第12章-第163話 とりつく
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「それで何故、若い姿のままなんだ?」
話を戻す。ここが重要だ。この一族にとって『若さ=力』なのだ。若干1名、使い方が変な婆さんに誤魔化されているが・・・。
『・・・誤魔化し切れなかったか。言いたく無いんだがな。』
誤魔化すつもりだったらしい。まあ、大体は想像がついているけどな。
「当ててみようか。そうだな・・・各都市で人が排出する澱がダンジョンマスターに集まるように各地の村々で排出される澱がココに集まるって言うのはどうだ?」
『何故、それを・・・。』
不思議だったのだ。ローズ婆さんなら、若さを保つために世界中の人々の輩出する澱を集めるに違いない。
各地の村々に人の澱が留まっているのなら、世界各地を転々とする生活を送っている。だが、そうではない。村々で排出された澱は何処かに流れ出してしまっているのだろう。
この地には地下水脈があることが分かっており、この場所に教育用ダンジョンを建てたときに下水代わりに利用している。
そして力を大量に消費しているにも関わらず、この若さを保っているアポロディーナだ。
これを合わせて考えれば、村々で排出された澱が地下水脈を辿ってこの地に流れついた。と、考えるのが妥当だろう。ローズ婆さんには聞かせられない話だが・・・。
「なるほど。この地の原理を知っていた貴方は力を蓄え、ゼススを倒せたというわけか・・・。」
潜在的に大きな力を持つタルタローネを脅威に思うゼススが、自分の息子とはいえ、自分を倒せる力を持つアポロを放置していたというのが謎だったのだ。
『ああ。僕はこの世界がどうなろうと構わなかったんだが、どう考えても親父のヤツ、僕よりも長生きするつもりみたいだったから、ポセイドロ・ハアデス連合との5度目の戦いで疲弊し切ったところを殺してやったよ。』
「それで世界各地を転々としながら、100年毎にこの地に戻っては若返っていたといわけか。」
100年毎にダンジョンが出来るのはこの地の力を解放していたからだろう。
『そんなところだ。100年前にここにアルテミス国の駐留部隊の基地ができるまではな。帰ってきてみて、唖然としたよ。もうそのころには俺の名声は各国で通用しなくなっているし、アルテミス国に入れば良くて幽閉だろ。最後の力を振り絞って、この地を魔獣で襲わせたが上手くいかなかったよ。』
それで綺麗に散ったのか。そして生まれ変わった・・・と。なんか違和感があるな。本当になのだろうか。彼の性格からすると意地汚く生き続けた・・・と、言われたほうがシックリくるんだが・・・。
まさか・・・。
「このあと、どうするつもりだ。」
『こうするんだよ!』
彼がそう言い放った途端。アポロディーナの身体が崩れ落ちる。俺は咄嗟に『移動』でアポロディーナが頭を打たないように支える。
「渚佑子! 『浄化』だ。頼む!」
渚佑子は、今さっきまで俺が居た位置へ魔法を解き放った。俺の指環の『鑑』では捉えられなかったが『勇者』の基本スキル『鑑定』では捉えていたらしい。
『ぎゃあぁぁぁぁ!!』
「消え去りました。伯爵・・・大丈夫ですか? すぐに治します。」
アポロはアポロディーナに取り憑いていたようだ。俺がアポロディーナを支えるために『移動』を使ったのが良かったらしい。俺に取り憑こうとした彼は目標を見失い、渚佑子の『浄化』魔法をモロ食らったようだ。
まあ、常に魔力を注いでいる例の紐パンのお陰で取り憑かれることは無いのだろうが・・・。あのまま、居たら俺ごと渚佑子に『浄化』されてしまっただろう。
なんせ、チバラギ国の王族には闇の生き物の血が流れているそうだからな・・・イテテテテテ・・・少し離れていたとはいえ、影響を受けたらしく背中から腕、顔に掛けて火傷を負ったようだ。
「待て! 待てっ!! この世界には光魔法じゃない『治癒』魔法は存在するのか?」
今は、俺の中に流れている闇の生き物の部分が反応しているのだ。それに光魔法を放たれたら・・・最悪、死ぬな。
「無い・・・無いです。そんな・・・私はなんてことを・・・。」
「大丈夫だ。指環がある。大丈夫だよ。」
俺は指環を『癒』に変える。しばらくすると痛みが引いていく。ふう・・・。全ての痛みが引いたところで指環を元に戻す。
「あっ。火傷痕が・・・。」
「大丈夫だよ。チバラギ国に帰ってから、エトランジュ様に治してもらうから・・・。」
火傷痕を引っぺ返えされるのは恐いけど・・・渚佑子にやってもらうよりは絶対そのほうがいい。
「日本に戻れば、私が・・・。」
嫌だ。それだけは、嫌だ。渚佑子のことだ、途中でドSな顔で嬉々とされたら、どれだけ痛い思いをするか・・・。想像するだけで、ゾッとする。
やっぱり、この章のオチ担当は彼女じゃなきゃね(笑)




