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第10章-第139話 かいしゃく

お読み頂きましてありがとうございます。

この結末を話した際に編集者さんは呆れた表情をしていました。

でも変えません。今まで書いてきたことが全部ひっくり返ってしまいますからね。

結末を描かずに終わらせるつもりもありません・・・さあどうやってトムは乗り越えるのか??

・・・小説の主人公らしく無いと言われるのは百の承知の上です。

では、どうぞ。

「では、私が読みあげますので聞いてください。」


 奥さんたちの総意では、大人しく聴くしか選択肢はない。今にも『移動』で抜け出したくて仕方が無いが・・・。その無言の圧力に屈してしまっている。俺が何をしたのだと言うのだろう。


 概要は、ごく簡単なことだった。


 出来る限り借金経営をしたくなかった俺は、銀行からの借入金は短期のものしか借りずに経営していた。そのお陰でその短期金利もごく僅かだが下がってきていた。


 だがその遣り繰りを傍で見ていた鈴江は、俺を助けたいと思いを募らせていたそうだ。


 あるとき、大学生が就活の大量に辞めたことで人手が急激に足りなくなったことでどうしてもその穴埋めとして、鈴江の手を借りる必要が出てきた。


 経費の面でも優遇されている配偶者の手を借りることは、ダメ経営者と思っていた俺はいままで一切、鈴江の手を借りることなく、経営していたことが裏目に出たらしい。


 もちろん、少しお嬢さまっぽい片鱗を見せている鈴江の手を借りたくなかったことも鈴江の前でいい格好をしたかったこともあるのだが・・・。


 鈴江は、俺と俺の会社が潰れるかもしれないという思いに駆られたことが原因だった。


 しかもタイミング良く、鈴江を裏切り一切合切の豪徳寺家の遺産を持ち逃げした後見人夫婦を見つけていた。その遺産の大半がそれを指示した、自分の元婚約者であった富強銀行の副頭取、前橋晃一の手に渡っており、今の地位もそれを利用して得たものだったらしい。


 形見として残していた遺髪を利用して、過去に子供が居たことをネタに元婚約者から金を搾り取るつもりで近づいた鈴江だったのだが、アキエのことを自分の子供だと思い込んだ副頭取から、より高額を提示されたのが浮気の原因らしい。


 俺の話から、単純で近づきやすいツトムを選定して浮気相手として陥落したそうだ。


 一時的に俺の元から去ることに利用したのだろいう。とてもツトムには聞かせられない話だ。


 アキエを俺の元に戻すのも計画のうちだったらしい。俺の性格からしてそのあとにどんな理由を付けたとしてもアキエを引き渡さないと確信していたそうだ。


 その後、副頭取の蓉芙グループでの子飼いだった田端洋治に近付き、その世話になりつつ、機会を窺がっていたそうだ。その間にも、副頭取から金を引き出しつつ世話になっていた。


 だがその機会が来たときには、俺は突然の成金状態で鈴江の支援など不要だったらしいのだが、とにかく俺に近付きたい一心で計画通り進めてしまったらしい。


 遺書には、死んだらこの金はアキエに渡してほしいと最後に綴られていた。


 まあ、あいつのことだから、外国に出ても男を転がせると踏んでいたのかもしれない。実際にウィルソン伯爵の姿をした俺を口説いたくらいだからな。


・・・・・・・


「なんで? なんで、そんな表情で聞いているのよ!」


 幸子が朗読が終わるの待ちかねたように口を出す。鈴江が思いを込めて朗読すればするほど、俺は白けていたのだ。ああ、そうなのか。ふうん。という程度だ。別に内容が嘘だとか思っていたわけでは無い。


 遺書に嘘を書いても仕方が無いし、細部に渡って記載されている内容からして調べれば分かることばかりだったからだ。


「これを聞かされたからと言って、何も変わらないから・・・だけど。幸子の中では・・・何かが・・・変わった・・・ようだな。」


 俺は幸子の表情を見ながら慎重に言葉を紡ぎだす。話の内容より、よほどそれにショックを覚えている俺がいる。怖い・・・他の嫁たちが同じ表情だったら・・・どうしよう・・・。


「だって!! まさか! 全部作り話だと思っているの?」


 まるで魂の叫びのように話す。幸子の言葉のほうが事前に作られたかのようだ。


「いいや。もちろん、本当のことだろうさ。・・・あいつにそんな創作力が無いことは一番俺が知っているからな。」


 怖いと思いながらも、憎々しげに鈴江のことを扱き下ろしてしまう。目の前の鈴江の表情が曇る。今の彼女になんら罪が無いことは理解していても感情がついていかないのだ。


 ほとんど、幸子の売り言葉に対する買い言葉だと理解してほしいのだが・・・無理のようだ。・・・中身が18歳だものな、仕方が無いか。


「それはそうよ! 事前に聞いていたことと一致するもの。」


 幸子は浮気する前の鈴江から何かを聞いていたらしい。


「何を! 聞かされていた!!」


 まさか・・・。


「何をって、経営が苦しいのかもとかよ・・・。」


 くそ! 


 それは経営者側が従業員に対して吐露してはいけない言葉だろ。もしその時点で幸子が話しを広めていたら、俺の会社は確実に潰れていたぞ!


「何! そんなことを言ったのかお前!! 俺がどれだけ従業員に心を砕いてきたと思っているんだ!!! それを足を引っ張りやがって!!!!」


 思わず目の前の鈴江に対して叱責してしまった。

本来の遺書は、もっと切々と鈴江の思いが綴られていたのですが、トムがナナメ解釈しています。

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