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第10章-第137話 ぱずるのぴーす

いつもお読み頂きましてありがとうございます

「大変よ! トム。」


 日本に帰ってくるなり、さつきと幸子に捕まった。冷静な幸子と慌てているさつき、だが口をそろえて言うには鈴江の遺書が見つかったというのだった。


「へえ、そう。それで?」


 この年齢になれば遺書を残しておくというのは、普通じゃないのかな。世界各国に飛び回っている俺はテロに関わることも日常茶飯事だ。いつ何時死ぬことになってもおかしくない。俺もこの間、書き換えたばかりだ。


 鈴江にしても中東という地域がどういうところか、くらいは分かっていただろうから、日本を出るときに遺書くらい残していても不思議ではない。


「トム! 貴方宛なのよ。」


 それも不思議じゃないだろう。何処にいるかは知らなかっただろうが、俺のところにはアキエがいる。普通に考えてアキエに何かを残したいと思えば、俺に知らせないわけはないに違いない。


「ふうん。でも、鈴江は生きているんだし、俺が次に異世界に行くときに渡しに行けというのか?」


 別に鈴江が日本に帰ってきたときに渡せばいいんじゃないかな。どうせ、そのときに洗いざらい彼女の行動について知っていることを教えなくてはならないのだ。その時の資料にすればいいのじゃないのか。


「何? 見たくはないの?」


 俺の余りにも淡白な反応に呆れたのか、直接的に聞いてくる。


「見たくないさ。そんなもの。俺に関係の無い人間の遺書を見ても仕方が無いだろう。それとも、さつきはそれを見たのかい?」


「あの・・・その・・・。」


「ああごめんごめん。見たからこそ、そんなに慌てているのだよね。良いニュース? 悪いニュース?」


「もちろん。良いニュースよ。」


「良いニュースね。良いニュース、良いニュース・・・よし、聞こうじゃないの。」


 正直言って、良いニュースも悪いニュースも鈴江のことなら、聞きたくないのが本音だ。今さら、何を聞いても遅いのだ。鈴江とアキエを会わせてしまったあとでは、もう引き返せない。


 どれだけ、俺が不幸な目にあうとしても、あの2人を引き離せない。


「驚かないでね。アキエちゃんね。貴方の子供だったの。」


「・・・アキエは俺の子供だけど?」


 血が繋がっていようがいまいが関係が無い。俺の子供はアキエひとりだけだ。いまさら、何を言っているのだろう。それは納得していてくれたのじゃなかったのか?


「ごめんなさい!! 違うの!!! アキエちゃんは貴方の実の子供なの。血が繋がっているの。」


 俺は思わず、自空間に入れていったDNA鑑定書のコピーを取り出す。


「えっ。これは偽物だったのかい? 発行元や専門家にも確認させたよな。それが間違いだったというのかい?」


 どこから入手したのかDNA鑑定の詳細データによると鈴江とアキエの親子の可能性99%以上、相手方の男のアキエの親子の可能性99%以上、アキエが彼ら2人の子供である可能性99.99%以上と出ていたのだが・・・


「そっちのDNA鑑定書も本物だし、こっちのDNA鑑定書も本物だったの。」


 さつきが、そう言って2通の書類を取り出す。1通がDNA鑑定書で、もう1通が戸籍謄本にホッチキスで何枚かの紙が閉じられている。


「鈴江さんが貴方と結婚する前に子供が居たのよ。ほら、ここの『明江』にバツ印が付けてあるのよ。」


 そういえば婚姻届は、鈴江が一人で出しに行ったな。二人の共同作業だと思っていたから、勝手に出されていてショックだったんだよな。これを見られるのが嫌だったのか。


 もしかして、子供が出来たときに『あき』ちゃんと呼べる名前がいいって言い出したのもこのことがあったせいなのかもしれないな。


 ちなみにアキエは『明笑』と書く。明るく笑い続けてくれる子に育って欲しいと俺が一生懸命考えたのだ。だけど出産後突然、違う名前がいいって言い出したのも、これが原因だったのだろう。


 俺の中でちぐはぐだったパズルのピースがピタっとはまった感覚だ。


 あれ? ということは、あの男を騙す計画は計画的じゃ無かったということなのか?


 死んだ子供と同じ名前を付けたアキエ。誘導するつもりだったら、あのとき違う名前がいいなんて、なぜ言い出したのだろうか?

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