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第10章-第141話 みんなのいけん

「わかった。わかった。それで鈴江さんはどうしたいんだ?」


 俺は祈る気持ちで相手の気持ちを聞きだす。できることなら聞きたくないのだ。なんと言われようと答えは決まっている。


全ての現実を知った今なら、18歳である彼女なら、自分のしでかしたことが許せないだろう。きっと何も要求できない・・・いや、してくれるな。お願いだ。


「私は・・・私は・・・」


 逡巡しながらも言葉を発している。少しは期待してもいいだろうか・・・。


「私は罪を償わなくてはなりません。・・・ですから、傍に置いて頂けませんでしょうか?」


 ダメだ。もうダメだ。


「鈴江もこう言っていることだし、やり直してみれば・・・?」


「幸子。お前こそ、元の旦那とやり直せれるのかよ。できないだろう。だから、俺たちも出来ないんだ。」


 分かってくれよ。本当はこんな君を傷つけるようなことも言いたくなかったんだから・・・。


「あのロクデナシ、・・・出来るわけがないでしょ、アイツ結婚してから別れるまでに5回も浮気したのよ・・・たった1回の浮気くらい許しなさいよ。男でしょ。」


 幸子の旦那の顔を思い浮かべる。そういえば、帰り道に偶然、出会ったときがあったよな。ホッペにデカデカとキスマークをつけたままでデロデロに酔っ払っていた。


 懇意にしているという娘が居るというキャバクラに誘われたのだが・・・嫌悪感しか覚えなかったことを良く覚えている。あの旦那と一緒にしたのが不味かったのか・・・?


「静香、君はどう思う?」


 俺は縋る思いで近くに居た静香に聞いてみる。きっと、いつもの彼女なら、母親である幸子の言動に反対の意を示してくれるに違いない。


「そんな・・・父さん・・・5回・・・?」


 ヤバイ。静香まで傷つけてしまった・・・。どうしたら、いいんだ。


「そんな訳無いよ。母さんには言わなかったけど、今の彼女だという人を7・8回は紹介されているの・・・あの人、その彼女さんと一緒にメシを食おうと誘ってくるんだよ。あんな最低な男と鈴江さんを一緒にするなんて、誰が許しても私が許さないわ。」


 ダメだこりゃ。恨むぞ、幸子の元旦那さん!!


「ミンツはどうだい?」


 ヤンにあれだけ傷付けられたんだ。最低な行為をした人間に対しては厳しいに違いない。


「鈴江さん? 優しい人ね。愛していた人が戻ってきたのだったら、受け入れてあげて、いつもの優しいトムなら簡単な・・・ことじゃ・・・」


 俺の表情を読み取りながら、話していたらしく最後は尻すぼみになった。よほど険しい顔をしているらしい。


「トムは、今でも彼女を愛しているんでしょ・・・。日本での戦争のときは凄かったじゃない・・・。まるで全世界に向かって彼女を愛していることを主張しているみたいだったわ・・・。」


 アヤは俺が聞かないうちに答えてくれる。うわっ最悪・・・。あれは違うんだ・・・違うんだ・・・違うんだ・・・違うんだ・・・違うんだ・・・違うんだ・・・違うんだ!!!


 ただ・・・・・死んでほしいなんて思ってなかっただけで・・・他意は無いんだー!!


「止めなさい!」


 マイヤーが間に入って止めてくれる。


「トムがこんなに嫌がっているのがわからないの? トムは嫌なんでしょ・・・それなら、ハッキリと皆の前で仰ればいいだけよ。」


 流石にマイヤーだ。伊達に年はくっていない。俺の気持ちを一番よくわかってくれるらしい。


「そうだ! 鈴江とは終わったことなんだ。やり直すことなんで出来ない。死んでも嫌なんだ。・・・ただアキエの傍に居て欲しいだけなんだ。」


 そう死んでも嫌だ。それが本音だ。


「それが本音なの。アキエちゃんにはトムの傍に居て欲しいんでしょ・・・だったら、必然的に鈴江さんが傍に居るってことじゃない・・・。」


「違う!!」


 違わないのか? もう訳がわからなくなってきた。


「違わないでしょ。最後のが本音っていうことね。じゃあ例えば、アキエちゃんの傍に彼女が居るとして・・・彼女が他の男性とイチャイチャしていても貴方は耐えられる?」


「・・・・・・」



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