第11章-第146話 こうりゃくぶたいのこども
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「まず伝えておきたいことがあるわ。普通の人々は各王都の地下ダンジョンで生活しているの。安心してちょうだい。」
そうか良かったと言うべきだろう。『普通』ということは俺が見知っている連中は・・・。
「そうすると、君たち一族の正体も人々は知ってしまった訳だね。」
地下ダンジョンに人々の住居を作るために力を使ったがためにこの姿になったというわけだ。いたわってやりたいところだが、ローズ婆さんの場合、隙をみせると飛んでもないことになるからなぁ。
「そうよ。仕方が無かったの。以前貴方たちを召喚した当時の数倍規模の魔獣の暴走が度々発生して、もうどうしようもなかったわ。」
「人々の反応はどうだった?」
「意外とすんなり、従ってくれて助かったのよ。」
元々長寿というのはバレていたから、普通の人間じゃないとは思われていたのかもしれないな。しかも、明らかに人々の主として君臨し続けてきたわけだし。人類の危機と言っても過言じゃない状況下では、選択肢が無かっただけなのかもしれないが・・・。
「それでアポロディーナやクリスティーは?」
「それが・・・。」
まさか・・・。そんな・・・。
「二人とも行方不明なの。」
おいおい、ビビらすなよ。死んでしまったのかと思ったじゃないか。
「アポロディーナは今回の魔獣の暴走が始まる直前で、クリスティーは最近発見された塔のダンジョンに向かったまま・・・。」
「ティナやミネルヴァは?」
「彼女たちはもう引退していたんだけど、今はこの下のダンジョンとポセイドロ国の首都の下のダンジョンで人間側の纏め役になった子供の手伝いをしているわ。」
まあ、そうだよな。下手をすると還暦を越えているかもしれない彼女たちだ。引退していてもおかしくはない。そうか、そうだよな。あれから、旦那が出来て子供を作ってその子供が立派な大人になるほどの時間が過ぎているんだな。
「子供って・・・。」
「もちろん貴方の子でしょ。貴方が帰ってからすぐ生まれたもの。知らないとは言わせないわよ。」
もちろん、しらばっくれるつもりは無い。元々いるかもしれない子供を引き取るためにやってきているのだ。しらばっくれるつもりは無いが、立派な大人でしかも人の上に立つ人材となれば、是非とも欲しいところだが、この状況下で言い出せるだろうか・・・。無理だな。
「じゃあ、まずはクリスティーの救出からだな。」
「アポロディーナは、どうでもいいの?」
「そんなわけは無いだろう。さっきから『探索』魔法の範囲を広げていっているんだが、感知できない。しかも『移動』魔法も失敗する・・・。となれば、どこかのダンジョンで生活しているのだろう。」
「そうなの。そっか・・・。よかったわ。子供を死なせてしまったアポロディーナだったけど、あの娘も愛しているのね。」
「ああ。そうだな。その通りだ。・・・子供・・・死んだのか?」
「ええ、アポロディーナもクリスティーも・・・。やっていることはやっていたのね。あとね・・・。」
ローズ婆さんの口から次々と攻略部隊の女性たちの名前が挙がる。見に覚えがある名前ばかりだ。その数が5人を超えたあたりから、隣の渚佑子から冷たい視線が送られてくるのがわかる。ああ、これは嫌われたな。病的な潔癖症の渚佑子でなくても許せないレベルだろう。
「結局、攻略部隊は存続しなかったようだな。」
入り口の自動ドアさえ動いていなかったし、周囲の埃のつもり具合からみると長い期間使われていなかったようだ。
「ええ。貴方たちが帰って10年はなんとか存続させていたのだけど・・・。各国の国王が次々と代替わりしたせいで援助が打ち切られ。特権も奪われ。各国の拠点も閉鎖に追い込まれました。」
拠点が閉鎖されたのでは、商売もできない利益が出なければ攻略部隊も続けられない。
「そうか。そこまでは見通せなかったな。」
「あとは伯爵の残していった資産と攻略部隊から襲爵した人間の年金、MPポーションでやりくりして、この建物はなんとか維持していたのだけれど・・・。世代交代しようにも若い人たちには魅力的に見えなかったみたいで。とうとう・・・。」
渚佑子さん大活躍の新作『聖女無双 ~賢者は二人目を演じる~』が登場
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