第12章-第155話 みみっくふたたび
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「なんだろう。なにかが引っ掛かる。」
「伯爵もそう思いますか。私もそうなんです。喉に引っ掛かる魚の骨のように何かを思い出しそうなんですよね。」
渚佑子が同意してくれる。ダンジョンに入っていくと迷路は練習用ダンジョンのときのままのようだった。だが少しずつ仕掛けてあるトラップが違うのだが・・・レベルが初心者向けのせいか誰も引っ掛かることはなかった・・・はず・・・
「きゃっ。冷たい。」
おいおい、早速ティナが引っ掛かった。水が降ってきてずぶ濡れになる。
「何をやっているんだティナ。気合いが足らんぞ・・・全く。」
何を考えているんだ。こんな簡単なトラップに引っ掛かるなんて!
「だってこの魔法陣は踏んでも大丈夫なタイプのはずなのに・・・」
おいおい、まる覚えしているのかよ。だんだん不安になってきたぞ。
「よく見て判断しろ・・・そこは水が降るトラップだった・はず・・・」
「どうしたんです。伯爵・・・」
俺が固まったのをみて渚佑子が不安そうに問いかけてくる。
「ああ、そこに仕掛けたのは俺だったからな。でも・・・確か、アンド氏が仕掛け直したんだよな。ワザとよく似た魔法陣でそこに仕掛けてあったのは壁に触れると落とし穴が出来るタイプだった・・・。」
「そうなんですよ。この落とし穴タイプにハマって、アンド氏にくすぐりの刑にされた悪い思い出が・・・」
ああ、そんなこともあったな。強引にセクハラするタイプだったからな。それも裏の顔で・・・。あの気弱な息子と親子とはとても思えん。
「そうか! このダンジョンは魔法陣が俺が作ったときのままの配置になっているんだ。」
「あのときの配置ですか、道理で引っ掛かったわけですね。でも、あのときの配置を知っている人間はほとんどいないのでは?」
「そうだよな。俺たちと実際にトライした第1陣の連中くらいだよな。でも特に警備を敷いていたわけでもないから、誰でもみようと思えば見れるか・・・」
あのときは、単に魔獣の暴走だと思い、敵が居るとは思っていなかったが・・・。敵が居たとしたら、真っ先に見に来ているはず・・・。だか・・・こんな初心者向けを模倣してどうするというのだろう???
*
2階に登るとそこも模倣したダンジョンだった。タンタローネのダンジョンの5階だったかな。嫌な思い出の残る迷路がそこにあった。
この階の宝箱をミミックと見破っていた俺が不用意に触ろうとしたアポロディーナの胸をラッキースケベ・・・いや間違って触ってしまい周囲の攻略者たちの白い視線を浴びたのだ。
だから・・・ティナ・・・ワザとやっているだろう・・・。
「だから、近付くなって・・・。」
今度は間違わないようにティナをヘッドロックして取り押さえる。
「違うでしょ。こっちでしょ。」
おいおい。緩んだ途端、手を胸に持っていくなって。しかも、自分の手を重ねてニギニギしているし・・・どんな痴女だよ。
そのときだった。突然、宝箱がミミックに豹変して襲い掛かってきたのだ。ティナの胸を抱え込んだまま即座に飛びのく・・・これもラッキースケベというのだろうか・・・なんか・・・エロい声を聞いたような気がするが・・・気のせいということにしておこう。
ミミックは宝箱に拘束され、当然、届いていないが・・・まるでティナの胸を触っている俺に対して怒っているかのように懸命に襲い掛かろうと手を伸ばしてくる。
「どういうことだ? あの距離で襲ってきたことなんて今まで無かったのに・・・渚佑子・・・どう思う?」
「・・・いつまで触っているんですか?」
渚佑子はミミックのことより、俺の手がティナの胸に置かれていることのほうが重要のようだ。
「まあ、いいじゃないか。ティナはこの世界の奥さんなんだし・・・ん・・・どうかしたか? ティナ・・・」
ティナは顔を皺くちゃにしてこちらを向く。
「嬉しいの。奥さんと言ってもらえて・・・。」
俺は余り良いとは思わないが・・・現地妻みたいで・・・。
「その女が奥さんなら、うちの母はなんなんだよ!」
クリスが吠え付いてくる。あーあ、男の子だね。
「もちろん、クリスティーも奥さんだよ。」
「なんだよ。それ! お前は奥さんを置いていったのかよ!!」
「仕方が無いだろう!! 少なくとも3年居たうちの2年半は誰ともそういう関係を持たなかった。でも彼女たちはそれで満足できなかった。半年間は一瞬でも気を抜くと襲われる・・・なんて、お前経験したことがあるのか!」
まあクリスティーには添い寝くらいはしてもらったけどな。




