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第11章-第147話 むすめ

お読み頂きましてありがとうございます。

「それで貴方たちは、なにをしにやってきたの? 27年も経って、いまさらこの世界に未練があったわけでもないのでしょう? それとも、私の身体に未練が残っていたということかしら・・・」


 そう言ってローズ婆さんは、いつものように妖艶な表情を浮かべる。でも老婆の姿では痛々しいかぎりだ。


 どうする? この場で言うべきか?


「いや・・・その・・・なんだ・・・。」


「伯爵は、子供を引き取りにみえたの。」


 俺の態度に号を煮やしたのか。渚佑子が先に言ってしまう。


「それは、多分出来ない相談ね。伯爵、貴方が母親を置いて逃げたと思っている子供が多いの。母親が騙して関係を持ったなんていう真実はどうしても子供にとっては都合のいいように捉えられてしまったようよ。」


 まあそうだろうな。約1人を除いてもういい大人だろうからな。


「そんなに欲しいのなら、私と子作りしましょう。」


 いつのまに近付いてきたのか、しなだれかかってくる。ブレないなこの人。


「ローズさんも大変だったな。」


 そう言ってギュッと抱きしめて頭を撫でる。良かった。身体は反応しない。ローズ婆さんも俺の肩に頭を乗せるとされるがままになっている。


 今回の危機に先頭に立たされてきた孤独感は並大抵のものじゃないだろう。しかも、途中から娘のクリスティーが居なくなったとなれば、なおさらであろう。


「なによ。なんでそんなに優しいのよ。」


 俺が身体を離すと、慌てて赤くなった顔を見られたくなかったのか後ろを向いてしまう。こんなところは親子だな。クリスティーそっくりだ。


     *


 俺たちは、そこから王宮に連れて行かれた。建物は27年前と変わらず、そこにあった。地下迷宮にはタルタローネの部屋から入るらしい。


「王宮は・・・召喚の間は・・・あなたたちを召喚する最後の砦だから、必死に守ったわよ。でも、不思議と王宮に直撃する魔獣の群れは市街地に比べると少なかったわ。」


 門番はかなり若く俺と渚佑子に対して、訝しげな表情だったがローズ婆さんが連れてきた人間ということで顔パスで入っていく。


「タルタローネ! 連れてきたわよ。やっぱり、あの家に居て正解だったわ。」


 部屋で出迎えてくれたのは16歳くらいの少女だった。かなりの美少女だ。透き通った白い肌に綺麗な金色の髪、身体も俺より僅かに低いくらいか。巨乳というほどではないが、大きめの胸と小さいお尻が絶妙なアンバランスさである。


「お父様、お待ちしておりました。」


 タルタローネは最後まで俺を父と鈴江を母として慕ってくれていた。彼女と会うときは強制的に鈴江の近くに座らされるので嫌だったが・・・。


「タルタローネ。美しい・・・美しく成長された。これでは、一族の男は放っておかないだろうな。」


「ふん! あんな口先だけの男たちなんか知りません。それよりもお父様にも魅力的に写っているようだったら、嬉しいのだけれど・・・。」


 そういえば、この娘はファザコンだったな。それでは若い男たちは見向きもされないわけだ。


「もちろんだとも・・・出来れば向こうの世界に連れて帰りたいくらいだ。」


 タルタローネたち一族は、クリスティーのような例外を除いて、迷宮と繋がっているので長期間引き離すわけには、いかないのだ。


「お母様は、お元気?」


 思わぬところで不意打ちを食らう。


「あ・・・ああ。まあな。」


 元気では無いだろうな。ただ俺に関わらないで欲しいだけなんだ。寄りを戻すなんて絶対有り得ないことなんだ。


「また・・・なのですのね。夫婦仲を戻せなんて申し上げてませんわよ。ただ優しくしてあげて欲しいだけなのです。それも出来ませんか? お父様。」


「・・・・・・。」


「何か、ありましたの?」


 どうして、子供って勘がいいんだろうな。余程、情けない顔をしているのかもしれない。


「そう、お父様もイロイロありますのね。」


 俺が黙り込んでしまうと何かを悟ったのか、そう言って慰めてくれる。


「でもね。そんなお父様も私に優しくしてくれたお母様も、両方とも大好きなの。それだけは忘れないでね。」


「ああ、ありがとう。」


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