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第9章-第126話 ぶれい

お読み頂きましてありがとうございます。

 俺は、セイヤとマイヤーとアキエと鈴江を連れて、チバラギ国に到着する。


 チバラギ国側の出口は100Gショップの2階を選んだ。まさか後宮の召喚の間を使うわけにはいかないからだ。


「あれっ。ツトムなんで居るんだ?」


 ツトムはモモエさんと共に、ここを引き払い、ジロエ伯爵家に住んでいるはずだ。さては、逃げ出してきやがったな。


「社長・・・それに鈴江さん・・・?」


「この人は誰ですか? 私の知っているひと?」


 鈴江が俺に聞き返す。


 俺は返答に詰まってしまった。まさか、この場所でツトムに会うなんて想定外だ。鈴江には、このまま後宮でアキエの相手をしてもらい。その間、鈴江を知っている人物の出入りを止めてもらうつもりだったのだ。


「山井ツトムくんだ。こちらの世界で商売の手伝いをしてもらっているんだ。今は、ある伯爵家に世話になっているようだ。そうだったなツトム。」


 俺は努めて冷静な声で説明する


「はい。母は毎日楽しそうです・・・」


「それに婚約者が居るんだってな。聞いたぞ? お前も理想の異世界生活を満喫しているんだろ。よかったな。」


 俺は口ごもったツトムの会話に割り込み、口早に説明を続ける。何を言うつもりだ。


「はい。ありがとうございます。あのう・・・」


「ああ、鈴江か。実は記憶を失っていて、お前どころか、俺やアキエのことも忘れているんだ。だから、イラナイことを話すんじゃ無いぞ。」


 まあ、もう会うことはないだろうが・・・。一応、釘を刺しておかないとな。


「それじゃあ・・・」


「それから、ここの2階は、当分使用禁止だ。わかったな!」


 呆然とした表情でへたり込んでいるツトムを置き去りにして俺たちは、歩いて王宮に向かう。『移動』を使ってもいいのだが、できるかぎり、身重のマイヤーに負担を掛けたくなかったからだ。


・・・・・・・


「通るぞ。」


「ど・どちら様でしょうか? 少し、お待ちください。」


 セイヤの勢いに押され、門番がビビッている。セイヤのスーツが見慣れていないのか国王本人とは気づいていないようだ。


 慌てて俺は、門番に耳打ちしに行く。


 門番は、驚愕で目を見開いていく。


「平に、平に・・・。」


 門番はもうこれ以上無いくらい這いつくばって土下座しだした。いったい、どれだけ怖がられているんだセイヤ。


 そういえば、いつだったか。言っていたな。言葉ひとつでその人間の将来が決まってしまうから、威厳を持った喋り方なんだとか。


 その一環として、無礼を働いた人間に対しての処分も厳しいのかもしれないな。普段の俺たちへの態度からは全く伺いしれないが・・・。


 セイヤは何も無かったかのように執務室に向かって歩いていく。


「おう。じい。」


「はて、どちら様じゃったかのう?」


 侍従長のジン殿だ。いつだったかお買い上げ頂いた老眼鏡を押し下げ、見上げるようにセイヤを覗き込む。


 幾らなんでも、いつも身近に居る侍従長がセイヤを見違えるなんて・・・。俺はハラハラしながら、見ているしかできない。


「お・おまえもか。俺だ。俺だ、セイヤだ。」


「セイヤ様と言いますと3日間も休んだあげく半日執務しただけで、また5日間も休んで国政を滞らせている陛下のことですかな?」


「うっ。」


「まるで出産間近の奥さんが居る夫のようにひたすら、後宮をぐるぐる回っていた陛下のことですかな?」


「うっ。」


「政務が滞っていると申し上げても、観光をしてくるんだって、ダダを捏ねた陛下のことですかな?」


「参った! 降参だ、じい。・・・トム、どうやら今日は政務に掛かりっきりになるようだ。すまんが、後宮のほうの案内は任せる。じい、手配は済んでいるか?」


「ええ、もちろんですとも。こちらの書類にサインを頂ければ終わりです。今日だけではすみませんぞ、2日間はカンヅメを覚悟してください。さあ、いきますぞ。」


「痛いって、じい。耳を引っ張るなって。」


 セイヤは、侍従長にそのまま連行されていく。


 しばらく、その場で待っていると侍従長が戻ってくる。


「さあ、お待たせ致しました。では行きましょう。」


「陛下は?」


「陛下は今、書類と格闘中です。まあ、たかだか50センチに積みあがった書類が4列ほどですので、夜中には終わるでしょう。」


 俺はその姿を想像して気が遠くなるのを覚えた。意外と凄いな、それだけの書類を読んで、決済をしなきゃならないのか。


 俺だったら投げ出してしまいそうだ。

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