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第4章-第27話 まま

お読み頂きましてありがとうございます。

「姫様ー、アキエ様ー、姫様ー・・・。」


 マイヤーと共に後宮に戻る途中で、後宮の侍女たちの声が聞こえてきた。慌てて侍女たちの方へ走って行き、話を聞くとアキエが居なくなったという。


「私が探します。『探索』・・・あ、あちらのほうですわ。」


 マイヤーが駆け出していく。凄いスピードだ。全力で追いかけるが、姿を目で追いかけるだけで精一杯だ。あ・・・止まった。


 近くに駆けつけると、アキエが居た。・・・よかった。何も無かったみたいだ。


「マイヤーねえちゃん、嫌だ。どこにも行かないでー。」


 いつも傍に居たマイヤーが突然姿を見せなかった所為で、また置いていかれたと思ったようだ。普段、明るく振舞っていても、やはりお母さんに捨てられたという現実がアキエを蝕んでいたようだ。


「大丈夫。もう何処にも行かないから一緒に居るからね。帰りましょ。ほら、お父さんも来たよ。」


「あっパパ。」


「ごめん、一緒に居てやれなくて本当にゴメンな。」


 アキエをそーっと抱きしめる。


「ううん。いいの。でも、突然居なくならないでね。」


「ああ、大丈夫。居なくならないよ。な、セイヤさん。」


 意地が悪いと思いつつ、元凶である、セイヤに話を振る。とにかく、どんな理由があろうとも娘から親しい人間を引き剥がすようなことは、してほしくはないからだ。


「ああ、誓う。誓うよ。何があっても、もうこんなことにはならない。」


 大泣きして、うとうとし出した娘を抱きかかえて後宮に戻った。


・・・・・・・


 後宮に戻ると、ジュースをひっぱりだしてアキエに渡す。うれしそうに飲んでいるみたいだ。そして、セイヤとエトランジュ様とマイヤー達をつれてアキエに割り当てられた部屋に行く。


 そして、セイヤには話してあったが、アキエを担当してくれている侍女たちに娘を置いていった元妻の話をした。なにから、なにまでツトムの話もだ。


「姫様、なんてお可哀相な・・・。」


「だから、誰か傍を離れるときはしっかりと説明してやってくれないか。説明すればわかるから。なぁアキエ。」


「うん、パパ。アキエ、もう大人だもん。」


 突然、話を聞いていたエトランジュ様がアキエを抱きしめた。


「アキエさん。私がずっと傍にいますからね。あなたは私の子供なのだから居なくなってはダメよ。」


「はい、エトランジュ様。ありがとうございます。エトランジュ・・・ママ、うぇーん、ママ、ママ、ママー。」


 息をせくように、アキエが泣き出した。


・・・・・・・


 結局、アキエがマイヤーともエトランジュ様とも離れたがらなかった。そのため、今日のお出かけは国王一家での移動となった。


 俺は別に明日でも良いと言ったのだが、セイヤが責任をとると言い張って譲らなかったからだ。


 やれやれ。


 まずは、大家さんところだ。


「こんにちわ。」


「これはこれは、陛下、いつもお世話になっています。」


「いや、わしのほうこそ、トム殿の後見として挨拶が遅れてすまぬ。」


「は、はい・・・、なにか問題でもございましたでしょうか?」


 大家さんはビビっているみたいだ。いきなり雲の上の人がやってきたのだ。それは無理もないだろう。


「あの腐敗しない袋なんだけど、あと幾つか欲しいんだがオークションに、まだ他にも出ていたのかと思って寄ってみたんだ。」


「ああ、そうですね。2~3袋はあったように記憶しています。」


「そのオークション、俺でも出られるのかな?」


「いえ、仲間内での取引ですから・・・。ご入用ですか。ちょうど、明日あるので、落札してきましょう。」


「金には糸目をつけぬから、できるだけ落札してくるのだ。よろしく頼むぞ。」


 おいおい、そんな言い方をしたら、落札できなかったらどうなるんだ。とか思ってしまうだろうが・・・。案の定、大家さんは真っ青になっていた。


「とりあえずは2つあればいいですからね。」


 俺は逃げるように出て行く。どうフォローしたらいいんだか。


 隣の店舗に居たツトムに商品を渡し、メッツバーガーのことを説明した。


「ああだから、王宮の方がいらっしゃったんですね。」


 来たのか。でも教会のほうはフォローしなかったと。相変わらず使えないやつだ。


「もう慣れたか?」


「はい。でも周りになんにもなくて、特に夜はつまらないですね。ネットもないし・・・。」


 まあ実は、ここからセイヤの執務室までそんなに距離がはなれていないから、Wifiは届いていたりするんだよな。教えないけど。


 まあ、アンテナが立っていることに気付いても接続するにはSSIDも隠してあるし、パスワードも必要だから大丈夫だろう。


「ああ、でも念願の異世界ライフなんだろ。この世界について勉強することもたくさんあるだろう。それに置いていったLEDライトがあれば夜も暫く勉強できるだろ。他の人よりは恵まれているんだから、頑張れ。」


「はい、そうですね。近衛師団も出入りさせて貰っています。」


「あと、お前と元妻の関係を後宮の侍女たちに喋ったから、冷たくされたからって落ち込むなよ。」


「えっ、喋っちゃたんですか?」


「ああ、アキエについて全て説明したときにな。」


「酷い。ようやく、友達になれたのに・・・。」


「なにが酷いんだって。貴様がすべて悪いんだろ。あんなにアキエちゃんを傷つけておいて・・・。」


「まあまあセイヤ、コレも一応俺の従業員だから・・・。ツトムも口は災いの元だぞ。俺相手に気安く抗議するくらいは構わないが、王宮の人間にお世話になっているんだからな。」


「はい、もうしわけありません。これから、気をつけます。」


 まあツトムのことだから。もう2~3回は同じことをしてしまうのだろうな。セイヤに気安く楯突いたりして殺されなきゃいいけど・・・。


「あ、ツトムおじちゃんだ。」


 外にいるアキエが走り出そうとするが、侍女たちが全力で引き止める。うーん、流石に風当たりが冷たいようだ。もちろん、マイヤーもエトランジュ様も冷たい視線を送っている。


 がんばれツトム。負けるなツトム。


・・・・・・・


 メッツバーガーの前まで来て、マイヤーが準備している間に教会のほうにお詫びに行くことにした。


「エミーさん。申し訳ありませんでした。」


「そうでしたの。こちらこそ、マイヤーが粗相をして申し訳ありません。あの子はどうも常識というものに疎いようで、言わなくていいことまで言ってしまうきらいがあるんですの。」


 まあ確かによく考えれば、報告したセイヤがどう思うかなんて解かるはずだよな。


「それでご相談なんですけど、店を手伝ってくれるような人はいませんかね。」


「うーん、そうですね。巫女見習いならマイヤーに懐いているからいいかもしれないわ。呼んでくるわね。すこしお待ちになって。」


 暫く待っているとマイヤーとは違い、落ち着いた雰囲気の娘が現れた。


「この子ですのよ。多少そそっかしい子ですけど、お役に立てると思いますわ。ね、クララさん。」


マイヤーはどんな反応を示すのか?


※ハ○ジは出てきません。念のため。


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