね。」
あくまでアポロディーナ主体なクリスティーだった。確かに説得するのは容易そうである。
実は、アポロディーナが住むところを渚佑子が住む高層マンションの建設予定地の地下にダンジョンを形成してもらおうと思っている。マンションには建設中は建設作業員の澱が、建設完了後は商業施設に来る人々の澱があるからだ。
その際に一族としてダンジョンの形成のやり方をアポロディーナからクリスに伝授してもらえば、一人当たりの力の使用量が半分になる。その意味でも、彼には居て貰ったほうがいいのだ。
結局、日本に連れて帰るのはアポロディーナとクリスの2人になった。
その代わり、日本に帰るまでの日々、攻略部隊の女性たちの相手をすることを約束させられた。ティナを抱いたことが既に知れ渡っているらしい。
ミネルヴァたちは順番を最後で節制した身体で挑んでくるらしいのだが・・・。
うーん。身体が持つだろうか・・・。




