第4章-第26話 のんびり?
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のんびりしようと思ったのに・・・。こちらに来たときに居たのは、セイヤ1人だ。しかも不機嫌そうな顔をしている。あちゃ、マイヤーから話を聞いたことがバレたようだ。
「ねえ、セイヤ?アキエ達は?」
「アキエちゃんはお昼寝中だのう。」
セイヤがぶっきらぼうに話す。うーん、そうとう機嫌が悪そうだ。
「じゃあ、行こうか。」
俺たちは、そのままアキエの顔を覗きに行く。そうすると、アキエは朝御飯が済んだばかりで寝てしまったんだという。しばらくアキエの寝顔を見ていると、セイヤから漂ってきた先ほどの殺伐とした雰囲気が溶けてくるのを感じた。
アキエの寝顔を堪能した俺達はリビングに向かう。
「マイヤーは?」
「謹慎させている。」
「そうか失敗したな。つい彼女に頼ってしまったが、彼女は王宮の人間だったな。誰かを雇い直さなくてはいけないな。店はどうなっているか聞いているか?」
「休業中だ。」
俺は頭を抱えた・・・。そうだよな。彼女の能力に頼った商売だ。一から考え直さないといかんな。つい、自分が不機嫌になっていくのを抑えられない。
マイヤーが後宮の警護という仕事を優先して、短時間なら店を閉めるのは問題ないと考えていたが、まさか長期間拘束されるとは・・・。
「怒ってないのか?」
「何がだ?」
つい、セイヤにトゲトゲしい返答をしてしまう。
「マイヤーを謹慎させて、商売の邪魔をしたこと。」
「ああ、それは俺のミスだ。そういうこともあるって考慮できなかった俺が悪いんだから。正当な理由なんだろ。それはセイヤ様の国王としての権利だから、何もいえないよ。」
わざと様付けしてやる。でも異世界での商売は、いろいろと依存していることばかりだ。
「マイヤーに会わせてくれるか?」
「マ、マイヤーに?」
「ああ、売り上げと商品を回収して置かなくてはいけないからな。」
このままでは、廃棄処分するしか無いかもしれないな。
「それで、マイヤーは何をしたんだ?」
「あ、あの・・・その・・・。」
その挙動不審さで十分だ。どうやら、正当な理由なんて無いらしい。
「何だ。俺に話せないような話か?」
「・・・・・。」
セイヤはどうしても言いたくないのか黙り込んでしまう。
「解かった。当たり障りが無いところをエトランジュ様に聞こう。」
仕方が無いから、揺さぶりを掛けてみると効果覿面だった。エトランジュ様からは聞かれたくないらしい。
「言う、言うから待って。・・・えっと、聞いたのだろ。俺が父を殺したと・・・。」
「ああ、街でそんな噂を聞いたからな、本当なのか聞いてみたんだ。ああ、すまん。直接、セイヤ様に聞くべきだったな。申し訳ございません。セイヤ様。」
意地悪して、土下座してやる。
「や・・・やめて・・・お願い・・・。」
いつも威厳タップリのセイヤがあたふたしている。
「そうか、それで本当のところはどうなんだ?」
俺は立ち上がって質問する。
「ほ、本当だ。父を殺したのも、兄弟を殺したのも・・・。」
「次は俺か?」
「そんなことはしない。そこは信用してほしい。」
「なぜと聞いてもいいか?」
その後、セイヤから聞いた話には、驚愕の事実が含まれていた。
先王は病気になった際に不安に駆られたそうで、突然、異世界に逃げた俺たち家族を抹殺しに行く。そんな計画が持ち上がったそうだ。それも、セイヤが召喚魔法を使えるようになったためだったという。
当時、既に右軍を率いていたセイヤは、国王が右軍を視察に来たときに自らの手で殺したそうだ。そのままクーデターを起して国王に即位した。
他の兄弟達はセイヤに従ったが、より強固な政権にしたかったのかもしれない。国王になったセイヤに立ち消えになった俺たちを抹殺する計画を蒸し返してきた。そのまま、殺すしかなかったのだという。
「そうか、それはつらい選択をさせた。すまなかった。」
なぜと聞いてみたかったが、セイヤの心情を思うと聞けなかった。
「でもなんでマイヤーは謹慎しているのだ。全く解からんのだが・・・。」
「わしが怒りにかられて、つい・・・。知られたくなかったのに・・・。」
どうやら感情的になったがゆえの行動だったらしい。とにかく、マイヤーを謹慎から解かなくては支障がありすぎる。可哀想だが、少し追い込んでみるか。
「国家機密か何かだったのか?俺が聞いたことは、お前が先王を殺したかもしれないという噂と兄弟を殺したということだったんだ。王宮の関係者であるマイヤーしか知らない話なのか?」
「いや、ちがう。」
まあ、そうだろうな。そんなことを秘密理にできるはずも無い。
「そうするとその辺の商人から同じ情報を引き出しても、その商人を捕まえたと・・・。」
「そんなことはしない。皆、知っていることだから。」
そう返してくるか。お前もしかして、俺に怒られたかったのか?はた迷惑だぞそれは・・・。
「えっもしかして、お前の怒りに触れて謹慎させたというのか?」
「その通りだ。」
「そのせいで、商売は休業中・・・、本当に怒ってもいいか?」
「ああ、その権利はある。好きにしてくれ!」
俺はセイヤの近くまで行くと、右手を振り上げる振りをする。セイヤは思わず身構えるが、そのままセイヤの頭を撫でてやった。
俺に怒られたい人間を怒る趣味は無い。どちらかといえば優しくするほうが得意だ。
「ん、ありがとうな。俺達を守ってくれて・・・。でも、マイヤーは出してやってくれないか?」
俺達は、そのまま、近衛師団の独房まで行き、マイヤーを出してもらった。
「すまん。俺がマイヤーに聞いたばっかりに、こんなことになってしまって、つい親しみをもって聞いてしまったんだが・・・。他の人間に聞くべきだった。できればセイヤに対しては、怒らないでやってくれないか。店についても別の人間を雇うことにするよ。」
俺がそう言うとそれまで、すこし怒っていたようなマイヤーの目がさらに鋭くセイヤを睨みつけた。あれっ俺、なんか間違った?
「そ、そんな。私、王宮を辞めますから店で雇ってくださいよ。お願いします。」
「それは困るよ。王宮で出すほど給料は渡せない。」
「給料はあれだけ貰えれば十分暮らしていけます。」
「セイヤさん、引き止めてね。後宮や俺の警護役でもあるんだろ彼女。俺は、彼女がアキエの傍に居てくれるほうが安心なんだけど・・・。」
つい説得役をセイヤに丸投げしてしまった。それからは聞くに堪えない応酬がセイヤとマイヤーの間で繰り広げられた。そんなセイヤがしょんべん垂れだった情報なんか、いらないから・・・。
「解かりましたわ。今回はトム殿の顔を立てて引き下がりますわ。ですがメッツバーガーは辞めなくても構わないですよね。陛下。」
「・・ああ。」
セイヤは子供の頃の恥ずかしい情報を沢山バラされて、泣きそうになっていた。
簡単に書きましたがセイヤの葛藤や心情はおそらく、1編の小説分くらいはあると思います。機会があれば、描写したいですね。