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第8章-第111話 ゆるさない

お読み頂きましてありがとうございます。

「わあ、私の好きな顔が2つも揃ってる。洋一、私のために社長を連れてきてくれたのね。なんでそんな真っ赤な顔をしているのよう。」


 修羅場かと思ったがどうも違うらしい。洋一さんも男だから、しっかりと隠しているのだろう。それならば、なぜ、信子さんがこの店を知っているんだ?


「またお前か。よく飽きもせず、俺の顔を見にくるなあ。一応ライバルだぞ。そんなに洋一を取られたいか。」


 まあそうだよな。彼女の性格からして、黙っていられるとは思わなかったんだ。


「それよりも、洋一の野郎、本命にとうとう告白したぞ。大丈夫か? お前たち夫婦。」


 おいおい、それをしゃべっちゃうのか?


 しかも本命って、なんだ?


「えっ、社長に告白したの? 洋一、見たかったなあ。もう一度、やってくれない?」


 鬼畜だ。ここにも、ドSがいる。


「やれるか!」


 洋一さんが違う意味で真っ赤な顔をして、大声を出す。それ肯定しているのと同じだぞ。


「へー、本当に告白したんだ。今のお気持ちは?」


 信子さんが拳をマイク替わりに洋一さんの前に突き出す。


 全くもうこの夫婦は・・・。


「へー、社長。そんなに嬉しかったの?」


 自然と笑みがこぼれてしまった。わかっていたことだが信子さんの興味がこっちに飛び火してくる。そういえば、俺の部下だったときから、こういったことには遠慮無しに突っ込んでくる奴だったなあ。


「皆に愛されてて嬉しいよ。」


 とりあえず、無難な回答をしておく。


「もちろん、私も愛してるよー!」


 そうそう、常に面白い方向性で動くんだよなあ。傍で見ている分には面白いんだが時々こっちまで飛び火してくると対処できなくなるから、わざと洋一さんの方がぼうぼうと燃える方向で動いてやるのだ。


「愛いてるってよ。良かったねえ。洋一。・・・何、洋一泣いているの?」


「違うよ! お前のそのぶっ飛んだ思考に泣きが入っただけだよ。もうやめてくれー。お願いします。信子さま。」


「よし。許して遣わす!」


 その時だった。突然、俺のスマホが鳴り出す。さつきだ。おかしい。加納さんのことを知った彼女が態度の変な俺に洋一さんの寄越したに違いないのだ。


 それなのに邪魔をするような電話を寄越すとは、余程、緊急な用件なのだろう。俺は緊張しつつ、スマホの通話ボタンを押す。


「渚佑子さんが、いきなり窓から飛び降りたの!」


 えっ、いきなりのことで思考が追いつかない。どういうことだ。


「無事なのか?」


 さつきの話では、窓から飛び出して隣の建物に降り立ったそうだ。そして、渚佑子の周囲が青白い霧に円形状に包まれたと思ったら、まるで逆転フィルムを見るかのように一瞬にして、霧が晴れたそうだ。


 そして、さつきの方向に深々と頭を下げて何処かに行ってしまったのだということだった。


 ・・・また、召喚されそうになったらしい。咄嗟に誰も巻き込まないために窓から飛び出したに違いない。


 そして、怖くなったのだろう。自分の近くに人が居ることを・・・。万が一、巻き込んでしまったら。自分さえここにいなければ・・・そう思って姿を消したに違いない。


 スマホの通話ボタンを再度押して、通話を切ったあと、渚佑子からメールが入っているのに気付く。そこには、一身上の都合により、退職させてくださいと綴られていた。


 馬鹿にしてやがる。俺がどれだけ考え抜いて、渚佑子の採用を決めたと思っているんだ。この程度のことは、織り込み済みだ。


『広域探索』


 うーん。周囲100キロメートル以内には居ないようだ。渚佑子は、『転移』魔法が使えるのだろう。姿を消すときに遠方に飛んだらしい。


『超広域探索』


 見つけた!


 一気にMPが減った気がする。軽い頭痛と倦怠感が襲ってきたので、俺はレアの不味いMP回復ポーションを一気飲みして、『移動』する。


「渚佑子!」


 渚佑子は、九州にある無人島に立っていた。


「来ないで!」


 俺はその言葉を無視して彼女のところへ行こうとするが、頭が回る。ぎもぢわりゅいー。思わず口を押さえしゃがみ込んでしまった。


 どうやら、酒で酔っ払った状態で『移動』したのが原因のようだ。決まらないな。


「社長! 大丈夫ですか。」


 渚佑子のほうが近寄ってくる。俺は近寄ってきた彼女の腕を掴む。


「もう逃がさないぞ。さあ帰ろう。」


「ダメです! もうあんな思いはたくさんです。さっきも、もう少しで巻き込んでしまうところでした。」


「一生、人が居ないところで暮らすつもりか?」


「それが一番なんです。」


「俺には君が必要なんだ。お願いだ。」


 俺はここで頭を深々と下げる。俺の大切な従業員が不幸になってほしくない。エゴかもしれないが、そのためなら、なんでもできる。土下座でも、このまま強引に連れ去ってもいい。


「・・・卑怯ですね。なぜ、そこまでできるんです。身内でも無い貴方が、どうして!」


「君が大切なんだ。君がどう思おうとも不幸になるのは許さない。」


「・・・・・・・・・・・。このまま、『移動』を使うのは危険です。少し休んでからにしましょう。」



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