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第8章-第110話 あやつる

お読み頂きましてありがとうございます。

「こっちへ来るなよ。大事な話があるんだから。」


 カウンターで水割りを一杯飲んで落ち着いたのか、ようやく復活した洋一さんが俺をボックス席に連れて行こうとする。


「いいじゃないか。彼女も同席してもらおうよ。」


 正直言って今の気分で洋一さんと二人っきりになったら、何を口走ってしまうかわからないのだ。


「いいのか?」


「おいおい俺様をなんだと思っているんだ。酒の席の話を外に漏らすはずが無いだろうが、信用しろよ。」


 洋一さんのボトルと氷と水を持って移動する。


 彼女が言うには、どんな内容であれ酒の席のことを漏らすようでは、この業界では三流の人間のする事だそうだ。


 まあそうでなければ、安心して飲みにいけないわな。


 昔、首相になった代議士が週刊誌に水商売の女にこういった場で何があったかを赤裸々に暴露した際にはその街全体のイメージダウンにより、来る客が激減したと言うからな。


「洋治のことだろ。」


「っ・・けほっ、げほげほげほっ。」


 俺は思わず噴き出してしまうところだった。口の中に何も入れてなくて、良かったがむせかえってしまったのだ。まさかいきなり確信をつかれるとは・・・。


「・・・・ふー・・・違う、なんでそう思ったんだ。」


「隠さなくていいんだ。あいつが死んでいるのは知っている。」


 再び、洋一さんが確信をついてくる。な、何か言わなくては・・・。


「な、何を言っているんだ。きっとどこか外国にでも行っているのさ。そのうち、ひょっこり戻ってくるさ。」


 止めてくれ。もうそれ以上聞きたく無い!


「俺が調べなかったと思うのか?」


「・・・・・・・。」


「あの写真は、青木樹海だろ。それに角度的に言ってあの場所に建てられていたところの2階から、撮られたものだろ。違うか?」


 たった数秒見せただけなのに、そんな印象的な写真だっただろうか。出来るだけバックには何も写らないように撮ったはずだ。だがあれだけでわかってしまったらしい。じゃあ、これ以上嘘をついても仕方が無いな。


「・・・違う。って、言ってもムダのようだな。・・・・そうだ。お前の弟を殺したのは、俺だ。」


「違うだろ! 洋治を殺したのは、あの煙にまかれて死んだ構成員だ。そうだろ!」


「なんでっ。」


 なんで、そこまで知っているんだ。誰か生き残りが居たのか?


「さつきだ。さつきに頭を下げて頼んだら、遺体を見つけてくれたんだ。どこの情報かは知らないが、頭蓋骨の弾キズから使用した拳銃までみつけてくれた。今は、ご先祖さまと一緒に眠っているよ。」


「それは、きっと俺に有利なように・・・。」


「ちょっとはあいつの仕事を信用しろよな。さつきは決して仕事で嘘をついたりなんかしない奴なんだ。」


「それでも、俺が殺したも同然だ。もっと何かあったはずなんだ。違う方法が・・・。」


「あいつは、洋治は、将来の夢は。と聞かれて、社長と答えるバカだったよ。俺が傍に居るってのによう。」


「だから、何か・・・。」


 いきなり話が変わって戸惑いつつも、必死に考える。今まで考えたくなくて放置していたが、考えても仕方が無いのはわかっているが、きっと何か、何かあったはずなんだ。あんな結果にならなくて済む方法が・・・。


 頭をかきむしりながら、考える。考える。考える。


「止めてくれ! トムが抱えなくてもいいんだ。・・・全く、あいつが洋治が羨ましいよ。ここまで、トムの心に刻みつけられているんだもんな。」


 俺の手を握りしめて、無理やり視線を合わせて覗き込んでくる。手からは身体のぬくもりが、視線からは心のぬくもりが伝わってくる。


 さっきまで頭が心が身体が冷たくなって上手く考えられなかったのに・・・。


「教えてもらっておいて良かったぜ。この方法、本当に効くんだな。」


 ・・・そう、この方法は洋一さんにパニック状態から復帰させる最短の方法を聞かれたので俺が教えたものだ。まさか、自分に使われるとは思わなかった。


「・・・疑ってたのか?」


 ようやく心が落ち着いてきてそう返した。


「いや、トムだからこそ効くのかと思っていたんだが・・・。」


「いくら俺でも心をあやつれないぞ。」


「本当かよ。」


「本当だ。」


 そんなことができたら、鈴江が出て行くはずも無かっただろう。異世界に召喚されること無かったはずだ。そして今頃は、・・・いや、そんなことを考えても仕方が無い。


「不思議だったよ。あんなに憎かったお前が俺に笑顔を向けるたびに惹かれていくんだ。たった数十秒のことだぜ。まさかたったあれだけの期間で心が180度向きを変えただなんて、あやつられたと思った方がしっくりくる。」


「・・・ふふふ。愛されてるな。しかと愛の告白を受け取ったよ。」


 少し混ぜっかえしてみる。なんか照れくさいな。


「なっ! 告白とか、そんなんじゃ・・・。」


 カラン。カラン。


 その時だった。入り口のドアがいきなり開く。


「こんばんは!!」


 そこに居たのは、旧姓舟本信子、洋一さんの奥さんだった。いきなり修羅場か?




新作を投稿しました。エロタイトル第2弾です。

次こそはイージーモード系主人公にしてあげたいなあ。

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【新作】「ガチャを途中で放棄したら異世界転生できませんでした」
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