表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
284/563

第9章-第118話 あいたい

お読み頂きましてありがとうございます。

「『俺は、とうとう14歳の妻を娶ったぞ!』と書いてあります。」


 俺たちが奥まで進むと苦々しげな顔をしたご老体がでてきた。橋家の当主だという人物に手書きの禁書第34巻の235ページを開きながら見せる。


「これは、修坊ちゃんの字だ。」


 初代国王が書いた禁書はほとんど日記のようだ。実は第40巻には、14歳というのが嘘で30歳のクォーターエルフだったことが判明してこの女性を娶ったことを悔いている文章が見られるのだが・・・。


「とうとう、犯罪者になってしもうたか。これが14代当主だった男かと思うと情けなってくるわ。君たちの目的は何かね。」


 異世界では14歳の女性は丁度、成人前の適齢期だ。犯罪でもなんでも無い。


「既に文書でお伝えしていると思いますが、ヤオヘーとハロウズジャパンの件で要求を聞き入れて頂けないかと思いまして・・・。」


「ああ、あの件か。この文書を永久に封印してくれるなら、無条件で従おう。こんな犯罪告白といえるようなもの、世間にバラまかれては橋家の沽券に関わる。」


 元々、ヤオヘーの株式の半分は幼くして祖父から14代当主を引き受けた直後にバブル破綻があり、一時的に資金繰りが悪くなったヤオヘーへの資金提供の見返りに引き受けた株式だったという。


 その後、ヤオヘーは野球球団を持つほどに成長し、彼の先見性に唸らされたという。だが、彼が行方不明になるとヤオヘーは破綻に向かっていくことになったという。


「それもこれも、その女が修坊ちゃんの求愛を断ったせいだ。」


「仕方がないでしょ。中学校卒業前の女の子に婚約したいだなんて、しかも会社への資金提供の見返りだなんて、ロリコンの変態にしか思えないじゃない。」


 どうやら、14歳の妻という存在に固執したがために当の鈴江の気持ちを考えずに堀を埋めるように縛りつけようとしたようだ。


 当時、ヤオヘーは球団を手放し、傘下のコンビニエンスストアも手放そうとしていた時期で、ヤオヘーほかバブル後の株式相場で大儲けをしていた橋家に取ってそれほど負担でなかったという。


 ヤオヘーを潰してでも、娘を渡さないという姿勢の鈴江の父親だったため、それ以上は進展が無かったようだ。それも半年もせず時間切れ、15歳になった鈴江に絶望した彼は、『旅に出る』と言い残して失踪したらしい。


 その後の調査で、その足で彼の思い出の地である三重県に向かったところまで確認が取れているのだが、当時、紀伊半島は台風の真っ只中。警察では足を滑らせて川に落ちたのではないかと睨んでいるらしい。


 例年、台風がくると必ずひとりは川の様子を見に行き行方不明になる人間が出てくる。彼もそんな中のひとりだと思われたらしい。


 禁書にそのあたりの記載も載っている。彼は出身大学に行き、後輩を訪ねて部室に行ったものの、当然誰一人として、居なかったそうだ。


 彼はそこでひとりの少女に出会う。大学付属の幼稚園に通う女の子。どうも、幼稚園に帽子を忘れたらしく、閉まっている幼稚園の周囲をぐるぐると回っていたそうだ。


 部室と幼稚園の前には大きな池。とくればわかるだろう。女の子が足を滑らしたのを見た彼が池に飛び込み必死に助けた。


 そのまま、溺れたはずの彼を待っていたのは、助けた女の子そっくりな女神様だった。


 神として目覚めるまで人間界で暮らしていたのだが。それが何かの手違いで死にそうなめにあった彼女は、その場で神として目覚めたそうだ。


 この世界で死んだことは、神の力を持ってしても無かったことにはできないということだった。


 ただし、異世界へなら、時間を超えて送り込むことが出来ると聞いた彼は14歳以下の女の子にモテるチートを貰い、魔王が倒されたばかりの平和な時代を希望して異世界へ移動できる洞窟に送り込まれたそうだ。


・・・・・・・


 俺たちは、橋家を辞去した。


 俺の中で鈴江に対して血が騒ぐのは、初代国王の血がそうさせるのだろうか。初めに鈴江に惹かれたのも・・・。いや、やめよう。


「お前、どうする? ヤオヘーは俺のものになったぞ。」


 こいつは、ヤオヘーに固執しているはずだ。このまま、社長をやらせてみるのもいいかもしれない。一切、手をださずにコイツにやらせて潰してどん底をみせるのも、ヤオヘーの癌細胞である顔見知りの社員たちを切らせるのもいい。


 泣きついてきたら、目の前で大リストラをして、ハロウズジャパンとしてヤオヘーの名前を消してしまえばいいのだ。そのとき、コイツはどんな顔をするだろうか。


「ふーん。」


「俺の目の前から、消えてくれたら、社長をやらせてやろう。どうだ。」


「トム!」


 横から幸子が口を挟む。俺がジロリと睨むと本気だと悟ったのか。口を噤んでしまう。


「アキエとも会えないの?」


 二つ返事で飛びつくと思ったのに返ってきた答えは全く違うものだった。


「もちろん、アキエが会いたいと言えば会わせてやろう。母親としての義務だろ。」


「あなたとも会えないの? それは嫌よ。」


 何を言っているんだ。この女は、俺の前から消えろ! という意味が分かって無いらしい。日本語が理解できないのか?

初代国王の話は、いつか書きたいですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】「ガチャを途中で放棄したら異世界転生できませんでした」
https://ncode.syosetu.com/n4553hc/
もよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ