第11章-第151話 こうりゃくぶたいのこもん
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「それでは国王には、攻略部隊の顧問をお願いしましょう。」
当人が居ないのでは、話が進まないと悟った俺はローズ婆さんに頼み込み、彼をつれてきて貰った。こんなところで化粧品という切り札を1枚使うとは思わなかったな。
「それは、いったいどういうことでしょう?」
それまで神妙にしていた彼が困惑した顔をあげる。
「名誉挽回の機会は、欲しくないのかな?」
「欲しい。切実に欲しいです。このままでは、全ての責任を被って退位するしかないと思っていました。」
あいかわらず、気の弱いことだ。攻略部隊の下働きたちは、皆一様に気の弱い人間が多いと思っていたが彼は特に気が弱いみたいだ。だから、今回のように搦め手をつかってきたのだろうけれど……。
「流石だな。今回は、この部隊の弱点を上手く突いて潰したその手腕は見事としか言いようがない。だが、2度とあってはならない。だから、その手腕を攻略部隊を守ることに使ってくれないか。」
「はあ。考えてみます。」
どうやら、押しが弱かったようである。
「もちろん、名誉以外にも君にも得るものがある。ティナの世代、もしくは次世代の攻略者たちの冷たい視線に耐え切ったあとは、俺という存在を知らない世代や過去に何があったかを知らない世代だ。君ならば、それまでにその手腕で十分な信頼を勝ち取ることができるさ。」
「それは、どういう・・・。」
もう一押しだ。
「君は攻略者たちのような強い女性たちが好きなのだろう。もちろん、当人の承諾は必要だが正妻でも側室でも自由にしたら良いと思う。十分な信頼を得ていたならば、俺のように彼女たち全員を手にすることも不可能じゃないということだ。」
「そうですね。まずは信頼ですね。」
「そうだ。遠く長い道のりかもしれない。だが君には、その寿命があるだろう。そう難しいことでもないさ。」
「次の次の世代ですね。分かりました引き受けましょう。」
「それでは、お願いしよう。」
俺は立ち上がり、握手をする。
「但し、今日以降はティナたちに色目を使って貰っては困る。特にティナは今日夜の相手だ。彼女のことだから、一生俺以外の誰も愛さないに違いない。下手な小細工も不要だ。君は疑われないように毅然としていてほしい。」
「そ、それは・・・伯爵とティナの仲を直視しなければいけない・・・ということなんですね。」
「そうだ。それは俺からの罰であり愛の鞭だと思ってもらえばよい。今後の参考になるに違いないからだ・・・な・・・ティナ。」
俺はそう言ってティナを引き寄せてキスをする。
*
「まあ、彼ならばなんとか立ち直ってくれるだろう・・・。」
今日の仕事が終わり、王宮の一室に割り当てられた自室に戻るとティナを引き入れる。
「あいかわらず、伯爵は甘いですね。」
「そうだろうか・・・彼らたち下働きの人々には随分世話になったが、十分に返せなかったと気にはしていたんだ。その歪みはこんなふうに出てしまうとはな。」
「そうじゃ無いんです。私たち攻略部隊の女性があの男のしたことを代々伝えていかないと思うのが甘いというんです。」
「それは仕方が無い。人の口には戸は立てられないからな。」
「わかってて、あんなふうに仰ったのですか? 意外と人が悪いですね。」
「もちろんだとも、次の次の世代で直ぐになんとかなるなんて思っていないさ。だが彼にはあの寿命があるんだ。10世代くらい先ならば、なんとかなるんじゃないかな。」
「ふふふ。でも、珍しいですね。あんなことを仰るなんて・・・」
「なにか言ったかな?」
「仰ったじゃないですか『ティナたちに色目を使って貰っては困る』って。」
「ああ。アレな・・・その実、俺も怒っていたということなのさ。俺のモノなのだろう君は・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
「ん・・・どうした?」
「いえ、こんなにもモノ扱いされて嬉しいなんて思わなかったものですから、本当に一生思い続けていきますからね。」
「それは構わないが前回みたいに吹聴はしてくれるなよ。あれから、どれだけ大変だったか・・・。」
「・・・・・・すみません。もう言ってしまいました。」
会議が終わって夕食を共にして休憩してから、床に呼んだのに・・・どこにそんな暇があったのだ。そうか・・・会議が始まるまでが長かったんだった。そういえば、どこかに消えていたな。まさか、前回以上の攻防が繰り広げられることになるのだろうか?
還暦を過ぎた女性たちに隙を見せれば押し倒されるなんて、前回以上にたいへんだぞ・・・これは・・・。