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第12章-第156話 あつかい

お読み頂きましてありがとうございます。

「そんなのわかるかよ! じゃあ、アポロディーナねえさんもかよ!」


 ああ。この子にとってはアポロディーナは従兄妹にあたるんだな。


「ああ、大切な家族だ。」


「なんでもっと早く帰ってきてくれなかったんだよ! ねえさんツラそうだった。俺には笑顔で接してくれたけど・・・ツラそうだったんだ。」


 そうだろうな。自分の子供が死んでしまっても、皆に優しくできるのがアポロディーナだった。でも、それが限界を超えてしまったんだろうな・・・。だから、居なくなった。


「そういう、お前はどうしたんだ!」


 つい。俺は目の前の自分の分身を怒鳴りつけてしまう。


「俺は・・・俺・・・見ているのがツラくて・・・でも、なにもして上げれなくて・・・。」


 彼はつい最近まで引き篭もり状況だったという・・・。


「逃げ出したのか! お前・・・そういうときこそ我慢して・・・話を聞いてやるんだ!! 何をやっているんだ!!!」


「分からないよ!! 傍に居なかったお前に分かるはずが無い!!!」


 クリスは頭がパニックになっているのだろう。俺の前ということも忘れて涙を見せている。


「そうだろうとも・・・。だから、クリス・・・。お前も分からないんだ。当事者じゃないんだから誰にも分からない。だが、父さんは君がアポロディーナの傍を離れずに優しくしてほしかったんだ。」


 俺はそう言って、彼を優しく抱き締める。


 彼はそのまま抱きついてきて号泣しだす。今の彼にはアポロディーナもクリスティーも傍に居ないのだ。


「大丈夫だ・・・。君は頑張れる・・・大丈夫だよ・・・決して遅くないさ・・・。」


 俺は呪文のように自分に言い聞かせるように彼に囁く。


     *


「あれっ。ミミックはどこだ?」


 彼が泣き止み気恥ずかしげに顔を背ける。俺は周囲を見回して言う。流石に周囲の女性たちが貰い泣きしている姿を指摘するわけにもいかない。


「なぜか消えてしまいました。ところで、私も奥さんですか? それとも家族?」


 渚佑子が報告ついでとばかりに聞いてくる。


 全く恥ずかしいことを聞いてくるな。攻略者たちとは年月を置いているので関係を持った持たないに関わらず家族で奥さんなのだが、彼女とはいつも一緒だったのだ。奥さん扱いだなんてとんでもない。現地妻扱いなんかしたら殺されるだろう。


「渚佑子は大切な従業員だ。」


 うん。やっぱり、これが一番しっくりくるな。


 おい。なんで、そこでむくれるんだ。


     *


 次の階もその次の階も俺がこれまでに攻略したことのあるダンジョンを模倣したものだった。超古代文明の文献にあった2~3種のモンスターという原則も当てはまらず、階ごとに別々の種族のモンスターが現れている。


 これまでに攻略したことのあるダンジョンの模倣だったから、なんとかこなせているが・・・知らない人間だったら、死んでいる可能性が高い。


 通常、1階で事前に調査した種族に対する準備を行ってから、本格的な攻略に携わるのだ。こんなふうに事前準備が全く無駄になってしまうのでは、堪ったものではない。


 しかし、似ているからと言って全てが同じとは限らない。たった一つのトラップが凶悪なものにすり替わっているだけで命に関わってくる。余計に慎重に行かざるを得ないのだ。


「一旦、撤退しよう。」


 ティナやクリスたちの構成で攻略するタイプのダンジョンじゃない。


「なんでだよう! もうすぐ母さんと会えるかもしれないのに・・・。」


「ダメだ。周囲の人間の疲労度を見ろ!」


 ティナを始め、攻略者の大半が50代、60代なのだ。あまりにも魔法陣の細かい文様を見すぎたのだろう。目の疲労度が酷い、きっと焦点があっていないに違いない。


 これまで通り、幾通りかの魔法陣で全体の文様で判断するタイプのダンジョンだったら良かったのだが、各階で使われている魔法陣が全く違うのだ。これならば、クリスに魔法陣を教え込みながら攻略したほうが早いくらいだ。


「俺は平気だぜ。」


「お前はクリスティーさえ助かればいいと思っているのかもしれんが・・・。俺は誰も失うわけにはいかんのだ。」


「そんなぁ。」


「次のアタックでもお前は連れて行く。それで納得しろ。分かったな。」


 クリスが不承不承頷くと、空間連結の扉を取り出し壁に貼り付ける。ものの1分ほとで空間連結が完了し扉を開けたときだった。突然、周囲の壁が動き出したのだ。空間連結の扉を塞ぐように・・・。


「皆! 早く入れ!!」


 クリスを含め17名が駆け足で扉に入っていく。もちろん、繋いだ先は攻略部隊の建物だ。


 バキッ


 目の前で空間連結の扉が破壊されていく。一瞬にして空間連結の術が解け、向こう側が見えなくなった。俺と渚佑子は取り残されたらしい。

【蜘條ユリイ名義・完結しました】「オタクの悪役令嬢は復讐を果たせる?」

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初めて挑戦した女性向け恋愛小説が完結しました。

一般的なオタクの延長線上の腐女子像に疑問を持ち描いた作品です。

やっぱり腐女子といえば、男同士の妄想ですよね。

BLを一切盛り込まなかったのでBL嫌いでも読めるかも(笑)


【蜘條ユリイ名義・新作公開しました】「善良令嬢王宮食堂物語 ~男爵令嬢なのに食堂でウエイトレスをしています~」

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善良令嬢という正反対の設定の悪役令嬢モノです。わけわかんないですね(笑)

そこは読んでのお楽しみということで・・・。

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【新作】「ガチャを途中で放棄したら異世界転生できませんでした」
https://ncode.syosetu.com/n4553hc/
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